〈独自商品などで差別化より広がる〉

コロナ禍に見られた冷凍食品ブームは落ち着き始めたとの見方が強まるものの、冷凍食品売場の拡大は今も続いており、小売関係者からは冷凍食品への期待の声は依然として大きい。スイーツなど新規カテゴリーの拡充に加え、オリジナル商品の展開や、地方特産品など珍しい商品の強化を進める店舗も増えている。

冷凍食品市場において、販売金額は伸長したものの、食数は前年並みか減少傾向にあった。日清食品冷凍がSCIデータなどから算出した2023年度の市場規模(見込)は、前年度比7%増の8,625億円となった。各社ともコスト増加などに伴う値上げを実施し、その影響で伸長したと見られる。一方で販売食数は2%減となった。コロナ禍の20~22年と比較すると減少傾向にあるものの、19年比では2%増で、コロナ禍以前よりも市場は広がったとも考えられる。

20~22年と比べれば勢いは落ち着いてきた冷凍食品市場。しかし、冷凍食品専門店や卸を手掛ける、アイスコの三國慎専務取締役は「コロナ以前からあった即食・簡便・時短のニーズに応えてきた冷凍食品は、コロナ禍に新規ユーザーを取り込んでさらに広がったと見ている。市場のニーズが活発だからこそ、小売店でも新店やリニューアルで冷凍食品売場を広げる動きは今も続いている」と話す。

セブン-イレブンジャパンのFF・冷凍食品シニアマーチャンダイザー、米田昭彦氏も、冷凍食品の動向について「個食や簡便性など消費動向の変化に、冷凍食品は対応していたためコロナ禍をきっかけに伸長し、コロナの影響が落ち着いた後は出勤率も増えて忙しくなり、調理時間を減らしたいという需要が再び顕在化して、幅広いカテゴリーで伸びている」と語る。

各社に好調なカテゴリーを聞くと、コロナ禍以前にも順調だった惣菜類や麺類などカテゴリーに加え、主菜と副菜をセットにしたワンプレートの商品など、手軽に食事を終えられる商品が支持を広げつつあるという。こうした商品は新商品やオリジナル商品の投入も進みつつあり、存在感はより増している。

冷凍食品売場も依然として広がっている。サミットが3月1日にオープンした新店舗『サミットストア ららテラス HARUMI FLAG店』では、冷凍食品の商品数を既存店と比べて約2倍に広げている。

プライベートブランド商品など独自商品の存在感もより増している。アイスコで展開の冷凍食品専門店「FROZEN JOE’S(フローズン・ジョーズ)」では、大手メーカーの商品でも一般のスーパーにはあまり置かれていないものや、独自に仕入れた商品などを充実させたところ、客単価は順調に推移したようだ。

松屋銀座店にある冷凍食品売場「GINZAFROZEN GOURMET(ギンザフローズングルメ)」も、高単価ながらも堅調に推移しているという。食品一課の今井克俊課長は「自分で食べてファンになった方が、ギフトとしても活用してくれるようになった」と話す。

ダイエーでは、一部店舗で冷凍商品「冷凍dai革命」を展開している。これまで常温や冷凍で販売していた弁当やパン類などを、冷凍品として展開している商品群で、『イオンフードスタイル松原店』(大阪府松原市)において、売上は計画比で50%ほど上回ったようだ。冷蔵として販売している商品への影響はほとんどなかったという。今後は関西圏で展開を広げると共に、関東の店舗でも導入を検討している。

他にも、売場の拡大と共に、オリジナルスイーツや、コラボ商品など独自商品の強化も目立つ。こうした商品で来店動機をつくり、売上の拡大を目指している。

今後は、SDGsや物流問題への対応といった側面でも冷凍食品の支持は広げる可能性があるという。関係者からは「冷凍商品は、ワンプレートの商品なら1食で使い切りやすく、冷凍野菜ならば好きな時に好きな量を活用できるため、ほとんど無駄がない。食のロングライフ化が求められる中、冷凍食品はこうしたニーズにも応えられるため、伸びしろはまだあるのでは」との声もある。

一方で、冷凍食品への抵抗感からまだ食べたことのない人も依然として多い。利便性と共に、冷凍食品の安全性を伝える施策など、地道な取り組みによる支持獲得も重要かもしれない。

〈冷食日報2024年4月1日付〉

冷凍食品の利用がコロナ前より増加傾向に、小売では冷食売場の拡大続く