パイロットと航空管制官との航空無線による交信では、原則「英語」が使われています。しかし、日常的な会話で用いられる一般的な英語と、交信で使われる英語は少々異なります。

「YES」→「Affirm」

地上から飛行機の動きをコントロールする航空管制官と、航行中のパイロットとの航空無線による交信では、原則「英語」が使われています。しかし、学校で習ってきたような一般的な英語と、交信で使われる英語は少々異なります。

代表的なものとして挙げられるのは「はい」「いいえ」のやり取りで、航空無線では原則「YES」「NO」は使いません。肯定、つまり「YES」のときは「Affirm(アファーム)」、否定「NO」のときは「Negative(ネガティブ)」という言葉を使います。

その理由は、安全確保のため。「YES」「NO」では、やり取りの言葉としては短すぎ、聞き漏らしたりする可能性もあり、「Affirm」「Negative」を使えば聞き間違いの可能性を減らせるためとされています。

ちなみに辞書通りだと「Negative(ネガティブ)」の反対の言葉は「Affirmative(アファーマティブ)」です。ただ、これだと語尾が似ていて聞き間違える可能性もあるため、肯定するときは、短い「Affirm」を用いるようになったといわれています。

通常の英語と航空管制上の英語の違いは、アルファベットの読み方にも及んでいます。

本来「スリー」に似た発音がされる「3」は航空管制では「トゥリー」、「ファイブ」とされる「5」は「ファイフ」、「ナイン」とされる「9」は「ナイナー」と読まれることが一般的です。この発音ルールは、航空無線特有の読み方「フォネティックコード」と呼ばれるもので、英語を母国語としない国の人が発音しやすいようつくられ、全世界で共通化されています。

なお「フォネティックコード」では、アルファベットの読み方も、一般的なものとは異なります。たとえば「A」は「アルファ」と発音され、交信で「A9」と言う際には、「アルファ、ナイナー」と発音します。「C3」であれば「チャーリー・トゥリー」となります。

羽田空港の管制塔(2019年5月、伊藤真悟撮影)。