小林製薬(本社・大阪市)の紅麹入りサプリメントを服用していた人に、次々と健康被害が出ている件で、同サプリを内服後の死亡者は2人に増えた。問題の紅麹を使っていたとして商品回収する企業はイオンやノエビア、宝酒造のほか海外企業にまで広がった。

 紅麹そのものは3月27日付の本サイトで紹介した通り、長い歴史を持つ発酵食品で、過度に怖がる必要はない。

 実は小林製薬の紅麹を原材料に使っていたメーカーが、神経を尖らせる「事情」もある。健康被害報告を受けて、小林製薬が直近1年に製造したサプリメントや紅麹原料(自社製造)の成分分析を行ったところ、一部の紅麹原料に同社が意図しない「未知の成分」が含まれている可能性が判明した。未知の成分は、紅麹が作る典型的な「カビ毒」ではないことだけがわかっている。この成分は特定の時期に作られた紅麹原料にのみ含まれており、当該ロット番号、製造番号も判明している(同社サイトで確認可能)。

 ここで問題が浮上。製造番号まで突き止められたはいいが、小林製薬は年をまたいで「紅麹」の製造工場を移転していた。「未知の成分」が入った紅麹を製造した大阪工場は、昨年12月に廃業。現在は和歌山県紀の川市にある同社系列工場で紅麹を作っているが、この工場の紅麹からは「未知の物質」が検出されていない。そのため、行政指導や立入調査をするはずの大阪市の会見でも、

「まだ大阪工場が稼働しているならすぐに立入調査に入ったが、廃止届が出された大阪工場の衛生状態は確認ができかねる」

 と担当者が困惑する事態になっている。

 このまま「紅麹パニック」は原因不明のまま迷宮入りするのか。在阪全国紙デスクがいう。

「市は行政処分としては厳しい商品回収を命じましたが、原因究明と再発防止策はかなりハードルが高い。廃業した大阪工場の従業員は全員が配置転換して、雇用継続と聞いていますが、労使上の問題はなかったのか。製造過程で他の材料、他の菌が混ざる可能性はなかったのか。様々な可能性を視野に入れています」

 大阪工場は、戦前の1940年に誕生した。長い歴史の終わりに死人まで出す悲劇が待ち受けているとは、工場のミクロの住人、麹菌にも予想できなかっただろう。

(那須優子)

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