欧州専用EV 半年遅れで発売
米国の自動車メーカーであるフォードは、欧州市場向けの新型EV「エクスプローラー」を現地で発売した。英国では3万9875ポンド(約760万円)から販売される。
【画像】「アメ車らしさ」追求した新世代SUV【欧州向け新型フォード・エクスプローラーを写真で見る】 全43枚
新型エクスプローラーは当初、2023年秋に発売予定だった。EV用バッテリーの新たな安全規制(国連規則100.3)が導入されたため、半年遅れての発売となった。生産地ドイツのケルン工場は7月以来、休眠状態であった。
フォードの電動化部門モデルEを率いるマーティン・サンダー氏は、この延期によってエクスプローラーをさらに改良し、より競争力のあるクルマに仕上げることができたと述べた。「半年前に発売するよりも、優れたクルマになっている」という。
新規制に対応したニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーを採用し、これに合わせて車両を再設計した。1回の充電での航続距離も最長605kmと大幅に伸びている(当初500km)。
なお、エクスプローラーという聞き慣れた名称を使用しているが、北米市場で販売される同名のSUVとはまったくの “無縁” であり、基本構造からパワートレイン、デザインまで大きく異なる。
北米エクスプローラーとは何が違う?
欧州向けのエクスプローラーは、フォルクスワーゲン・グループと共同開発されたCセグメントの電動SUVである。同グループのMEBプラットフォームと電気モーター「AP550」を採用している。
ボディサイズは全長4460mm、全幅1870mm、全高1600mm、ホイールべース2770mm。フォルクスワーゲンID.4と近い車格だ。
後輪駆動の「エクステンデッド・レンジ」では、最高出力286psのシングルモーターと77kWhのバッテリーを採用し、0-100km/h加速6.4秒、欧州WLTPサイクルで航続距離605kmを謳う。英国価格は4万5875ポンド(約880万円)から。
四輪駆動モデルでは、合計出力340psのツインモーターと少し大きめの79kWhバッテリーを使用し、0-100km/h加速5.3秒、航続距離530kmとされている。最大185kWの急速充電に対応し、理論上はわずか26分で10~80%の充電が可能だ。
「スタンダード・レンジ」では、最高出力170psのシングルモーターと小型の52kWhバッテリー、125kWの最大充電速度を備え、価格は3万9875ポンド(約760万円)となる。
また、車両ダイナミクスもかなり重視して開発したという。欧州では、ハンドリングに定評あるフィエスタやフォーカスなどの小型ハッチバックが人気を集めてきた背景がある。
サンダー氏は、「毎日使うクルマなので快適ですが、フォードに期待されるドライビング・ダイナミクスを持っています。快適な乗り心地、つまり日常使いのファミリーカーに期待される乗り心地と、ドライビング・ダイナミクスのバランスがとれている」と述べた。
2020年に発売された電動SUVのマスタング・マッハEでは、メディアや顧客から乗り心地の “硬さ” が指摘されているが、こうしたフィードバックもエクスプローラーに反映したという。
何台売れる? 販売目標を「調整」
グレード展開は「セレクト」と「プレミアム」の2段階。全車にステアリングホイール・ヒーター、シートヒーター(運転席はマッサージ機能付き)、スマートフォン用のワイヤレス充電器、スマートフォンとのミラーリング機能が標準装備される。
プレミアム・グレードには、10スピーカーのBang & Olufsenサウンドシステム、アンビエントライト、ダイナミック・マトリックスLEDヘッドライトが追加される。
オプションは限定的で、パノラミック・ガラスルーフと運転支援システム「ドライバー・アシスト・パック」の2種類のみが設定されている。後者にはハンズフリーの電動トランクゲート、ヘッドアップ・ディスプレイ、360度カメラ、車線変更支援が含まれる。
ホイールサイズは19インチ、20インチ、21インチから選択可能だ。
今年7月頃には、クーペタイプの派生モデルが発売される予定である。
フォードは以前、派生モデル含むエクスプローラーを、今後6年間で欧州全体で「60万台以上」販売する計画を立てていたが、現在EVに対する需要が軟化していることを踏まえ、目標を調整したという。
「市場想定に対して数量を調整しました。EVの普及が当初の想定よりも減速していると見られます」とサンダー氏。
具体的な数字は明らかにしなかったが、「ライフサイクルの中で大幅に増加するでしょう」と説明した。
「アメ車らしさ」と実用性を追求したデザイン
エクスプローラーは、フォードのアメリカン・スピリットを受け継ぎながら、欧州市場に焦点を当て、欧州で設計・生産される新世代の電動SUVである。
フォルクスワーゲン・グループのMEBプラットフォームを採用したが、フォード曰く「米国らしさ」を強調するデザインとなっている。
アップライトな2ボックス・シルエットは、人気の高いブロンコやF-150の影響も垣間見えるが、EVらしく空力性能と室内空間を重視している。
エクステリアでは、新しいエンブレム付きのフロントエンド、ボディ全体を包み込むベルトライン、重厚感のあるフェンダー、ブラックのピラーでコントラストを効かせたフローティングルーフが特徴だ。
実用性も忘れていない。トランクフロア下の収納スペースや、フロントシートの間に容量17Lの「メガコンソール」を備えている。トランク容量はマスタング・マッハEよりも大きい450Lで、後部座席を倒せば1400Lに拡大できる。
15.0インチのポートレート型タッチスクリーンは角度調整が可能で、最新版インフォテインメント・システム「Sync」を搭載する。
ほとんどの主要機能はスクリーンで操作し、使用頻度の高いクライメートコントロールのインターフェースは常時表示される。また、バイブレーション付きのボリューム調整用タッチスライダーなど、使いやすさに配慮した物理・触覚コントロールが装備されている。
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