2023年11月4日の仙台darwinからスタートした、全国13本を回るROTH BART BARONのニューアルバム『8』のリリース・ツアー「TOUR 2023-2024『8』」が、2024年3月17日(日)、東京・渋谷のSpotify O-EASTで、ファイナルを迎えた。

2階の立見席までびっしり埋まったこの日のライブは、ROTH BART BARONのファンが組織するバンドコミュニティ「PALACE」が運営を担当した。

「PALACE」のメンバーは、実際にチケットを購入しているお客さんでありながら、チケットもぎり、グッズ販売、会場整理などのライブ運営にも携わっているという。そんな、ある種大人の文化祭のような手作り感が、開演前の会場のムードを、より高める作用を果たしているように感じた。

なお、この日はゲストで、DJ・Stones Taroが出演。開演時刻の16:15から、ROTH BART BARONのスタート予定時刻の10分前、16:50頃までプレイした。

2日前の3月15日に、アルバム『8』からのシングルカットとして、改めてデジタル・リリースされた「Closer」には、カップリングとして、同曲のリミックスが2バージョン付いている。その1曲が彼による「Stones Taro Remix」で、もう1曲が「Sakura Tsuruta Remix」である。

この日、彼がプレイを終えて去った後、開演までの間のBGMとして、その2バージョンが、続けてかかった。

SEが響く中、『8』のジャケットに記されている、数字の8でありメビウスの環でもある巨大なアイコンが、ステージ後方の壁のフルサイズの画面で、回転し続ける。

その前に、三船雅也(ボーカル&ギター)・西池達也(キーボード)・Zak CroXall(ベース)・工藤明(ドラム)・竹内悠馬(トランペットキーボードパーカッションなど)・大田垣正信(トロンボーンキーボードグロッケン)、のメンバー6人が登場し、『8』のオープニング曲である「Kid and Lost」で、ライブがスタートした。

3曲目「Ring Light」で、星のような光が美しく飛び交って以降、曲によって、写真、映像、紋様などと手法を変えながら、ステージ後方の画面が使われていく。なお、その中の写真は、ニューアルバムのCD付きフォトブックに掲載されている、三船雅也自身が撮り下ろしたものである。 同じく、照明も1曲ごとにさまざまに変化し、その曲の世界を表現していった。

セットリストは、本編18曲、アンコール3曲、ダブル・アンコール1曲の、全22曲。 『8』からは、10曲の収録曲のうち、「Krumme Lanke」以外の9曲が演奏された。

なぜ「Krumme Lanke」だけやらなかったのか、という理由が、終演後に、スタッフ用のセットリストを見て、わかった。当初は9曲目に「Krumme Lanke」をやるつもりだったが、本番で別の曲に差し替えたからだ。

1曲目の「Kid and Lost」から8曲目の「BLOW」までを、曲間なしで立て続けに演奏し、フロアがステージに向ける集中力を上げ放題上げておいてから、この日初めて曲間を空けてMCをはさむ三船雅也。彼以外のメンバーは、いったんステージを下りる。

そして、アコースティック・ギターを抱えた三船雅也が、「いつもはアルバムの曲をやるんですけど、先輩の曲をやります」と言って歌い始めたのは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「世界の終わり」だった。

アコギ一本でゆっくりと奏でられ、三船雅也の声でそっと歌われる「世界の終わり」は、違う曲に生まれ変わったようでもあったし、ROTH BART BARONのオリジナル曲のようでもあったが、やはり「世界の終わり」だった。

つまり、絶句レベルですばらしかった、ということだ。歌う前に曲名がコールされた時、フロアから歓声と拍手が上がったが、曲が終わった時はみんな無言で、大きな拍手だけがステージを包んだ。歌に圧倒されて、そうなったのだと思う。

7曲目の「HAKU」の間奏では、メンバーとオーディエンスで「♪タタン、タンタンタン」というハンドクラップがきれいに揃った。続く8曲目「BLOW」でも、イントロのギターに合わせて大きなハンドクラップが起こる。

後半の16曲目「Closer」に入るところで、三船雅也は「踊ろうぜ!」と呼びかけ、フロアにステップの波が広がった。

その波は、テンポがぐっと速くなった17曲目「ONI」、そしてラテンリズムが華やかに響く18曲目「MOON JUMPER」と、どんどん大きくなり続ける。

本編ラストの曲でもあった「MOON JUMPER」では、「地面を 強く 蹴ったんだ 重力から 解き放たれるため」というこの曲のリリックを、超満員のオーディエンスがそのまま実行しているような光景になった。

アンコールでまず、画面いっぱいに広がった大きな月の前で「月に吠える」を歌い終えた三船雅也は、ROTH BART BARONの夏の恒例イベント「BEAR NIGHT」を8月4日(日)にLINE CUBE SHIBUYAで行うことを発表する。

そして、幻想的で壮大な「dying for」と、賛美歌のようでもあれば鎮魂歌のようでもある「NIN / GEN」を続けてプレイし、またステージを去った。

なお、前述したスタッフ用のセットリストを見て、もうひとつわかったのは、このあとに行われたダブル・アンコールは、完全に予定外だった、ということだ。そのセットリストには、入っていなかったので。

客電が点いても手拍子が鳴り止まない。それに応えて、というか、応えるしかなくなって、ステージに上がった三船雅也は、アコースティック・ギターを抱えながら、「ヤベえ、何も考えてねえ、どうしよう」と呟いてから、「♪ラーララーラーララーラーラー」と「鳳と凰」を歌い始めた。

彼の歌とギターに、オーディエンスがハンドクラップで追随し、すぐに御船&オーディエンスの合唱になり、そこに西池達也のピアノが寄り添い、三船雅也のカウントでバンド全員の音が一斉に加わって、曲が始まる。そして、曲の最後には再び、全員の合唱と三船雅也のギターだけになる──というこの曲が歌われた時間は、ここまでに何度か訪れた、このライブにおけるピークの中でも、最大のものだった。

確かに、ラストはこの曲以外ない、と思わせるような、もう歓喜そのもののみたいな、そんな幸福な瞬間だった。

文:兵庫慎司 写真:金本凛太朗

<公演情報>
ROTH BART BARON「TOUR 2023-2024『8』」

3月17日(日)東京・Spotify O-EAST

セットリスト

1. Kid and Lost
2. Boy
3. Ring Light
4. みず / うみ
5. HEX
6. Exist Song
7. HAKU
8. BLOW
9. 世界の終わり
10. 千の春
11. けもののなまえ
12. ウォーデンクリフささやき
13. 極彩 | I G L (S)
14. 赤と青
15. Ubugoe
16. Closer
17. ONI
18. MOON JUMPER
EN1. 月に吠える
EN2. dying for
EN3. NIN / GEN
EN4.鳳と凰

<ライブ情報>
ROTH BART BARON "10th ANNIVERSARY"~BEAR NIGHT 5~

8月4日(日) 東京・LINE CUBE SHIBUYA
OPEN17:00 / START18:00 / END20:15

■オフィシャル2次先行受付:3月29日(金) 12:00~4月14日(日) 23:59
https://w.pia.jp/t/rothbartbaron

『BEAR NIGHT 5』公式サイト:
https://www.rothbartbaron.com/bearnight5

<配信情報>
ROTH BART BARON『Closer』

【収録曲】 1. Closer
2. Closer (Stones Taro Remix)
3. Closer (Sakura Tsuruta Remix)

配信リンク:
https://rothbartbaron.lnk.to/Closer

公式サイト:
https://www.rothbartbaron.com

ROTH BART BARON「TOUR 2023-2024『8』」3月17日(日)東京・Spotify O-EAST