もしも「絶対に儲かる投資信託」があれば、全財産をつぎ込んでも投資したいものですが、投資に「絶対」はありません。とはいえ、投資信託を選ぶうえで「やってはいけない選び方」は存在します。今回、『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』著者でCFPの小山信康氏が、投資初心者がついやってしまう「誤った銘柄選び」の共通点を見ていきましょう。

円高・円安についてどう考える?

2023年は、円安の傾向が顕著でした。投資において円安は歓迎される向きが強いため、多くの投資信託のパフォーマンスに好影響を与えていました。

直接的に円安の恩恵を受けるのが、外国資産で運用する投資信託です。単純計算で、1ドル=100円から1ドル=120円と20%の円安となれば、投資信託の基準価額も20%程度の値上がりが期待できます。

「金(ゴールド)」で運用する投資信託も、円安による値上がりが期待できます。金はドル建てで売買されているからです。

さらに、間接的に恩恵を受けると考えられるのが国内株式です。上場企業には輸出に頼る会社が多いため、円安により外国企業との価格競争力が高まり、利益が増えやすくなると考えられるからです。そのため、一般的に円安は国内株式の上昇要因となります。

ただ、中には円安を好感しない資産もあります。その代表例が国内債券です。

外国の投資家が円を買うと、ただ現金で置いておくのももったいないので、債券を購入するなどして、ある程度の利息収入を狙います。

しかし、円安の局面においては、そのような外国の投資家が円を売る前段階で、持っていた国内債券を売るケースも増えてくるので、債券価格が下がりやすくなります。

さて、このまま円安傾向は続くのでしょうか?

それは誰にも分かりません。

「分からない」ことに不安を感じる方もいるでしょう。しかし、あなたが長期投資を心がけるのであれば、為替リスクを無視するという方法も考えられます。

為替ヘッジを付けた投資信託とつけていないものの推移を長期的に比較すると、大して変わりません。つまり、長期的に投資を続けるのであれば、為替のリスクについては、あまり気にしないというのもひとつの方法なのです。

運用実績と将来予測は別…“やってはいけない”銘柄選び

過去の実績をどのくらい重要視する?

前項で紹介したIMFの世界経済見通しですが、単なる予測なので、この数字が実際の経済成長にピッタリ当てはまると妄信しないでください。IMFも、数ヵ月後にシレっと数字を修正することもあるくらいです。それくらい、将来を予測することは難しいのです。

[図表2]のグラフは、ある投資信託の運用実績です。

途中、多少の値動きはあるものの、約9年で30%以上の値上がりとなっています。実際、当時はこの投資信託の評価は高く、投資信託を評価する企業「モーニングスター」の選考による「ファンドオブザイヤー」も受賞していたくらいです。人気も高く、金融機関での販売量も増えていたようです。

ところがその後、グラフで分かるように基準価額は低迷し、2023年9月30日までの2年間で約10%値下がりしています。

私たちが投資信託を選ぶときは、当然、過去の実績を確認する必要があります。過去の実績が低迷している商品に、今後の値上がりは期待しづらいからです。

もし今、私たちが2021年9月にタイムスリップしたら、この商品を購入することなどないでしょう。値下がりする未来を知っているからです。

しかし、現実的にそんなことは不可能です。だからこそ、私たちは商品を選ぶときに心がけることが必要です。

「目の前にある情報は単なる過去の実績。このまま続くかどうかは未確定」

であることを。

投資初心者は「過去の実績」に目が行きがちだが…

これまで、ファイナンシャルプランナーとして投資信託のしくみ等を説明している中で、投資初心者の方々に「とりあえず過去の実績に目が行く」という共通点があることを強く感じます。

直近1年間や3年間の運用実績がマイナスだったりすると、それだけで見向きもしないという方が多い印象があります。

[図表3]のグラフ①は、ある投資信託の2008~2012年における基準価額の推移です。

当初パフォーマンスが低迷(-4.68%)していたことが分かります。しかし、その後の10年間(②)は+25.61%となっています。

かつて大人気だった商品なので、この10年間は悪く言われることが多かったのですが、運用自体は好調でした。

繰り返しになりますが、投資信託を選ぶ際には、過去の実績や評判だけで判断してはいけないのです。

小山 信康 CFP® 1級企業年金総合プランナー  

(※写真はイメージです/PIXTA)