MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、天才科学者の栄光と没落の生涯を描く歴史映画、新生“ゴーストバスターズ“とゴーストたちの攻防を描くシリーズ第2弾、人間の世界に飛び込んだシー・モンスターの少年の冒険の、バラエティに富んだ3本。

【写真を見る】オッペンハイマーは、科学者たちとともに原子爆弾の開発に着手していく(『オッペンハイマー』)

■多彩な人間模様を繰り広げる…『オッペンハイマー』(公開中)

今年のアカデミー賞で主要7部門に輝いたクリストファー・ノーラン監督作。論理物理学オッペンハイマー(キリアンマーフィー)は、原子爆弾を開発するマンハッタン計画の責任者に任命される。SF、アクションを中心にスペクタクルな映像で観客を圧倒してきたノーランの最新作は、“原爆の父”の素顔に迫る初の伝記映画。さまざまな障壁を乗り越えて原爆を開発していく過程に加え、核の時代の扉を開き苦悩する姿も丁寧に描かれている。そんな本作のドラマ部分のキモが、オッペンハイマーを取り巻く人々の群像劇だ。妻、愛人、軍関係者、アクの強い研究者たちが登場し、友情や対立、愛憎劇など多彩な人間模様を繰り広げる。

なかでもオッペンハイマーと米原子力委員会のストローズ(ロバートダウニー・Jr.)の確執は、原爆開発と並ぶ本作のもう一本の柱。法廷劇スタイルのスリリングな争いは、カタルシスあふれるクライマックスを生みだしていく。オスカーに輝いたマーフィーダウニー・Jr.をはじめ、出番の少ないケネス・ブラナーやラミ・マレック、ゲイリー・オールドマンたち多くの演技派も圧倒的な存在感を発揮。映像や独特の世界観で注目されてきたノーランだが、濃厚な人間ドラマがプラスされた本作は彼のさらなる進化が実感できる力作だ。(映画ライター・神武団四郎)

■氷柱が降り注ぐ大都会パニックスペクタクル…『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』(公開中)

泣ける「ゴーストバスターズ」として好評を呼んだ、新世代シリーズの第2弾が早くも登場。前作で幽霊退治チームを再生させた少女フィービー(マッケナ・グレイス)が、今回は旧ゴーストバスターズの本拠地NYで巨大な敵に立ち向かう。フィービーと、チームの面々である家族らとの結束はさらに強まるも、なにぶん彼女はまだティーンエイジャーで制約も迷いも多い。そんな不自由のなか、大都会を文字通り氷づかせる邪神と対決しながら成長していく物語はスリリングにして胸アツ。

前作の顔ぶれはもちろん、旧シリーズの面々も結集し、アップデートされたシリーズを盛り立てる。寒波が襲来し、氷柱が降り注ぐ大都会パニックスペクタクルともども、注目を!(映画ライター・有馬楽)

■おちゃめなポイントも観ていて楽しい…『あの夏のルカ』(公開中)

シーモンスターであるルカ(声:阿部カノン)が海の中から陸の上を知るところの衝撃は、私たち人間が海の美しさに驚くところときっとそっくりなんだろうな、と思わずルカのはしゃぎっぷりを見ると、微笑ましくなってしまう。ルカの真面目で優しい性格は、たまたま陸の世界を教えてくれたアルベルト(声:池田優斗)の気持ちも動かしていく。知ったかぶりでかっこつけたい、ちょっとズルいアルベルトからしたら、真面目で優しいルカは魅力的で、でもどこか自分の弱みのことを思いださせる存在。一緒に過ごしていてもどこか心がちくっと痛む。人間のジュリア(声:福島香々)がルカの友だちとなり「負け犬」チームとして、レースに出場する時も、自分と違って勉強熱心なルカに屈折した感情を抱くようになってしまう。そんなところが愛おしい。

イタリアが舞台なこともあり、吹き替え版には細かいところにイタリアの地名や食べ物の名前がふんだんに出てくるおちゃめなポイントも観ていて楽しい一作。(映画ライター・詩舞澤沙衣)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

天才科学者オッペンハイマーの生涯を描く『オッペンハイマー』/[c] Universal Pictures. All Rights Reserved.