リスクモンスターは、リスモン調べ「新型コロナウイルス流行前後における中国進出日系企業の新設拠点数ランキング」の調査結果を発表しました。

 

リスクモンスター「新型コロナウイルス流行前後における中国進出日系企業の新設拠点数ランキング」

 

[実施概要]

・調査名称       :新型コロナウイルス流行前後における

中国進出日系企業の新設拠点数ランキング

(2017年~2022年)

・調査方法       :中国における日系企業の法人登記情報に基づく

・調査対象データ更新時期:2023年3月時点で開示されていた法人登記情報

・調査対象企業     :中国全土で登記されている

日本企業出資の中国企業及びその傘下企業

・調査対象企業数    :27,968社

 

中国において2019年12月に新型コロナウイルス(COVID-19)が確認されて以降、ウイルスの拡散を食い止めるため、中国政府は「ゼロコロナ政策」を採用し、様々な地域でロックダウンを実施して、人々の移動や日常生活を厳しく制限したことは記憶に新しいところです。

今回のCOVID-19流行が、中国へ進出している日本企業へどのような影響を及ぼしたのかを調査しました。

中国に進出している日系企業の新設拠点数に焦点を当てその推移を追ったところ、2017年以降の増加基調のピークは2021年となっており、2022年には減少が見られました。

これは、中国のゼロコロナ政策によるロックダウンの影響により、新規投資が敬遠されたものと考えられます。

ゼロコロナ政策は2023年に終了したものの、今後も、中国が抱える財政赤字や不動産市場の低迷、少子高齢化などの課題、円相場の影響など、中国で活躍する日系企業はさまざまなリスクと隣り合わせで経済活動を行っていかなければなりません。

このような中で、安定的に事業を拡大していくためには、事業計画に基づきながらも、発生する事象に対して、自社の業種などによる事業特性や市況を考慮しつつ、リスクの極小化を図っていくことが不可欠といえるでしょう。

 

▼本調査の結果は以下掲載サイトでも見ることができます。

https://www.riskmonster.co.jp/pressrelease/post-16425/

 

 

[調査結果]

(調査の背景)

2019年12月に、中国において世界で初めてCOVID-19が確認され、COVID-19の流行は予期せぬ形で世界を揺さぶりました。

COVID-19の感染拡大を防ぐために各国が水際対策を行ったことで、国境を超えるヒトやモノの移動が難しくなり、人々の生活だけでなく、ビジネスにも大きな影響を与えたのです。

中国政府はウイルスの拡散防止策として、「ゼロコロナ政策」を採用、様々な地域でロックダウンを実施した中で、特に注目されたのは、上海を対象にしたロックダウンです。

2022年3月末から5月末の2か月間のロックダウンで経済活動は大きく制限され、中国経済は深刻な影響を受けました。

COVID-19は、3年余りにわたり猛威をふるい続けましたが、2023年に入ると中国政府は「ゼロコロナ政策」を終了し、国民は徐々に日常生活を取り戻しています。

今回の調査では、新型コロナウイルス流行の3年間に、日系企業にどのような動きがあったのかを、「中国で設立した新しい拠点数」に焦点を当て、新規投資の変化をみていきます。

 

(1) 中国における日系企業の設立拠点数推移

2017年から2022年における日系企業の年間新設拠点数(企業、支店・支社などの法人の登記日を基準に判断)を集計しました。

日系企業が中国で設立する拠点数の変動は、日系企業における中国向け新規投資の度合いを反映していると考えられます。

日系企業による中国への新規出店ペースは、2020年の一時的な低下を除いて、2017年から2021年は概ね加速し続けていましたが、上海のロックダウンが実施された2022年では急激な減速感が表れています。

(図表1)

 

(図表1) 中国における日系企業の設立拠点数推移

 

(2) 日系企業の新設拠点数ランキング

2020年から2022年に新たに設立した拠点数の多い企業順に集計しました。

ランキングトップ10では、1位「ローソン」(新設拠点数558拠点)、2位「ファミリーマート」(同351拠点)、9位「セブン-イレブン」(同48拠点)のコンビニエンスストア3社がランクインしていますが、「ローソン」、「ファミリーマート」の2社は2021年(各同192拠点、同154拠点)をピークに、「セブン-イレブン」では2019年(同39拠点)をピークとして、その後の新規出店ペースは鈍化しています。

 

