バレンシアに所属するジョージア代表GKギオルギ・ママルダシュヴィリを発掘した代理人のアントニオ・ロペス氏が、秘話を明かした。スペイン紙『アス』が伝えている。

 26日の夜、ギオルギ・ママルダシュヴィリがジョージアの“英雄”となった。EURO2024・予選プレーオフ決勝戦ギリシャ戦はPK戦にまでもつれる死闘の末に、同選手のPKストップドイツ行きの切符をもたらしたのだ。ソ連崩壊前夜の1990年に結成したジョージア代表にとって、初の本大会出場となる中、自身の公式Instagramにて「ジョージア国民全員がこれに値する! みんな、おめでとう! ドイツで会おう」と祝っている。今や、マルクアンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)、ヤン・オブラク(アトレティコ・マドリード)、ウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)らを抑え、ラ・リーガにおける最高市場価値のゴールキーパーとなったママルダシュヴィリの“プロローグ”を回顧する。

 2000年9月29日生まれのママルダシュヴィリは現在23歳。脅威のシュートストップ能力と、身長199cmの恵まれた体躯で最後の砦として立ちはだかる守護神は、18歳で母国の名門ディナモ・トビリシのトップチームに加わった。が、GKというポジションの性質上、出場機会を得られなかった同選手はレンタル移籍を繰り返すことに。そんな折に、転機が訪れる。ロコモティヴィ・トビリシ(ジョージア)の一員として臨んだ、2020-21シーズンのヨーロッパリーグ(EL)・予選プレーオフ決勝戦グラナダ戦だった。A・ロペス氏は、同試合のパフォーマンスについて「彼を8カ月以上も見てきていたけど、あの日、フットボーラーとして才能を開花させた」とし、各クラブに売り込みをかけたという。しかしながら、「ジョージア人…アントニオ?」とフットボールの小国という出自だけで、一笑に付されたこともあったと告白している。

 その中で、バレンシアがママルダシュヴィリにチャンスを与えた。当時5部に所属していたバレンシア・メスタージャ(Bチーム)にレンタル加入することで契約が成立し、2021年夏にジョージアを出発した。時を同じくして、ヘタフェで功成り名を遂げたホセ・ボルダラス氏がトップチームの監督に就任。GK陣に負傷者が相次いでいたことで、プレシーズンに帯同させると、その才能に心底惚れ込む。迎えた2021-22シーズンのラ・リーガ開幕節、指揮官は同選手をスタメンに大抜擢。そしてこれに応えるかのように、ママルダシュヴィリは同節のベストイレブンに選出されるほどのパフォーマンスを発揮したのだ。

 開幕から6試合に渡ってゴールマウスを守り続けた後、バレンシアは同年12月に買取オプションを行使するのだが、当初はBチームとしての契約だったため、給料よりもトップチームでの出場給の方が高かったとのこと。A・ロペス氏は「最初の数試合は不運に見舞われたけど、彼は辛抱強く、上達するために努力し続けた」と強調。続けて「アパートで一人暮らしをしていた彼に、全ての書類を渡したよ。(買取価格)たった85万ユーロ(約1億1000万円)でジョージアから来たんだ」と逸材を発掘した喜びを述べている。

 バレンシア加入2年目には、ラ・リーガ全試合に出場するなど、守護神の地位を確立したママルダシュヴィリ。「まだまだ先は長い。間違いなく、ヨーロッパ最高のゴールキーパーになるだろう」と慧眼の持ち主は語る。ジョージアの“英雄譚”はまだ、序章に過ぎない。

母国を初EUROに導いたGKママルダシュヴィリ [写真]=Getty Images