剣と魔法のファンタジー世界でも、仕事の内容は人それぞれ。その中には、「声のお仕事」が生業の人もいて――?

【漫画】「異世界の声優さんのお話」を読む

WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。アルファポリスにて「前世は剣帝。今生クズ王子」(原作:アルト)をコミカライズ連載中の漫画家・早神あたか(@yaminome)さんのオリジナル作品「異世界の声優さんのお話」は、こちらの世界から異世界で声優として働く女性にインタビューをするという独創的な構図で描かれる短編作品だ。

テレビやインターネットがない代わりに、魔法を使った遠隔放送が普及した世界で、人気声優として活躍する「エリーナ・フェルベラント」の1日に密着した同作。同じ「声優」であっても世界が異なれば仕事の内容も変わるもの。予想外な仕事もありなその一端を描くとともに、変わらない声のプロフェッショナルとしての姿を映し出している。そんな同作の制作秘話を、作者の早神あたかさんにインタビューした。

――本作の着想について教えてください。

【早神あたか】数多くの異世界転生作品があると思いますが、プログラマーとか料理人とか、転生前の職業がファンタジー世界でも重要になるものも多いと思います。じゃあどういう職業だったらファンタジー世界でおもしろくなるんだろうと考えたときに、人気だけど異世界転生もので見たことないなと思った職業が「声優」でした。異世界に声優さんがいたらどういう仕事をしてるんだろう……、私たちの世界に声優さんが必要なように、ファンタジーな世界でも声優さんは必要になるはずだ、と思って設定をいろいろ膨らませていきました。

――インタビュー形式で描かれているのが一つのポイントに感じます。この構成はどんなところから?

【早神あたか】たくさん設定や仕事を思いつきましたが、この漫画は1日で作画を完成させるというもう一つの目標があったので、あまり長いドラマやエピソードを入れることはできなくて……。ストーリーがうまくまとまらなくてお蔵入りになるかなぁと思いましたが、ちょうどそのころ、別作品で自分自身がメディアの方に取材を受けた直後で、インタビューを受けているという設定なら、たくさん仕事を紹介しても読みやすく不自然ではないのでは?と思いネームを描き始めました。

――インタビューに答えるという構成でこちらの世界との声優観の違いを提示したり、もっとも大きく異なる部分が最後に明かされるといった流れがきれいにはまっていると感じました。ストーリーを仕上げるうえで意識したポイントはありますか?

【早神あたか】取材中は私たちの世界でもありそうだなという仕事を中心に異世界との差異を楽しむようにして、そして最後に絶対にファンタジーの世界にしかない、でもファンタジーならではだなと思う声優の仕事を見せるようにしました。

――「声で戦いを遠隔支援」といった話を広げられるアイデアがぎゅっと散りばめられていて、短編で読むと続きが見たくなるなと感じました。ネタの取捨選択や、短編の尺での見せ方についてはどう考えられたのでしょうか?

【早神あたか】取材形式にしているので、読んでいる人が疑問に思いそうなところをインタビュアーが聞いて、すぐに回答ですっきりさせていくのがよかったんだと思います。取捨選択や尺については、1日に入りそうな仕事量やスケジュールを考えた後、動画サイトに投稿されている、ルーティン動画やVLOGやカバンの中身紹介動画などを参考にしました

――取材応対時の物腰と、戦いの場面での凛々しい表情のギャップのあるエリーナも魅力的なキャラクターです。異世界の声優というキャラの中でエリーナのような人物を描いた理由や、描き方についてこだわった点があれば教えてください。

【早神あたか】エリーナ本人も言っていましたが、私たちの世界の声優さんでも、私たちがイメージする「アニメのキャラクターの声」以外のおもしろい仕事をやってる人がたくさんいると思うんですよ。そういう部分をファンタジーを通して描けたらいいなと思っていたので、世間からあまり注目されない仕事でも、自分はこの仕事が好きだ!!というのがわかるキャラクターにしたいと思ってました。なので、新人感とベテラン感の両方を出し、セリフに出さずともそれが伝わるようなキャラクターになっていればいいなと思ってます。

取材協力:早神あたか/ATAKA(@yaminome)

異世界にも声優がいたら?現代とファンタジーの違いがおもしろい短編漫画/早神あたか/ATAKA(@yaminome)