King Gnuが、初の全国5大ドームツアー【King Gnu Dome Tour「THE GREATEST UNKNOWN」】を完遂した。1月13日の大阪・京セラドーム大阪から3月23日北海道札幌ドームまで9公演が行われたドームツアーから、本稿では1月28日に開催された東京・東京ドーム公演2日目の模様をレポートする。

 まさに、今の時代のロックバンドの最高峰を体感するようなライブだった。今のKing Gnuが持つ破格のスケール感を示すようなパフォーマンス。歌や演奏はもちろん、演出、そしてオーディエンスの熱気も含めて、圧巻のステージだった。

 荘厳なアンビエントが鳴り響くSEを経て、開演時刻を過ぎるとステージ両脇の巨大ビジョンにサイケデリックなオープニング映像が映し出される。期待と興奮が高まる中、メンバーがステージに登場し、披露したのは「SPECIALZ」。〈“U R MY SPECIAL”〉のフレーズに大歓声が上がる。

 ステージセットには、鏡の破片を模したような巨大なモニュメントが積み上がる。常田大希(Gt. / Vo.)が5年前から思いついていたという、新作アルバムの『THE GREATEST UNKNOWN』というタイトル、そして“鏡”というアルバムのモチーフに通じるようなビジュアルコンセプトを感じる。続いては勢喜遊(Dr. / Sampler)が高らかに叫んでのカウントから「一途」へ。畳み掛けるようなフレーズ、常田と井口理(Vo. / Key.)のボーカルが興奮を煽り、曲後半のスピードアップした掛け合いでさらにテンションを上げていき、レーザーの光がドームの広い空間を舞う。続く「千両役者」も、常田、井口、勢喜、新井和輝(Ba.)と4人それぞれが華のあるパフォーマンスを見せる。一瞬たりとも目が離せない展開だ。さらに「STARDOM」では「聞こえないよ、もっと出せるだろ?」と井口が煽り、5万5千人のチャントが鳴り響く。炎の演出も強烈だった。ステージセットの様々な場所から炎が噴き上がり、客席までその熱が伝わってくる。序盤はとにかくバンドの“王者の迫力”を感じさせるダイナミックな展開だ。

 つかの間の静寂を挟んで、5つの星をモチーフにした幻想的な映像とタイトルロゴがビジョンに映し出され、アルバムのオープニングナンバー「MIRROR」から「CHAMELEON」へ。井口がピアノを弾きながら伸びやかな歌声を響かせ、歌い終わりの〈君は誰?〉というフレーズをループした「DARE??」へとつなげる。アルバム冒頭の曲順通りで、その世界観にオーディエンスを惹き込むような展開だ。新作はインタールード的な楽曲も多く収録したコンセプチュアルなアルバムだが、ライブのセットリストにもその方法論が踏襲されていた。ちなみに、「DARE??」はライブのみで長年披露されている楽曲「Vivid Red」へ繋がる形になっており、井口のボーカルと常田のラップが絡み合うパフォーマンスには新鮮な驚きがあった。さらに「白日」ではビジョンに映し出されたメンバーの姿がモノクロに切り替わり、陶酔感でドームを満たす。

「みんな、元気?」と井口がフロアに呼びかけ、MCではこの日が映像収録日であることを告げる。「ここにいる全員が映像の中に生きているって、夢あるでしょう? 今日は伝説を作りましょうよ!」と語り、大きな歓声を生んでいた。

 続いては常田のピアノに導かれるように始まった「硝子窓」。勢喜の叩き出す強靭なリズム、新井のベースラインの卓越した存在感が印象的だ。さらには、繊細なメロディに強烈な吸引力が宿る「泡」、心地よい横ノリのグルーヴと色気あるメロディが広がる「2 Μ Ο Я Ο」と、中盤はオーディエンスが身を委ねるような楽曲を続け、さらには初期の名曲「Vinyl」も披露。4人が自由闊達なセッションを繰り広げ、不敵な顔で魅せた常田のギターソロには大歓声が沸き起こる。

