アクロバティックな飛び方も見られる展示飛行といえば、ジェット機の独壇場――と思いきや、それをプロペラ機で行うチームも、多くの国に存在します。プロペラ機で展示飛行をするのはなぜでしょうか。

海自「ホワイトアローズ」でも実施

航空自衛隊の「ブルーインパルス」をはじめ、アクロバットチームの使用機はジェット機が多いと思われがちですが、海上自衛隊の「ホワイトアローズ」をはじめ、プロペラ機で展示飛行を行うチームは、色々な国に存在します。プロペラ機で展示飛行をするのはなぜでしょうか。

プロペラ機は現代も、操縦士を目指す際に基礎を覚えるために使われています。また、こうした初等練習機をアクロバットチームに用いる国もあり、2024年2月のシンガポール航空ショーで舞った豪州空軍「ルーレッツ」とインドネシア空軍「ジュピター」もそうです。前者はスイス製のピラタスPC-21を、後者は韓国製KT-1Bをチーム機としています。

プロペラ機のチームは、部隊のベテラン教官が操縦士を務めるため見ごたえはアクロバット専門チームと変わりありません。技もジェット機と同じように、2機の単独機と4機編隊の計6機でスモークを引きながら会場上空で水平旋回や宙返りを繰り返したかと思うと、単独機の2機が互いに正面から進入しすれ違うといった“一糸乱れぬ”飛行を見せます。

その一方で速度は低く、ジェット機のアクロバットが目の前をあっという間に過ぎ去っていくのに対して、一つ一つの演技をきめ細かく見せるといったようです。また旋回半径もジェット機よりは小さいため常に視界の内にあり、一旦遠くへ飛び去ったと言う感じがしません。

「プロペラ機の展示飛行」利点はどこ?

ことに、ルーレッツの4機編隊の周囲を2機の単独機がらせんを描くように追いかけて回る様子は、名前の通りルーレットの“くるくる感”すら覚えます。PC-21はP-51ムスタング戦闘機に近い高速を出せることも重ねると、第2次世界大戦中の空中戦のようでもあります。

こうした速度の低さは、これからアクロバットチームの写真を撮ろうと思っている人に向いているかもしれません。というのも、機体を追いかけやすいからです。プロペラ機で速度に慣れたうえで、ジェット機のアクロバット撮影に挑戦するのもいいでしょう。

また、年配者にとっては編隊で飛ぶプロペラの風切り音は懐かしく思えるでしょう。特に編隊で宙返りして飛び去る際のプロペラ音は、第2次世界大戦の空中戦が描かれた映画「トラ・トラ・トラ」「大空のサムライ」や「空軍大戦略」を思い出させます。

高速で迫力あるジェット機も魅力たっぷりですが、プロペラ機のアクロバット飛行も負けじと濃い中身があります。

インドネシア空軍「ジュピター」による展示飛行(加賀幸雄撮影)