再生可能エネルギー導入に向けた規制の見直しを目指す内閣府タスクフォースで提出された資料に、中国国営企業「国家電網公司」のロゴマークの透かしが入っていた問題で、資料を提出した公益財団法人「自然エネルギー財団事務局長」の大林ミカ氏を委員に選んだのは、河野太郎規制改革担当相だった。大林氏は政府のほかの審議会にも出ているが、その身元には謎の部分が多い。

 内閣府規制改革推進室の山田正人参事官は3月25日の記者会見で、資料を作成した大林氏がタスクフォースの民間構成員に選任された経緯について、こう説明した。

「2020年9月に河野太郎氏が規制(改革)担当相に就任し、同年11月にタスクフォースが設置された。その際、再エネに関する有識者を選定したということだ。タスクフォースは法令上の根拠に基づく会議体ではない。規制改革担当相の決済で設置されている」

 言論プラットフォーム「アゴラ研究所」の池田信夫所長は、Xで疑問を投げかけた。

〈チェックが必要なのは資料ではなく、大林ミカの身元。自然エネ財団のプロフィールには、2011年以前の経歴が書いてない。中津生まれとか大分生まれとか、矛盾した情報がある。高卒以後の職歴が不明。国籍も不明。住基番号がついてないという地方公務員の情報もある(住基ネットで検索できる)〉

 国際太陽エネルギー学会の賞を受けた際、大林氏は2017年11月に、朝日新聞の「ひと」欄で紹介された。そこでは「『パンク好きの現代詩人』で英語講師をしていた。妊娠・出産を契機に健康や環境への関心を深め、25年前(1992年)に故・高木仁三郎さんがいた原子力資料情報室のスタッフに」なったとある。

 その後、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)アジア太平洋地区責任者を経て、2011年にソフトバンクグループ孫正義会長兼社長が設立した自然エネルギー財団事業局長になったと説明している。

 大林氏は1964年11月生まれで、専門学校を卒業後、英語講師になったとしているが、大学などで学位をとったわけではないようだ。政府当局者は、

「大学院を必ず出ていないといけないわけではないが、科学の専門家ではたいへん珍しい経歴。委員に選ぶ前のチェック態勢に不備があるのは明白だ」

 と河野氏の対応に異議を唱えている。

(喜多長夫/政治ジャーナリスト)

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