日本赤十字社(本社:東京都港区、社長:清家篤、以下「日赤」)では、市区町村ごとで高齢者の支援活動などを行う「地域赤十字奉仕団」、日頃の訓練を生かして災害発生時に活動する「防災ボランティア」など、全国で約2900団、約85万人の「赤十字ボランティア」が活動しています。
国内では1月、石川、新潟、富山、福井の4県を襲った「令和6年能登半島地震」(以下「能登半島地震」)が発生しました。多くの方々が被害に遭われた中で、日赤としても救護班の派遣などを通じ、被災地支援に取り組んで参りました。現地では仮設住宅の建設をはじめとした復旧・復興に向けた動きも始まり、それに伴い、ボランティアの宿泊拠点も設置されるなど、ボランティアの活動シーンも徐々に増えている状況となっています。
一方でSNS等では当初、被災地への不要不急の移動を控えることが求められた中で、「行かないボランティア」といった言葉が見受けられたように、ボランティアの在り方をめぐる意見・議論が飛び交う様子も散見されました。

能登半島地震から3ヶ月、日赤ではボランティアをめぐる一般の方々の意識を探るための調査を10代~60代以上の男女、合計1200名を対象に実施しましたので、結果をお知らせいたします。

なお今回の調査は、2024年3月、被災4県の居住者を除く形で実施いたしました。

<調査結果のハイライト

  • 被災地域での活動に関わらず、ボランティア活動をする前に、自治体やNPO等が開催するボランティアクチャー(※)に参加したことがない人は、回答者全体の78.3%(939人)に上った。【図1】

  • また今後、災害時に被災地でボランティア活動に取り組むために、「事前に知識やスキルを学んだり、習得したりすることを必須にした方が良いと思うか」について尋ねると、回答者全体の85.0%が「必須にしたほうが良いと思う」と答えた(「とても」408人、「やや」612人)。【図2】

    ボランティアクチャー…ボランティア活動をする際に求められる振る舞いや準備、緊急時の対応等について、対面の講座やオンライン会議、動画視聴等で事前に学んだり習得したりする機会と定義(活動の際に現地で行われる説明やオリエンテーションは含まず)。

  • 過去に被災地でボランティアを経験した人173人のうち、事前にレクチャーに参加した人は27.7%(48人)と3割を下回った。そのうち85.5%が「役立った」と回答(「とても」21人、「やや」20人)。【図3】

  • 役立った理由は、「事前に具体的な活動や求められる行動が理解できたから」が65.9%(27人)で最多となり、次いで「ボランティアに参加する前に準備しておくことを知ることができたから」が58.5%(24人)、「事故や怪我、予期せぬトラブル等緊急時の対応が想定できたから」が53.7%(22人)などと続いた。【図4】

  • また事前レクチャーに参加しなかった125人のなかでも、「今後は参加したい」と考える人は73.6%(「とても」18人、「やや」74人)と考えていることが分かった。【図5】

  • 一方、被災地でのボランティア経験者の31.8%(55人)が「活動に満足していない」と回答。【図6】

  • 満足しない理由の上位には、「被災地の状況から、活動内容に制限があったから」が30.9%(17人)、「ボランティア経験がなく、現地でどう動けば良いか迷ったから」が23.6%(13人)、「被災地の状況を、事前によく理解できていなかったから」が20.0%(11人)などの声が挙げられた。【図7】

  • 本調査では、災害時のボランティアの思考や行動(※)をめぐる国民の考え方の変化に関しても尋ねた。【図8】

    ※各項目は、「政府広報オンライン『被災地を応援したい方へ 災害ボランティア活動の始め方』」などを参考として「控えるべきとされている行動」を聴取した。

  • 「被災地の自治体に問い合わせて、事前に情報をよく確認することが大切である」という考えについて、「以前も最近もそう思う」と回答した人は65.2%(782人)、「以前はそう思わなかったが、最近はそう思う」は17.8%(213人)と合計で8割を超える人がそのように考えていた。

    「以前はそう思っていたが、最近はそう思わない」は10.4%(125人)、「以前も最近もそう思わない」は6.7%(80人)であった。

  • ボランティアは、時には求められたこと以上に自発的に考え、行動することも必要」については、「以前も最近もそう思う」が46.6%(559人)、「以前はそう思わなかったが、最近はそう思う」が16.0%(192人)となり、6割超という結果となった。

    「以前はそう思っていたが、最近はそう思わない」は20.9%(251人)、「以前も最近もそう思わない」は16.5%(198人)となった。

  • 「最もニーズが高いのは被災状況の大きな地域であり、優先的に活動すべき」においても、「以前も最近もそう思う」と考える人は46.4%(557人)、「以前はそう思わなかったが、最近はそう思う」14.4%(173人)とあわせると60%の人がそのように考えていた。

    「以前はそう思っていたが、最近はそう思わない」は22.9%(275人)、「以前も最近もそう思わない」は16.3%(195人)であった。

  • 「混乱している被災者に代わり、なるべくボランティアが率先して復旧・復興を推進していくことが必要」に関しては、「以前も最近もそう思う」と回答した人は40.6%(487人)おり、「以前はそう思わなかったが、最近はそう思う」は16.7%(200人)と、半数を超える人の回答が集まった。

