阿部監督がどうチームを動かしていくか、期待が高まる(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 巨人は3月29日に行われた阪神との開幕戦(東京ドーム)に4-0と勝利。阿部慎之助監督にとっての初陣で鮮やかに勝利をおさめた。

【動画】これぞベテランの力!梶谷が開幕戦の5回に右越え2ランを放ったシーン

 先発は自身初の開幕投手となった戸郷翔征。若きエースは初回一死から中野拓夢に安打を許すも森下翔太大山悠輔を二者連続三振に打ち取り、波に乗る。味方の好守にも助けられ、6回4安打無失点と大役の仕事を果たした。

 打線ではベテランが攻守にわたって奮闘した。「3番・右翼」で先発出場した梶谷隆幸はまず守備で魅せた。

 1点リードの3回一死一、二塁の場面。森下の痛烈な当たりをダイビングキャッチで止め、すぐさま返球。受けた吉川尚輝が間髪入れずに一塁に送球し、飛び出していた中野もアウトと見事な併殺を完成させた。

 さらに今度は打撃でも存在感を示した。5回二死二塁、相手先発の青柳晃洋142キロ直球をしっかり捉えて、右翼席へ運んだ。チーム1号の価値あるアーチでチームに上昇気流をもたらした。

 7回からはドラフト1位ルーキー西舘勇陽中川皓太、大勢の新勝利の方程式がしっかり機能。終わってみれば、4-0の完封勝ちと昨年大敗した阪神に内容の濃い勝利となった。

 しかし会心の勝利にも指揮官が勝利監督インタビューで笑顔を見せることはなかった。ベテラン梶谷の攻守にわたっての活躍には「場数を踏んでいるなと。素晴らしいですね」と冷静にたたえながら、指揮官としての初勝利には「最高ですね」と現役時代の決めぜりふを言いながらも、満面の笑みを見せることはなかった。

 背景には勝利への渇望感がある。ここ2年は連続4位と常勝軍団には厳しい低迷ぶりで、様々な面で批判の目にさらされた。すべては4季ぶりのV奪回のために。勝利監督インタビューで語った「今日勝つためだけにやってませんので」という言葉に、秘めた思いをにじませた。大事な1勝には違いないが、手放しで喜ぶわけにはいかないということだろう。

 またこの日は開幕戦初勝利の立役者となった梶谷、左翼には同じくベテランの丸佳浩を起用した。チームでは西舘、ドラフト3位ルーキー佐々木俊輔、同じくドラフト4位の泉口友汰の開幕1軍入りが話題を集めたが、指揮官はベテランに目を配ることも忘れなかった。

 昨年不振にあえいだ丸には「まだできる」とメッセージを送り、梶谷もキャンプ2軍スタートとしながら、オープン戦途中で合流させるとすぐ本塁打を放つなどしっかり調整に努めてきた様子を見ると、開幕スタメンに起用した。若手、ベテランの融合、チーム内好循環を実現させたのは、全員野球を打ちだす青年指揮官の細かいケアにあった。

 昨年わずか6勝しかできなかった阪神にまずは一矢報いた。新風吹き荒れるシーズンへ、まだまだ快進撃を続けていく。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

阿部巨人 笑顔なき開幕初勝利の裏側 「秘めた思い」「復活を願った選手たち」とは