北海道上士幌町(かみしほろちょう)で、全国の自治体で初となる、自動運転バス「AI車掌」導入プロジェクトが、4月1日(月)からスタートする。

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2022年12月から定期運行を開始した自動運転バス「かみしほろアルマ」に、AI車掌のキャラクター「萩音士清平しゅうおんじ きよひら)」が乗車。

乗客は車内に設置されたタブレット端末で、AI車掌との対話を楽しみながら、上士幌町をはじめバス停留所周辺の情報を得ることができる。

AIの対話技術とキャラクターを組み合わせて、それらを自動運転バスに導入するという先進的な取り組みだ。

上士幌町のAI車掌「萩音士清平」プロジェクトとは?

上士幌町では2022年12月から、運転の全てがシステム化される「自動運転レベル4」の実現に向けて“操縦者のいない自動運転バス”を定期運行している。

AI車掌の導入は、将来的に無人走行が可能となった際に、車内でのコミュニケーションの減少という課題に向けた解決策。

にっぽうの家上士幌前を走行する自動運転バス「かみしほろアルマ」

高齢者でも親しみやすい対話型のシステムであるAI車掌を導入することで、自動運転バスに乗車する不安を取り除き、車内コミュニケーションの活性化を目指す。

AI車掌「萩音士清平」には、バス停を案内するGPS機能、上士幌町のおすすめ情報をお届けする音声対話機能を搭載。利用者に親近感を持ってもらうために、ワンフレーズの歌唱や上士幌町にちなんだ早口言葉じゃんけんといったコミュニケーション機能も用意されている。

上士幌町ならではのデザインを採用した「萩音士清平」

AI車掌「萩音士清平」は、上士幌町でワーケーション施設を展開する株式会社スパイスボックスの監修のもと、株式会社TRIBALCON.(トリバルコン)がアプリのサービス設計とキャラクターの企画開発を担当。

株式会社アドバンスト・メディアが提供するAI音声対話アバターAI Avatar AOIエーアイ アバター アオイ)」のシステムをベースに開発された。

AI車掌「萩音士清平」ビジュアル

キャラクターの企画開発にあたっては、上士幌町役場の職員と共に、バス利用者の情報や上士幌町の特徴について、リサーチとディスカッションを実施。

それらを踏まえてキャラクターの年齢や性格、さらには話し方、ビジュアルイメージなどを設計。表情や仕草をAI自身に選択させることで、乗客から質問を受けた際に考える様子を示したり、笑顔で回答するなど、視覚的にも自然な対話を可能にしている

ちなみに「萩音士清平」の名前は、萩ケ岡の「萩」、上音更の「音」など、上士幌町に存在する地区名が由来となっている。衣装デザインにも、上士幌町ならではのモチーフを施したアクセサリーをあしらった。

AI車掌を導入した自動運行バスが、緑豊かな上士幌町を走る

AI車掌「萩音士清平」が自動運転バスに導入された上士幌町は、北海道十勝地方の北部に位置する人口約5000人。

近年は、全国トップレベルの酪農業を軸に、バイオガス発電とエネルギーの地産地消、自動運転バスやドローン配送の実装など、ICT技術を活用した持続可能な取り組みが評価され、第4回SDGsアワードで内閣官房長官賞を受賞した。

加えて、「かみしほろシェア OFFICE」「企業滞在型交流施設/にっぽうの家」を起点としたテレワーク・ワーケーションの受け入れを通じ、観光だけでなくビジネスも含めた“関係人口”(都市部から地方へ人や物の流れを促す)の拡大にも取り組んでいる。

かみしほろシェア OFFICE

企業滞在型交流施設/にっぽうの家

AI車掌プロジェクトで監修を担当したスパイスボックスも、上士幌町でワーケーション施設を運営。同社の担当者によれば「クリエイターなどの移住や起業も増えている」という。

面積の76%を森林が占める緑豊かな町を、AI車掌「萩音士清平」を導入した自動運行バスが走行する。上士幌町には、SF作品にも通じる近未来的な世界観が広がっているかもしれない。

北海道・上士幌町の自動運行バスに導入されるAI車掌「萩音士清平」