豚に似た顔立ちで、4本の水かきがある足を持ち、水中を自由に泳ぎ回っては、獰猛な歯で獲物を襲う。オーストラリア先住民の間でそんな伝承が残るUMAが、ニューサウスウェールズ州(東部)やクイーンズランド州(北東部)の水辺に棲息するとされる、バニップだ。

 1883年、このバニップらしき生物の死骸がニューサウスウェールズ州の岸辺に漂流しているのを、原住民が発見。体長1.7メートルほどで、全身を硬い毛で被われたそれは住民によって解体され、骨と皮がシドニー市内の博物館へと送られた。そしてその鑑定が行われている、との記事が現地紙「ガンガダイ・タイムズ」に掲載されたのである。これにより、それまで伝承上の生き物とされてきたバニップの存在が、にわかに信憑性を帯びたのだった。

 世界のUMAを取材するジャーナリストが語る。

「バニップの語源はヴィクトリア州北西部の先住民、ワーガイア族の言葉で『黒鳥のように長い首を持つ』。最初にバニップの目撃談を報じたのは、1845年の『ジロング・アドヴァタイザー』という新聞です。記事が出て以降、オーストラリア各地でバニップを思わせる目撃情報が相次ぎ、幾度となく同様の記事が掲載されるようになりました。目撃情報には『大きな鳴き声を放つ』という共通点はあるものの、その姿はカバのようだった、いやワニのようだった、毛に覆われていた、皮膚がヌメヌメしていた等々、まるで一貫性がない。解体された『現物』の鑑定結果に、多くの研究者が期待を寄せました」

 ところがなんと、博物館に保管されていた謎の生物の標本は、突如として姿を消してしまったというのである。何者かが持ち去ったのか、あるいはなんらかのミスで廃棄されてしまったのか。

「これまでに、バニップの正体として候補に挙げられた生物は、ヒョウアザラシやミズオオトカゲ、絶滅種のメガラニアやディプロトドンなどですが、目撃情報には大きな鳴き声を放つ、という共通点があることから、そのどれにも該当しません。恐竜説もありますが、はたして真相はどうなのか」

 ちなみに日本でも「ウルトラマンネクサス」の劇中で、バニップをモチーフにした「怪物バンニップ」という怪獣が登場している。

ジョン・ドゥ

アサ芸プラス