反響の大きかった2023年の記事から選ばれたジャンル別トップ10。今回は集計の締切後に、実は大反響だった11月12月公開記事に注目。惜しくもトップ10入りを逃した記事を順不同で紹介!(集計期間は2023年11月~2024年1月。初公開2023年11月20日 記事は取材時の状況)
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「パワーカップル」とは高収入の共働き夫婦を指し、世帯収入の定義は700万〜1000万円以上とも言われる(ニッセイ総合研究所、三菱総合研究所)。なかでも特に収入の高い世帯はトラブルが多かった!?

◆夫婦で散財して家計破綻。離婚しカネも残らない

田口さん元夫婦のケース【世帯年収4,500万円[夫:3,200万円・妻:1,300万円]】

 港区に住む、絵に描いたようなパワーカップルだった外資系コンサルの田口俊樹さん(仮名・43歳)と同業の元妻(38歳)。

 昨年、8年間の婚姻生活を終えた原因はお互いの浪費だった。きっかけは、港区の富裕層コミュニティ。田口さんはそれを「港区会」と呼んでいた。

「結婚後に、私が妻を誘いました。ここでの出費は、ゴルフ、ヨット、高級レストラン、旅行などの交際費や、見えを張るためのブランド品購入など。お互い年収も毎年上がっていったので危機感はなく中毒状態でした」

 妻は週末ごとに港区会の夫人たちと一泊15万円の宿に泊まるなど豪遊。田口さんも手取り100万円のところ、月に150万円は散財していた。

「請求書などは一切見ずに捨てていた」という。

◆8,000万円のペアローンを組み…

 そうして3年後、そろそろ住宅購入を…と思い共同口座の残高を確認すると、なんと想定の3分の1以下の1,000万円しか残っていなかった。

「さすがにまずいと思い妻に港区会を辞めようと提案すると『お互い稼いでいるのだから無意味』と一蹴されました。何よりも妻は、コンサートやリゾート優先権など富裕層にしか入ってこないVIP情報を手放したくなかったのです」

 よりによってその状況で8,000万円のペアローンを組んだことで破綻に加速がつく。

「ローンを組めば嫌でも節約すると思ったんです。妻も稼ぎがあったので同意しました」

しかし妻の行動は変わらず、逆に諍いが増えた。最終的に世帯年収は約4,500万円まで上がったが、冷え切った関係は修復できず離婚。

 ペアローンの残債は売却益とわずかに残った預金で補塡した。

「子どもがいたら違っていたのかもしれませんが…」もう戻らないカネと愛を懐かしむ田口さんだった。

◆支払えなければ連帯責任!?「ペアローン」のリスク

 住宅価格が上がっている昨今、パワーカップルの間で人気となっているペアローン。だが、リスクも大きい。ランドネットの松木和紀氏はこのように話す。

「ローンを組んだ後に、片方が産休・育休に入ることで銀行が見込んでいた返済額収入が続かず、返済が困難になるケースも見受けられます」

 夫婦それぞれの口座から支払う方式がひそかな曲者だという。

「借入額が半分ずつ、または一定の比率でそれぞれの口座から引き落とされますが、片方がきちんと返済していても片方が滞っていると連帯責任となり、最悪の場合はご夫婦で買った家が差し押さえられてしまうこともあります」

◆ペアローン、離婚時はどうなる?組む際に気を付けるべきこと

 そして離婚時は名義人に全ての返済義務が生じる。なかなか難易度が高いペアローンだが、それでも組む際に注意しておくべきこととは?

「無理のない返済計画です。マンションならば修繕積立金が10〜15年後に上がり、毎月の返済額に上乗せされることを想定するなど、先を見込んだ借り入れが重要です」

ランドネット・松木和紀氏】
新築・中古区分マンションの仕入れと販売を経験したのち、住宅ローンを扱う銀行代理店を経て不動産会社の立場から住宅ローンの融資のあっせん業務を行う。

<取材・文・撮影/和場まさみ 大貫未来(清談社)川口友万 根本直樹 安宿緑 写真/PIXTA>

今は地方で自給自足生活を送る田口さん。年収は全盛期の30分の1になったが、「今が一番幸せ」と話す