クロックタワー」シリーズなどで知られるゲームデザイナーの河野一二三氏による新作ホラーゲーム「NightCry」。昨年の東京ゲームショウで電撃発表され、本年1月からさらなるブラッシュアップにむけて、クラウドファンディングがスタートしました。調達額はKICKSTARTERで30万ドル、CAMPFIRE300万円で、両者共に調達成功。2月28日のゴールに向けて、最後の募集が行われています。

ゲームは画面のポイント&クリックで進むアドベンチャーゲームで、メインキャラクターはアメリカ人の大学生、モニカ・フローレンス以下4名です。豪華客船で発生する殺人事件と、夜ごとに響き渡る不気味な赤ん坊の泣き声。闇の住人の気配がモニカの背後にも忍びより・・・という展開で、ゲームハードはPC・PS Vita・スマホ&タブレットCAMPFIREでの調達成功に伴い、PC版向け日本語ボイスにも対応しました。

ゲームは脱出方法を探す通常探索モードと、巨大な鋏を持つ神出鬼没の殺人鬼「シザーウォーカー」から逃れたり、隠れたりしてやりすごす逃走モードの繰り返しで進んでいきます。そうなんです。本作ではシザーウォーカーに反撃できないんです。これ、通常の家庭用ゲームだと企画として難しいんですよ。攻撃できないゲームって、それだけでウリが弱くなっちゃいますからね。

でも、もし敵を攻撃できるなら、倒せなくちゃいけない。それだと「人知を越えた超越的な存在が醸し出す恐怖」みないな演出はできない。1998年ハリウッド版「GODZILLA」じゃないけど、武器で倒せるなら人間が一番強いってことですからね。もちろんそういうメッセージ性を秘めた作品もあると思いますが、本作の方向性とは別。「自分の考える『ホラー』ゲームを作りたい」という河野氏の強い思いで決定されました。これぞインディ・スピリッツでしょう。

ちなみにこのゲーム、なんといっても制作陣が豪華です。特筆すべきはCo-Creatorにホラー映画の巨匠・清水崇監督をむかえたこと。すでに世界観を伝える実写ショートフィルムがYoutubeで公開され、雰囲気を盛り上げています。清水監督といえば映画「呪怨」で大ブレイクしたジャパニーズホラーの旗手。河野氏曰く開発中のゲームもプレイしてもらっているとのことで、どのようなエッセンスが加味されるのか楽しみです。

他にクリエイティブディレクターに「サイレントヒル」シリーズの伊藤暢達氏、アートディレクターに「FF VII」「FF XIV」の 新井清志氏。楽曲提供とオーディオディレクターに「メタルギアソリッド」シリーズの戸田信子氏。他にも日本を代表するクリエイターがずらりと集結しています。開発スタジオは河野氏率いるヌードメーカーで、その実力は幾多の家庭用ゲームに加えて、スマホゲームSWAN SONG」などでも証明済みでしょう。

実は昨秋、ショートフィルムの撮影現場を取材する機会に恵まれたんですよ。現場には河野氏も訪れ、カルト集団の一員に扮してカメオ出演する一幕も(気がつかなかった人、もう一度見直してみては?)。映画本編なみの人員を擁する撮影班や、映像作りにこだわりぬく清水監督の姿勢に、河野氏も「ゲーム作りに良い刺激をもらった。この映像に負けられないものにしないといけない」と語っていました。

また撮影現場には「撮影の様子から世界観などのヒントを得たい」とのことで戸田氏も登場。総合的なオーディオディレクションを通して、プレイヤーの感情を演出したいという戸田氏にとってゲーム、そしてホラーものは、ひときわ力が入るジャンルなんだとか。ゲームの企画段階から、どんどんサウンド面でアイディアを入れていきたいと語っていました。本作で音が何をするか、今から楽しみです。

こんな風に本作のポイントはさまざまな人々の「思い」によってプロジェクトが回っているところ。クラウドファンディングで応援するファンもまた、その一つです。河野氏も「普通にゲームを受託開発するだけでは得られない、多くの人の協力でプロジェクトが回っていて、本当にありがたい」と語っていました。発売は2016年春の予定で、時代が変わればゲームも変わる、そんな節目のタイトルになりそうです。
(小野憲史)

豪華客船でおきる殺戮劇、そして鋏の音・・・。ファンの思いに支えられて「NightCry」の制作が進行中