悪魔の血を引く少年・奥村燐(CV:岡本信彦)が、父親である魔神(サタン)を倒すために最強の“祓魔師(エクソシスト)”を目指す『青の祓魔師』のTVアニメ第3シーズン『島根啓明結社篇』(毎週土曜夜24:30-25:00ほか、TOKYO MXほか/U-NEXTHuludアニメストア・アニメ放題ほかで配信)。悪魔とのド派手なバトルが見どころのダークファンタジーながら、家族や友達との絆、葛藤や成長、青春コメディまで、少年漫画の醍醐味がギュッと詰まった大人気シリーズだ。最終話となった第12話は、奥村雪男(CV:福山潤)の悩める心情が明らかになった「隠された本音」。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】悩み続けて複雑な表情をみせる雪男

■天職を見つけた廉造と悩み続ける雪男

ライトニング(CV:関智一)との面談の末、正十字騎士團とイルミナティ、双方の公認二重スパイとなった志摩廉造(CV:遊佐浩二)。しかし塾生メンバーにとってはそう簡単に割り切れるものでもなく、心中穏やかではいられない。勝呂竜士(CV:中井和哉)はライトニングの手前「信頼している」と言い放ったものの、実際にはまだ疑心暗鬼な様子で、塾生メンバーの間にはギクシャクした雰囲気が漂う。一方、廉造からルシフェル(CV:内山昂輝)と会ったことを尋ねられた雪男は、島根での任務中に交わしたルシフェルとの会話を思い出す。ルシフェルは雪男のことをイルミナティに勧誘し、雪男はそれを断っていたのだ。

雪男の回想にて、雪男とルシフェルがすでに極東研究所で会っていたことが判明した。ルシフェルは雪男の目をジッと見て、「やはり君は面白い」と呟いており、雪男の目に生じている異変を的確に読み取ったようだ。一方の雪男は、「ふざけるな!」と拒みながらも床にへたり込んでしまうなど、ルシフェルの圧倒的な存在感が印象的だ。雪男の実力をもってしても、到底太刀打ちできる相手ではなさそうだ。またルシフェルは雪男の抱える葛藤までも見抜いていて、「私は君に力を与えることができる」と、雪男を揺さぶる言葉を投げかける。ルシフェルの誘いを拒否する雪男だったが、その言葉に激しく動揺したのは確実で、いつ闇落ちしてもおかしくない危うさも感じる。SNSでは「もう秒読みやんw」、「雪男の弱点はメンタル」など、雪男を案じる声が多数あがっていた。

早朝、ランニング中に勝呂と会った廉造は、スパイとしての今の生活がとても楽しいと勝呂に伝える。一方、悶々とした気持ちを抱えながら霧隠シュラ(CV.佐藤利奈)の見舞いに赴いた雪男は、メフィスト・フェレス(CV:神谷浩史)からもらったスパリゾートのチケットをシュラに渡し、塾生メンバーの引率を頼む。しかし逆に「お前が一番必要そーだろうが!」と言われたことで、シュラと雪男、塾生メンバーの全員でスパリゾートへ向かうこととなった。

中盤は、二重スパイという難しい立場ながらも楽しそうな廉造と、その逆に悩みを溜め込み続ける雪男の対照的な姿が描かれた。中でも、ここまで本気で楽しそうな廉造はシリーズを通じても初めてのように思えた。これまでの廉造は何をするにも億劫そうで、女の子絡み以外ではやる気を見せないのが基本スタンスだった。しかし二重スパイになってからの廉造は言動も表情もイキイキと躍動している。誰からも「信用されない」ことが大前提となった今の状況は、「信用」や「責任」といった重荷とは無縁であり、それこそ廉造が求めていた「自由」なのかもしれない。塾生メンバーの複雑な感情を考えると心は痛むものの、廉造の心の底からの笑顔を見れたことは素直に嬉しいし、つい応援したくなってしまう。

■燐と廉造のギャグバトルが勃発!

スパリゾートへとやってきた一行。はしゃいで泳ぎまくるシュラ、ウォータースライダーで遊ぶ燐、プールサイドで寝そべる神木出雲(CV:喜多村英梨)など、それぞれのスタイルで過ごす塾生メンバーたち。そんな中、廉造の様子がおかしくなる。真剣で厳しい表情を崩さない廉造に対し、わだかまりを残していると感じた勝呂が問いただすも、廉造の口から飛び出した言葉は「カップルで浮き輪に乗れる、ウォータースライダーがあるんやで!!」だった。女子といっしょに浮き輪に乗りたいと訴える廉造にあっけに取られていると、今度は燐が「俺もしえみの後ろには乗りたい!」と大胆宣言。実はこれは、本音を喋りたくなってしまうスリーワイズモンキー(三猿鬼)の仕業だった。エスカレートした燐と廉造は激しいケンカを始めるが、勝呂の詠唱によってようやく我に返るのだった。

スパリゾートでの騒動は、先週に引き続き燐と廉造によるコメディ展開。燐と廉造が戦って施設を壊し、最後にシュラからお仕置きを食らうまでの流れは最高で、改めてふたりの絡みの相性の良さを見せつけてくれた。また廉造については、スリーワイズモンキーの影響で本音がダダ漏れてしまう状態にあって、それでもなお女の子のことを最優先に考えていたことが分かり、立場や関係性が変わろうとも、廉造の本性は変わっていないことが証明された。このシーンはSNSでも「志摩が志摩でホッとした」、「ブレない志摩さんさすが!」など、安堵のコメントが目立っていた。

スパリゾートでの騒動後、ひとりベンチに座る雪男に、アイスを差し出す燐。燐は「ずっと悩んでるよな」と声をかけるも、雪男は「もう大丈夫だよ」と、作り笑顔を浮かべて去っていくのだった。この一連のやり取り自体は昔から変わらないものの、雪男の現状を考えれば、両者のすれ違いはこれまで以上に広がっていると言える。ルシフェルから「弱い」と言われ、廉造からも「相談すべき」と促され、シュラからも心配され続け、ついには燐からも「兄ちゃんに話してみろよ」と心配されてしまった雪男。兄を守るため、幼いころからストイックに鍛錬に励んできた雪男は、「弱さ」を嫌い、誰よりも「強さ」を求めて生きてきたはずだ。だからこそ、今の自分の「弱さ」が認められないのかもしれない。ともあれ、雪男のストレスが最高潮に達しているのは間違いなく、それだけに今後の展開には不安しかない。SNSでも「双子にはずっと仲良くしてもらたいのに」、「もうダメかもわからんね」と、心配の声が飛び交っていた。

こうしてあっという間に駆け抜けていった『島根啓明結社篇』だが、放送終了の翌日、AnimeJapan 2024の「青の祓魔師」BLUEステージにて、直後、続編となる『青の祓魔師 雪ノ果篇』が10月に放送されることが発表された。この嬉しいニュースにはSNSでも「今回7年ぶりだったのに展開速くて歓喜!」、「マジ!? 絶対に観ます」といった驚きと喜びの声が溢れていた。10月を楽しみに待とう!

■文/岡本大介

「青の祓魔師 島根啓明結社篇」第12話より/(C)加藤和恵/集英社・「青の祓魔師」製作委員会