長年にわたって作られてきた定番品は、“当たり前”の良さを持っている。誰もが日常的に使えて、しかも品格あるスタイル作りの役に立つ。そして流行にとらわれず、末長く愛用できるところも魅力的。なかでも独自の哲学を込めつつ、素材や製法にもこだわりを尽くした真のマスターピースを紹介する

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写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川剛 編集/名知正登

 ジャケットの派生アイテムであるブレザーブレザーと言えば基本はネイビーであり、19世紀の英国海軍の制服、もしくは大学クラブチームのユニフォームオリジンがあると言われている。通常のジャケットと区別を付けるメタルボタンの存在も重要なディテールだ。いずれにしろクラシックをベースにアクティブな背景やエッセンスを持つジャケットがブレザーなのだ。

 英国式はダブルブレスト型とする説もあるが、少々ものものしい雰囲気となる。気軽にサラッと着こなすのであれば、フロントに2〜3のボタンを配した、アメリカンなシングルブレストが適当だ。昨今はイタリア風に肩パッドや芯地を排した軽い仕立てのものも人気。一方、クラシカルなタイドアップスタイルを実践したい場合は、パッドおよび芯地を据えた正統派を選びたい。

 一般的なジャケットではどこか堅苦しい。軽快にスポーティに、大人のトラッドスタイルを楽しみたいとき、ネイビーブレザーは非常に役立つ一着なのである。

 

1. Brooks Brothers

歴史とクオリティを備えた“本家本元”

 米国トラッドスタイルの祖と言われるブルックブラザーズ1818年に創業し、「ナンバー1サックスーツ」など、米国的なスーツスタイルを確立させた老舗である。ネイビーブレザーに関しても1930年代の早くから自社のラインナップに加えている。それ以来、時代に則しつつ最高級の「紺ブレ」を世界に供給し続けており、“紺ブレと言えばブルックブラザーズ”をイメージする日本人も多い。

 現在は「クラシック」や「スリム」など複数のモデルをリリースしているが、特に代表的であるのがこの「トラディショナル」フィット。適度に胸・腹周りに余裕を持たせた着心地に加え、かしこまった印象にならない自然なショルダーや、幅のあるアームホールなど伝統的なアメリカンスタイルを貫いた仕立てが特徴。通常のウールよりも繊維が細く均一な、高級クリンプウールを緻密に織り上げた生地を採用しており、シワになりづらく上品な艶を放つ一着となっている。

2. J.PRESS ORIGINALS

アイビーの原型を日本の手技で繊細に表現

 1902年、米国コネチカット州のイェール大学前にて創業し発展を遂げたJ.プレス。そのイェール大は、いわゆる東部8大学を意味するアイビーリーグの一角。J.プレスのウエアを纏った同校生徒の装いこそ、1970年代に本邦をも席巻したアイビールックなのである。

 そして紺ブレはJ.プレスを代表するアイテムのひとつであり、常に定番としてショップに置かれていると言う。実は国内に多くのファンを抱えるJ.プレスは、日本企画モデルも多数展開中。この一着もメイド・イン・ジャパンの製品であり、米国の伝統的スタイルを軸に、日本人ならではのモノ作りの技を生かした仕立てがポイントである。

 袖や衿、それに身ごろを縫い上げるミシンワークも独特な強弱を付けた立体縫製。美しくフィットしつつも締めつけのない快適な着心地が持ち味のひとつ。ペピンメリノと呼ばれる繊維の細い高級ウールを使用することで、ハリ感と耐久性を持ちつつ相反するしなやかさが味わえるところも見逃せない。

3. INDIVIDUALIZED CLOTHING

トラッドスピリッツが色濃く漂う米国メイド

 インディビジュアライズド シャツと言えば、あのブルックブラザーズへの製品供給など、アメトラの根幹を支えた実力派としてつとに有名。新たに2003年にはインディビジュアライズド クロージングを創設し、オーダーメイドのカスタムスーツやジャケットをメインに展開している。

 レーベルスタート時から打ち出されるブレザーは、100年以上前から米国メリーランド州にて稼働する貴重なファクトリーにて生産されている。丸みのあるショルダーや絞りすぎないナチュラルな胸元など、伝統的なアメリカンスタイルをきちんと継承した仕立てが特に魅力。

 段返りの3つボタンに加え腰フラップ付きの3パッチポケットなど、アイビースタイルを標榜するブランドは多いが、ここの一着はまさに本流。金ボタンはあえて定番的なドーム型ではなく4穴式を採用。ニューヨークに現存する老舗メーカーのボタンを用い、さり気なく個性を添えている。

4. SOUTIENCOL

日本式トラッドの真面目な進化形

 日本のアイビールックの原点として1960年代に一世を風靡したヴァンヂャケット。その伝説的なブランドにてデザイナーを務めた三浦俊彦が1992年に立ち上げたレーベルであるスティアンコル。“単なる古典ではない本物のクラシック”を標榜し作り出すアイテムは、時代に媚びず真に着心地良く愛用できるネオトラッドと言えるもの。

 創業以来33年間、作り続けられているネイビーブレザーこそは、そんなスティアンコルのアイコンだ。本格的な3つボタン段返りのフロントに加え、人体に優しく沿うナチュラルショルダー、それにウエストシェイプを控えたシルエットなど、着るだけで王道のアイビールックが完成する一着である。

 王道でありながら軽い着心地は、使用生地を現代的にアップデートさせているから。ウールをベースにポリエステル、ナイロンやカシミアをブレンドした独自素材を採用し、ウールタッチでありつつ軽量かつアイロン要らずのイージーケアを実現。まさに正当に進化したトラッドブレザーなのである。

5. la favola

服好きも認めるモダン感覚の新ブレザー

 スーツやジャケットなど、テイラード服を中心とした、2015年設立のジャパンブランドであるラファーヴォラ。イタリア語の「物語」をブランド名としており、当初は対話から物語を編むように服を仕立てるオーダーメイド・サービスからスタート。2019年より既成ラインを打ち出し、広く人気を博すブランドとなる。

 現在も支持を得ているネイビーブレザーのリリースは2020年から。肩パッドや芯地、それに裏地などを極力取り去った軽快に羽織れる仕様がポイントだ。ただし着丈はやや長めかつ、わずかに裾広がりのシルエットを持つことで、大人の存在感あるエレガンスも兼備する。

 ショルダー周りは現代的にコンパクトであるが、少し丸みを帯びたワイドなラペルは男らしさと同時に柔和な印象を放つ仕上り。いわゆるアメトラ的なブレザーではなく、ラテン風の色気とモダンな快適性、それに仕立て技の妙を感じさせる高感度な一着である。

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