第72回ベルリン国際映画祭 コンペティション正式出品作品で、女性の選択の権利としての人工妊娠中絶を描いた実話を基にした映画「コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話」(公開中)の本編冒頭映像(https://youtu.be/b713t4AFox0?si=EyFbsvEjnBHY928m)が、このほど公開された。

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物語の舞台は、1960年代後半~1970年代初頭にかけて中絶が違法とされていた時代のアメリカ。中絶を求める女性たちに違法だが安全な中絶手術を提供するために、アンダーグラウンドに活動していた団体「ジェーン」を描いている。監督は、「キャロル」で第88回アカデミー賞脚色賞にノミネートされたフィリス・ナジー。プロデューサーは「ダラス・バイヤーズクラブ」「バービー」など、多くの世界的ヒット作品を生み出し続けているロビー・ブレナー。エリザベスバンクス、シガニ―・ウィーバーらが出演している。

映像では、主人公・ジョイが夫との間に2人目の子どもを妊娠したのをきっかけに、心臓病が悪化していることを知る。唯一の治療法である中絶手術を受けようとするも、病院の男性責任者たちから中絶手術を拒否されてしまうシーンまでを映し出している。

1968年、アメリカシカゴで裕福な家庭の主婦として、夫・ウィルと娘・シャーロットと、何不自由ない暮らしをしていたジョイ。本編映像は、彼女が年頃の娘・シャーロットの部屋を片付けるシーンから始まる。壁一面にポスターが貼られたシャーロットの部屋でレコードを手に取り、見つめるジョイ。場面はキッチンに切り替わり、レコードから軽快なリズムの音楽がかかる中、ジョイは音楽の軽快なリズムに乗りながら、夕飯の支度をしている。そこに学校から帰宅したシャーロットも誘って一緒に踊り始める。そんな親子の仲睦まじいシーンから一変、ジョイは突然その場に倒れてしまう。

病院に運ばれたジョイは、2人目の妊娠によって自身の心臓病も悪化していることが知らされる。医者から「唯一の治療法は妊娠をやめることだ」と告げられ、中絶が法律で違法とされていた時代、選択肢がないことにジョイとウィルは絶望の表情を浮かべる。

ジョイを演じるバンクスは「心臓に負担がかかる病因である妊娠状態を止めるしか解決策がない。妊娠したこと自体、彼女には思いがけないことだった」と話し、「果たして自分の命や娘への責務を犠牲にしてまで授かりものと思えるかしら? 悩んだ末 偶然の産物で病因でもある妊娠よりも、自分と家族のために生き抜こうと決めたのだと思う」とジョイの複雑な気持ちに共感を寄せている。

何とかして中絶手術を受けられないのか……ジョイは、弁護士である夫・ウィルに会社に頼んでほしいと助けを求めるも、ウィルは弁護士として法律を守らなくてはならないという気持ちと、それでも妻・ジョイをどうにかして助けたい、と葛藤する。そこで、中絶手術の許可を得るため、夫・ウィルとともにジョイは地元の医師会に参加。しかし、地元の男性医師たちは「妊娠したまま助かる可能性は50%ある」。あっさりと中絶手術を断られてしまったジョイは「母体はどうでもいいと?」と、目の前の命よりも法律を優先される状況に絶望し、部屋を飛び出してしまう。

本編では、ジョイは自力で中絶手術を受ける方法を模索するなかで、団体「ジェーン」と出会う。そして、命を救われたことをきっかけに「ジェーン」の一員として活動に参加するようになるのだ。「ジェーン」のリーダー、バージニアを演じるウィーバーは本作に対して「大きな前進をもたらしたロー対ウェイド判決の意義を見つめ直す契機になることを願うわ。大切なのは女性自身の権利で自分の体に対する決定権があるべきよ」とコメントしている。

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