SNS、テキストメディア、動画投稿サイトなどを通じて、ネット上では様々な人が投資について自分の意見を述べています。こうした人たちのなかから「話を聞くに値する人」を見極めるには、どうすればよいのでしょうか? そこで本稿では、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、話を聞くに値する人を見極める判断材料として3つの特徴を挙げ、それぞれどのような部分に注目すべきかについて詳しく解説します。

[話を聞くに値する人]その1:投資経験が長い

まず注意したいのは、その人に十分な長さの投資経験があるかどうかです。投資経験3年以下の人ならば、その意見はあまり当てにならないと思ったほうがよいでしょう。5年を超え、10年に近づき、それを超えるようになると、話を聞くに値する、といえるのではないでしょうか。そして何十年もの経験がある人ならば、ぜひ話を聞きたいものです。

長期にわたって株式市場から「退場」していない人というのは、それなりの何かを持っていると思われます。2〜3年程度ならば、その期間がたまたま上昇相場であったなど、「まぐれ」で勝つこともめずらしくないでしょう。誰がやっても儲かった2〜3年に、たまたま株式投資をしていた、というだけの話なのかもしれません。

しかし、投資をしている期間が長くなればなるほど、下落相場や大暴落など、投資をするに際して不利となる出来事が起きる確率も上がります。ですから、長期間退場せずに株式投資を続けられている人というのは、まぐれだけではない何かを持っていると思ってよいのではないでしょうか。

[話を聞くに値する人]その2:運用成績を公開している

そして、運用成績を公開している人の話は、そうでない人と比べて聞く価値が高いといえるでしょう。

話を聞くならば、優れた投資家の話を聞きたいものですが、その唯一の判断材料となるのが、運用成績です。年平均5%の運用をしている人と、20%の運用をしている人ならば、どちらが凄いかは明確といえます。

ただし、前述のように株式投資は「まぐれ」が起きやすい世界といえますので、その成績が長期にわたるものかどうかも、注意する必要があるでしょう。

なお、ネット上で意見を述べている人のなかには、運用成績を公開していない人が実は珍しくありません。何か事情があって公開できない、運用成績が凡庸である、そもそも本当は株式投資をしていない、などいろいろなパターンがあると思います。

しかし、運用成績が公開されていない以上、その人の投資の能力が優れているかどうかは判断しようがありません。ですから、その人の話は聞くに値するかどうかわからない、と思っておいたほうがよいでしょう。

[話を聞くに値する人]その3:資産増加額でなく運用利率が高い

そして、運用成績を公開している人のなかでも、資産増加額でなく運用利率が高い人ほど、話を聞く価値が高いといえます。資産増加額というのは、運用した資産がいくら増えたか、という数え方です。一方の運用利率は、元手に対して何%増加したか、という数え方です。そして前者は、あまり当てにならない話なのです。

資産増加額の話としてたとえば、「この人は、100万円を20年で1億円にした」などという話があり、その投資方法が注目されることもありますが、あまり当てにはなりません。というのも、その間に「増資」をしたのか否か、したならばいくらしたのか、が非常に重要な点なのですが、この場合それが明らかになっていないからです。

元手100万円を、増資なしで20年間で1億円にしたならば、毎年26%近い運用成績を上げたということになり、大変すごいことです。ところがこの人が、20年間、毎年100万円ずつ増資をしていたとしたらどうでしょうか。すると、20年目が終わる時点で、元手は2,100万円だったことになります。そうすると、実際に投資で増やした割合というのは、ずいぶん目減りします。

このように、単に運用した資産がいくら増えたか、というのは投資家を評価する基準にはならないといえるのです。

一方、「年平均何%の運用を何年続けている」と運用利率がしっかり公開されている人こそ、話を聞く価値のある投資家といえるでしょう。その人がいくら儲けたか、最終的にいくらの資産を築いたかは一見わかりませんが、毎年の運用利率を掛け算していけば、元手を何倍にしたかはちゃんとわかります。

増資の有無や金額に関係なく、純粋に投資によってどの程度の利率で資産を増やしていったかが明白ですので、投資家の真の成績がそこに表れているといってよいのではないでしょうか。

優れた投資家を見抜き、その話を聞こう

話を聞くに値する投資家は、「投資経験が長い」「運用成績を公開している」「資産増加額でなく運用利率が高い」という3つの条件を満たしているといえそうです。

誰かの投資手法を参考にするならば、優れた投資家を見抜き、その話を聞きたいものです。逆に、注目を集めているだけで優秀さが明らかになっていない人の話は、聞いても意味がないかもしれません。

川合 一啓 株式会社ソーシャルインベストメント 取締役CTO

(※写真はイメージです/PIXTA)