 そしてこの日最大のサプライズは、火花が噴き上がった「W●RKAHOLIC」に続いて披露された「W●RK」だった。ステージ中央にはサングラス姿の椎名林檎が登場し、客席にはどよめきや悲鳴のようなものも混じったひときわ大きな歓声が沸き起こる。スポットライトを浴び、ポーズをキメた立ち姿のまま歌う椎名と、拡声器を持ちその周りを歩き回る常田とのコントラストも鮮烈だ。歌い終えた椎名は右手を高く掲げ、颯爽とステージを降りた。興奮冷めやらぬオーディエンスに、バンドは休む間もなく「):阿修羅:(」をパフォーマンス。圧巻のパフォーマンスで熱狂のピークを更新する。そして「δ」から「逆夢」、そして「IKAROS」とアルバムの曲順通りに披露し、幻想的な照明の光もあいまったドリーミーなムードでドームを満たす。

 続いては「Wake up!」という常田のシャウトで始まった「Slumberland」。拡声器を持った常田が「踊れ!」と叫び、オーディエンスが大きく身体を揺らす。さらに「Sorrows」では手拍子が鳴り響く。勢喜のドラムソロを挟んで「Flash!!!」ではオーディエンスが飛び跳ね、広い会場をひとつにするエネルギーを感じさせた。

「最高!」と井口が笑顔を見せたMCを挟んで、続く「BOY」では、楽曲のMVでメンバーの幼少期を演じている子供たちがビジョンに登場。メンバーの演奏する姿と子供たちの姿が交互に映し出される演出に目を奪われる。さらに「SUNNY SIDE UP」から「雨燦々」では「歌おう!」と井口が客席にマイクを向け、〈雨燦々と降り注ぎ〉~というフレーズの大きなシンガロングが巻き起こる。楽曲の持つ包容力が、ひとつのクライマックスを作りだしていた。そして本編ラストは「仝」から「三文小説」。荘厳な光の中、息を呑むようなパフォーマンスを披露する。ドラマティックな余韻を残し、アルバムのエンディングと同じ「ЯOЯЯIM」へ。スクリーンにはエンドクレジットが流れ、大きな拍手が巻き起こる中、4人がステージを降りていく。最後にビジョンに大きくツアーロゴを映し出した演出も、ライブをひとつのストーリーとして体験したような感動を残した。

 鳴り止まないアンコールの声と拍手に応えて、4人が再びステージに登場。井口は「ありがとう、いいバンドだね」と笑顔を見せる。リラックスしたムードで4人が語り合ったMCを経て、常田が「アンコールは『Teenager Forever』と『飛行艇』をやります」と宣言。「大勢で歌うってことを考えて作った曲だから、今日も10倍くらいの声で、みんなで歌ってみませんか」と呼びかける。大歓声に「俺たちの声をかき消してよ。そしたら俺等ももっと大きく歌うから」と井口が応える。

 その言葉どおり、アンコールの2曲ではこの日もっとも大きなシンガロングがドーム中に鳴り響いていた。汗まみれのオーディエンスが大合唱した「Teenager Forever」に、「飛行艇」では「行こうぜ! 全部置いて帰れよ!」と常田が叫ぶ。〈命揺らせ〉の大合唱が響き、炎が噴き上がり、すさまじい熱気の中、終演を迎えた。

 壮大で迫力満点のパフォーマンスが終始繰り広げられたライブ。だが、終わってみたら、ステージ上の4人だけでなく、お客さんの一人ひとりが“主役”であるような印象の残ったライブでもあった。帰途につく人たちの満足気な笑顔にも、そんなことを感じた。


Text by 柴那典
Photo by Kosuke Ito

◎公演情報
King Gnu Dome Tour 「THE GREATEST UNKNOWN」】
2024年1月27日(土)、28日(日) 東京・東京ドーム

<ライブレポート>King Gnu、現代ロックバンドの“王”たる所以を体現した5大ドームツアー【THE GREATEST UNKNOWN】東京公演