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安価+持続可能なEV用バッテリーへ

自動車メーカーの商品企画担当者は、技術進歩の速さに頭を悩ませていることだろう。

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リチウムイオンバッテリーが商業的に広く取り扱われるようになったのが1990年代と比較的最近のことであり(ソニーなど日本企業が世界に先駆けて商品化)、そこから自動車の動力源として使われるまでの速さは尋常ではない。

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中国JACが導入するナトリウムイオンバッテリー搭載の小型EV

しかし、今後の展望は想像に難くない。例えば、1885年のベンツ・パテント・モートルヴァーゲンの単気筒エンジンをよく見ると、クランクシャフトと内部機構が露出していることがわかる。これは今日では考えられないことだ。

移り変わりの速さを考えると、持続可能性、エネルギー安全保障、コストの面で欠点のあるリチウムイオンバッテリーは、別のタイプのエネルギー貯蔵技術に取って代わられる可能性がある。

ナトリウムイオンバッテリーNIB、もしくはSIBとも呼ばれる)技術はこれまで、自動車の動力源としては十分に成熟していないと見られていた。しかし1月初め、中国の自動車メーカーJACは、ヒナ・バッテリー(HiNa Battery)社のNIBを搭載した小型EVを出荷すると発表した。

同じく中国企業のJMEVも、ファラシス・エナジー社のNIBを搭載した新型EVの導入を発表した。JMEV「EV3」は都市型コミューターで、1回の充電での航続距離は250kmとされる。

NIBの主な欠点はエネルギー密度の低さであり、リチウムイオンに比べてWh/kgが低すぎる。エネルギー密度が低いということは、航続距離を確保するためにリチウムイオンより大きく、重くしなければならず、効率性に悪影響を与えるということだ。

しかし、メリットも大きい。リチウムやコバルトを含まず、素材となるナトリウムは世界中に豊富に存在する。電解液はシンプルで、電極の集電体は銅の代わりにアルミニウムを使うことができる。つまり、持続可能性が高く、安価になる。

全体として、NIBリチウムイオンより約30%安い。現在のEV用バッテリーが車両全体のコストの約40%であることを考えると、これは大きなメリットだ。

メーカー各社はNIBのエネルギー密度向上に取り組んでいる。JMEV EV3のバッテリーは140~160Wh/kgとされているが、ファラシス社は今年、160~180Wh/kgに容量アップした第2世代の導入を目指している。

ファラシス社は、2026年までに180~200Wh/kgという目標を掲げている。それでも、一般的なEV用リチウムイオンバッテリーで270Wh/kg程度であることに比べれば、まだまだ低い。とはいえ、これまでNIBの本格的な商業開発は後手に回っていたため、今後のブレークスルーが期待される。

NIBは寒冷地でもよく機能し、安全性が高く、リチウムイオンよりもコストが低いので、自動車以外にもさまざまな用途がある。中国の巨大企業CATL、スウェーデンのノースボルト社、英国のファラディオン社なども開発を進めている。


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