    「以前はそう思っていたが、最近はそう思わない」は22.8%(273人)、「以前も最近もそう思わない」は20.0%(240人)となった。

  • 「災害時のボランティア活動は、被災直後に短期・集中的に支援することが最も重要」という考えについて、「以前も最近もそう思う」と回答した人は36.2%(434人)、「以前はそう思わなかったが、最近はそう思う」15.6%(187人)と合計すると、そのように考える人はこちらも50%を超えた。

    「以前はそう思っていたが、最近はそう思わない」は27.8%(333人)、「以前も最近もそう思わない」は20.5%(246人)であった。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8

能登半島地震をはじめ、広範囲に被害が及んでいる大規模災害では、発災直後は被害の全容が把握できていないことがしばしばあります。最近も、場所によっては安全性や求められる支援が確認できていない状況から、ボランティア活動について、SNSやインターネット上で議論が交わされる中で、時には意見が対立する様子も見受けられました。今回の調査結果では、ボランティアの思考や行動に対する考えについて個人間に違いがあり、また変化が起こっていることが明らかになりました。

災害時のボランティア活動は、阪神・淡路大震災(1995年)をきっかけに注目が集まるようになり、この時が「ボランティア元年」ともいわれています。その後の東日本大震災熊本地震西日本豪雨など、各災害で被害に遭った地域の復旧・復興の進展は、ボランティアによる支えも大きな力となりました。

災害時の医療・救護活動やボランティア活動を実施している日赤としては、「いかに被災地・被災者に寄り添い、求められる行動が提供できるか」が重要であると考えています。日本では、今後も大規模災害が起こる可能性がゼロではありません。平時から、いかにして迅速かつ適切に行動するのか、議論を尽くしておくことも大切です。「人を助けたい」という思いから生まれるボランティア活動を通して、非常時にはお互いが助け合う『共助』の機運を醸成していくためにも、日赤としては各種啓発活動に取り組んでいきます。

赤十字ボランティアは、石川県内のメンバーをはじめ、被災地内外で救援物資運搬や救護班のサポート、避難所運営支援を行うなどさまざまな支援を行っており、活動への参加者数は延べ1,600人を超えています(3月19日時点)。今回の災害では発災後1カ月たっても多くの地域で災害ボランティアの受け入れ態勢が整わず、救助や支援活動の障害となる深刻な渋滞もあり、県外ボランティアが被災地で活動するのは難しい状況でした。そんな中、救護班と共に行動することで交通事情にも配慮し、被災地に負担をかけない自己完結型支援を徹底した「救護班帯同型のボランティア」が複数の県から被災地に向かい活動しました。

赤十字ボランティアは、災害が起きていない平時に訓練や研修を受け災害救護活動におけるノウハウを習得します。災害が発生すると、日赤の活動(情報収集、応急手当、炊き出し、救援物資の輸送・配分、避難所の支援など)に参加。1日限りの支援ではなく、被災地を長く支援する赤十字の一員としての役目を担います。

被災地では今も交通状況や給水状況等が厳しい状況が続いているため、被災地の状況を確認し慎重な行動が必要です。被災地のボランティア活動は自己完結が求められますが、食事、トイレ、就寝場所等を含め一層の自己完結に留意していただくこと、また寒暖差もあることから、寒さ対策の徹底も求められます。マスクや消毒等の感染対策や体調管理も重要です。ボランティアの受け入れ状況・事前登録等もよくご確認ください。

日赤では、災害時のボランティア活動について、活動前後の準備や注意点をまとめた冊子「ボランティア、ご安全に!」を作成し、WEBサイトに掲載しています。この冊子では、ボランティアの方々が安全で健康に活動できるよう「活動前の準備」「活動中に気を付けること」「被災者への接し方」などの安全管理について、日赤医師の監修のもとにお伝えしています。また、ボランティア活動に伴いストレスを受けることもあることから、セルフケアも大切になります。本冊子では「セルフケアのポイント」もお伝えしています。

冊子の内容はこちらからご覧いただけます。

ボランティア、ご安全に!」(日赤WEBサイト)

https://www.jrc.or.jp/volunteer-and-youth/volunteer/news/2022/0624_000999.html

▼冊子「ボランティア、ご安全に!」概要版(一部)

ボランティア、ご安全に!
  • 調査概要

調査名     ボランティア活動に関する意識調査(2024年)

調査対象    日本の男女1200名(10~60代以上の男女各100人)

        ただし石川、富山、新潟、福井の4県居住者を除く

調査方法    インターネット調査

調査機関    楽天インサイト株式会社(調査委託)

調査期間    2024年3月

※その他詳細なデータについては、日本赤十字社広報室にお問い合わせください。

※本調査を引用する場合は「2024年日赤調べ」もしくは「日本赤十字社ボランティア活動に関する意識調査(2024年)』」と記載ください。

配信元企業:日本赤十字社

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