2024年3月初め、成層圏の気温が突然上昇したために、北極の上空を流れる「極渦」という気流の渦の流れが逆回転してしまったそうだ。
今回の逆回転によって、過去にあったような極端な寒波が訪れるようなことはなさそうだ。
だが、反転した気流の速さはこれまででトップクラスの記録的なもので、局地的なオゾンの増加現象(オゾンスパイク)まで観察されている。
「極渦(きょくうず)」とは、北極や南極を取り巻く、大きな気流の渦のことだ。
冬にもっとも顕著で、成層圏(高度10~50kmくらいまでの大気層)にまで及ぶ。その速さは最大クラスの台風に匹敵するもので、北極の場合、風速250km/hの気流が反時計回りに流れている。
だが時々、一時的に流れが反転することがある。ほんの数日のうちに成層圏の温度が50度も上昇(成層圏突然昇温)することが原因で、反転した流れは数日から数週間、場合によっては数ヶ月続く。
北極や南極を囲む気流の流れが「極渦」だ。これはその周囲のジェット気流の主な原動力でもある/Image credit: NASA/Goddard Space Flight Center
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記録的な極渦の逆回転現象
今起きている極渦の反転は3月4日頃に始まったという。だが、風は遅くなりつつあり、まもなく通常の流れに戻ると予測されている。
とは言え、今回の反転した風の流れは観測史上トップ6に入るほどの記録的な風速だったそうだ。
成層圏突然昇温によって、気流の流れが乱されることが反転の原因/Image credit: NOAA Climate.gov
極渦の乱れは強烈な寒波をもたらすことがあるが今回は影響なし
こうした極渦の乱れは、世界各地に強烈な寒波をもたらすことがある。
極渦を囲むジェット気流が乱れ、北極圏の冷たい大気が低緯度の地域にまで垂れ込んでくるからだ。地球温暖化が進んでいるのに寒い冬になる理由もそれが原因と考えられている。
ただ今回のものについては、ジェット気流の乱れが見られないため、今のところそのような影響は出ないだろうと考えられている。
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一方、北極周辺の気温の変化により、低緯度から大量のオゾンが吸い上げられ、一時的なオゾンスパイク(オゾンホールと逆の現象)が発生している。そしてこちらも、極渦の流れが元に戻れば、やがて落ち着くだろうと予測されている。
来年以降も極渦の反転が起きる可能性
過去の記録を踏まえるなら、成層圏突然昇温はエルニーニョ現象やラニーニャ現象の時期に起こりやすい。エルニーニョ現象でもラニーニャ現象でも地球の気象が不安定になるからだ。その結果として、極渦も反転しやすくなる。
すでにピークは過ぎたが現在もエルニーニョ現象の真っただ中にあり、来年以降もさらなる反転が起きる可能性があるとのことだ。
References:Spaceweather.com Time Machine / Polar vortex is 'spinning backwards' above Arctic after major reversal event | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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