続いて飲食業に注目してみると、3位「サイゼリヤ」(同154拠点)、5位「すき家(ゼンショー)」(同112拠点)が上位にランクインしています。

これらの2社においても、2019年から2020年をピークとして、その後は出店ペースが鈍化しており、コンビニエンスストアにおける新規出店ペースの推移と類似していますが、16位の「スシロー(FOOD&LIFE COMPANIES)」では、2020年に中国に初進出してから2022年(同7拠点)まで出店ペースは加速を続けています。

 

衣料品等の小売業では、「ユニクロ」や「GU」、「Theory」を展開する「ファーストリテイリング」(同139拠点)が4位、雑貨ブランド「MUJI」を展開する「良品計画」(同99拠点)が6位にランクインしています。

ファーストリテイリング」の新規出店ペースは、2019年に一時的な減速があったものの、2017年から2022年まで概ね加速し続けており、「良品計画」においても、2020年に中国に初進出してから2022年(同40拠点)まで出店ペースは加速し続けています。

このような状況から、衣料品等の小売業においては、コンビニエンスストアや飲食業に比べて、新規出店意欲が維持されている様子がうかがえます。

 

自動車・機械製造業では、「日産自動車」(同99拠点)が6位、空気圧制御機器メーカー「SMC」(同73拠点)が8位となっています。

「SMC」は、2021年(同71拠点)に一気に多くの拠点を新設し、2022年は新設していないのに対して、「日産自動車」は、2016年(同34拠点)から2022年(同32拠点)まで、例年安定して20~30拠点前後の出店ペースを維持しており、各社の長期的な生産計画に基づいて拠点を新設している様子が表れています。

(図表2)

 

(図表2) 日系企業における2020年~2022年の累計新設拠点数ランキング 1位~30位

 

※1 営利活動が許可されていない代表処(※2)や、休業・廃業した企業は除きます。

※2 代表処とは、中国で登記されている外国企業の法人の1種で、一般企業と違い営利活動が禁止されています。

※3 チェーン店には、フランチャイズと直営店があり、ここで取り上げている拠点数は、資本関係がないフランチャイズ店は含まれておりません。

 

(3) 中国に進出した日系企業の関連企業数ランキング

図表2のランキング結果は、リスクモンスターチャイナが調査を行った「中国に進出した日系企業の関連企業数ランキング」(図表3)の結果と一致している企業が多くあります。

図表3のランキングは、2023年3月時点の中国法人登記情報より確認された日系企業の関連企業数を集計したものであり、ランキングの10位「日立ビルシステム」を除いた9社が、今回のランキング(図表2)に登場しています。

このことから、中国での関連企業社数が多く、事業基盤の確立が進んでいる企業においては、2020年から2022年の期間にも、積極的に新規投資を行う傾向にあったことがうかがえます。

2022年にはロックダウンが実施されたことで、出店スピードを減速させた企業も多くありましたが、中国市場への投資意欲は高く、今後も継続的な出店が見込まれます。

 

(図表3) 中国に進出した日系企業の関連企業数ランキング 1位~10位

 

(総評)

中国は今や世界第2位の経済大国となりました。

それに伴い、人々の生活が豊かになり、商品やサービスに求めるクオリティーも高くなっていることで、高品質な商品と優れたサービスを提供する日系企業は、その信頼と実績から中国市場への進出を順調に拡大させてきました。

2022年に実施された上海のロックダウンが企業の経済活動に大きく影響したことで、2022年の新設拠点数が大幅に減少しており、日系企業における出店意欲の低下がうかがえました。

しかし、その一方で、「スシロー」、「ファーストリテイリング」、「MUJI」のように出店ペースを加速させている企業も存在しており、業種ごとにロックダウンの影響力や、中国進出への意欲の差が表れた結果となっています。

 

「ゼロコロナ政策」は一旦終了したものの、今後も、変異株発生による規制強化の可能性に加え、中国が抱える財政赤字や不動産市場の低迷、少子高齢化などの課題、円相場の影響など、中国で活躍する日系企業はさまざまなリスクと隣り合わせで経済活動を行っていかなければなりません。

かかる中で、安定的に事業を拡大していくためには、事業計画に基づきながらも、発生する事象に対して、自社の業種などによる事業特性や市況を考慮して、状況に応じた調整を図りながら、リスクの極小化を図っていくことが不可欠といえるでしょう。

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