老友新聞2024年3月号に掲載された俳句入選作品をご紹介いたします。(編集部)

救援の炊出しスープ息白し

王田 佗介

能登地震被災者への炊出しでしょう。温かいスープを飲む人、そのスープに並ぶ人の白息です。寒気のなか吐くこの白息には、言葉に尽くし難い困難に耐えて生きる人々の生命力を感じます。

抜歯して枯野を帰る夕茜

近藤 貞子

抜歯あとの麻酔も覚め切 らない状況を想像しましたが、蕭条とした枯野を行く心もとない心情が伝わります。茜色の空が不安感に及びそうです。

木枯や夜通し灯る部屋のあり

田原 きよ子

受験生でしょうか、あるいは灯し続ける事情がある人の部屋です。この状況を案じつつ、それとなく見守る作者ですが、作者の灯も同じように灯ったままです。

「救援の炊出しスープ息白し」2024年3月入選作品|老友俳壇