横浜中華街の心遣いから生まれたという中華式カレー。「カレーが名物」「カレーが旨い」とされる中華レストランを3店舗食べ比べ!

 日本屈指のチャイナタウン横浜中華街。エリア内には無数の中華レストランが立ち並び、本格中華料理を提供しています。しかし、こういった中華レストランには、裏メニューとして、はたまた新名物として「カレー」を出す店が複数あり、中には中華料理以上の名物になっている店もあります。

 言わば「中華式カレー」とも言えるものですが、一説では横浜中華街のコックさんたちに対し、「毎日毎日、中華料理を食べ続けるのはさすがに飽きるのでは?」という気遣いから生まれたと言われています。しかし「中華×カレー」というのもなかなか想像がつかないのも正直なところ。そこで、今回は横浜中華街で「カレーが名物」「カレーが旨い」と言われる3店の味を食べ比べしレビューします。

中華街カレーと言えばココ!『保昌』の「牛バラ肉カレーご飯」

「保昌」の「牛バラ肉カレーご飯」990円(※価格は全て税込)
「保昌」の「牛バラ肉カレーご飯」990円(※価格は全て税込)

 横浜中華街の中でも「カレーの名物店」として名前が上がるのが『保昌』。店内の壁には無数の芸能人のサインが飾られ、その多くに「カレー美味しかったです!」といったコメントも添えられています。もちろん筆者も名物「牛バラ肉カレーご飯」をオーダー。オーダーからサーブされるまで、なんと45分も待ちましたが、日頃からこれほどの時間がかかるのかは謎です

 しかし、サーブされた「牛バラ肉カレーご飯」のビジュアルを見て感激。ゴロッとした牛バラ肉の塊が複数も入っているではないですか! さっそくいただくと、中華感はほとんどなく、本格欧風カレーの風味。甘くとろけた玉ねぎの味と、口に入れるとホロリとほどける食感の牛バラ肉は、なるほど美味です。そして、やや甘口で優しい味でありながらも、奥のほうで複雑なスパイス感が溶け合うように感じることもできました。

ゴロッとした牛バラ肉の塊が複数入っています
ゴロッとした牛バラ肉の塊が複数入っています

 カレー専門店をも凌駕するハイクオリティの味わいを、中華風卵スープと一緒にいただく不思議なバランスもヤミツキになるかも。かなり美味しい「牛バラ肉カレーご飯」でした。なお、『保昌』ならではのメニューは、カレーだけでなく、もう一つの名物が「中華風海鮮タコ焼き」だそうです。横浜中華街変化球的メニューをいただけるのも『保昌』が多くの人から支持を受ける理由のようにも思いました。

●SHOP INFO

店名:保昌

住:神奈川県横浜市中区山下町138
TEL:050-5570-5464
営:11:00~15:00、16:30~21:30、土・日曜10:30~21:30
休:不定休

外観からは予測不可能!『鳳林』の裏メニューデカ盛り「カツカレー」

『鳳林』の「カツカレー(中)」1045円
『鳳林』の「カツカレー(中)」1045円

 続いてのお店は、横浜中華街の山下町公園(山下公園ではなく小さな公園)付近にある『鳳林』。外観は、普通の中華料理店で、メニューにも「カレー」の文字はありません。しかし、「カレーありますか?」と店員さんに聞くと、「『カツカレー』があります。大・中・小ありますが、どれにしますか?」と尋ねてきました。「うーん、じゃあ中でお願いします」とお願いしましたが、ほどなくしてサーブされたそれを見て驚愕。なんと、軽く2人前はあろうかというほどのデカ盛りでした。

2人前は軽くありそうなボリューム感で、さらにサラダや杏仁豆腐もついてきます
2人前は軽くありそうなボリューム感で、さらにサラダ杏仁豆腐もついてきます

 まん丸で両手でなければ抱えることができない巨大な皿に、デデーンと注がれたボリューム満点のカレーがたっぷりかけられています。そして、ライスの上にはこれまた手のひらほどの大きさはありそうなトンカツが鎮座しています。さっそくいただくと、味は日本人に馴染み深い家庭的なカレーで実にまろやか。とんかつも日本のそれであり、中華感はほぼ感じませんでした。

 おそらくは、当初は地元のコックさんたち向けに出していたものが、一般にも広がり、メニューには載せないもののレギュラー化しているカレーなのではないかと思いました。その優しい味わいと物量感に、同胞コックたちを思う良心を感じ、なんだかほっこりした気持ちで店を後にしました。

●SHOP INFO

店名:鳳林

住:神奈川県横浜市中区山下町187
TEL:045-662-2225
営:11:30~15:00、17:00~21:00 土・日曜11:00~21:00
休:水曜

平日限定の中華式カレー!『同發本館』の「排骨カレー」

『同發本館』の「排骨カレー」1320円
『同發本館』の「排骨カレー」1320円

 横浜中華街の大通りに店を構える老舗高級店『同發本館』。こちらもメニューに記載はないものの、平日限定の裏メニューとして「排骨カレー」がオーダーできます。「排骨」とはそもそも、豚の骨付き肉をカレー粉などのスパイスにまぶし、揚げた料理。スパイスを使った料理が、カレーに合わないはずがありません。

 オーダーからしばし待った後にサーブされました。カレーの具材が煮込まれすぎておらず、鶏皮はぷりぷり、玉ねぎはシャキシャキなカレーを見るに、おそらくは作り置きではなく、注文が入り次第1食ずつ丁寧に作り出していることが分かるビジュアルです。

まさに「中華式カレー」。他ではまず味わうことができない一品です
まさに「中華式カレー」。他ではまず味わうことができない一品です

 カレー自体は、中辛よりも若干甘めで、ルーの奥底で感じるスパイスは中華的。程よくオイリーな印象もあり、独創的な印象を感じました。そして、肝心の排骨とのコンビネーションもバッチリで、カレーと排骨を合わせていただけば、外国のチャイナタウンにいるかのような不思議な錯覚を覚えました。食べ応え、味共に素晴らしく「排骨カレー」、クセになりそうです!

●SHOP INFO

店名:中華菜館 同發本館

住:横浜市中区山下町148
TEL:045-681-7273
営:11:30~15:00、17:00~21:30 土・日曜11:00~21:30
休:水曜

まとめ

 ここまでの通り、「中華式カレー」と言っても『保昌』は、本格欧風カレーで、専門店をも凌駕するハイレベルの味わいでした。また、『鳳林』も極めて和風の優しいカレーで、良心を感じるデカ盛りの「カツカレー」でした。唯一、中華的な印象を覚えたのが『同發本館』の「排骨カレー」で、“横浜中華街ならではのカレーを食べたい”という時は、最もオススメできる味わいだと思いました。

 ただし、いずれのカレーも美味しかったことには違いがありません。「横浜中華街に来たは良いけど、中華の気分じゃないんだよなぁ~」といった際には、ぜひ本記事を参考に、各店のカレーを楽しんでみてはいかがでしょうか。いずれのカレーも美味しいものばかりですよ!

(取材・文◎もっち、松田義人(deco))

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