2024年3月8日モビリティリゾートもてぎに新アトラクション『空のアスレチックひろば KONOMI』がオープンした。同月2日にはオープニングセレモニーが開催され、YouTubeクリエイター・フィッシャーズちょんまげ小僧が登壇。抽選で選ばれた観客が待ちわびる中、2組が姿を現すと、拍手と歓声が沸き起こった。

セレモニーにはフィッシャーズ&ちょんまげ小僧が登場

 この日お披露目された『空のアスレチックひろば KONOMI(以降、KONOMI)』は、子どもたちがリスの目線で森の中での暮らしを疑似体験する様子を親が見守り、ときにサポートするアトラクション。アスレチック内には作られた大きな蜘蛛や通過者を狙う大鷹がおり、小屋の隙間からは大蛇の尻尾が覗くなど、自然界が再現されている。

 ステージではフィッシャーズのリーダーシルクロードのMCでグループ対抗クイズ大会が行われ、KONOMIモビリティリゾートもてぎに関する質問に、両グループの各メンバーが回答。アスレチックにちなみ、「クモの糸」を英語で答える問題には、ちょんまげ小僧が「ホンダモビリティリゾートもてぎ運営元)」と答えて観客の笑いを誘うなど、しっかりと場を盛り上げた。

 さらにセレモニー内ではちょんまげ小僧ひき肉とイソ・ギンチャクが一足早くアスレチックを体験。シルクロードとンダホは2人をサポートしながら内部の様子を実況した。最後には、シルクロードが「いろんな遊び方があると思います。みなさんの目と身体で体感して、楽しんでください」とKONOMIをアピールすると、イソ・ギンチャクが「入った瞬間から楽しかった」とアスレチック体験の感想を述べ、終始にぎやかだったセレモニーは幕を閉じた。

仕掛け人たちが語る“本セレモニーまでの道のり” 

 実はこのセレモニーをはじめ、KONOMIのプロモーションを手掛けたのは、インフルエンサー業界を牽引するUUUM。クリエイターを支えるエージェンシーというイメージが強い同社だが、コンテクスト(文脈・ストーリー)に寄り添ったプラニングで人の心情や感情を突き動かす(ドリブン)ようなコンテンツをインフルエンサーと共創し、マーケティングに活用する「コンテクスト・ドリブン・マーケティング」を主力サービスのひとつとしている。

 今回はKONOMIのオープニングセレモニーにあわせ、本プロジェクトを率いる松岡つかさ氏とモビリティリゾートもてぎを運営するホンダモビリティランド株式会社 事業企画課マネージャー・宮﨑昌道氏に、プロモーションについて話を聞いた。

ーーこれまでYouTuberを起用した動画や開業25周年記念短編映画「ふれる」など、2社によるさまざまな取り組みが行われてきました。今回のプロジェクトを行うことになった経緯を教えていただけますか?

松岡つかさ(以降、松岡):昨年5月くらいに、宮﨑さんからアスレチックができるという話をお伺いしたんです。コロナ禍を経て新しいものができることにすごくワクワクして、ご提案させてほしいという会話から始まりました。

宮﨑昌道(以降、宮﨑):アスレチックができるのは2019年以来、5年ぶりですね。

松岡:課題や過去の振り返りからどのようなことをしていくか考えたのですが、遊ばないと楽しさはわからないと思い、昨夏にはプロジェクトメンバーで遊びに来させていただいたり。今回はかなり多岐に渡ったプロジェクトになったので、毎週のようにブレストやミーティングを行っていましたね。

ーー今回のプロジェクトでは、KONOMIのどのような点を訴求したいと考えていましたか?

宮﨑:新アトラクションができるということで、集客という点で期待値はすごく高く見積もっております。ターゲットであるファミリー層に合致するような取り組みができるといいなという話はずっとしていましたね。

 過去、フィッシャーズに『森感覚アスレチック DOKIDOKI』を体験いただいた際に、「アスレチック自体がすごいぞ」と思っていただけたようなんです。そういう経緯もあって、今回は単純に新アトラクションができたということではなく、もてぎ内にあるアスレチック全体の魅力を伝えていきたいと考えていました。

ーー松岡さんはもてぎ側の要望を実現するにあたって、チャレンジしたことはありますか?

松岡:今回はたくさんチャレンジしたような気がしています。まず、テレビCMや我々が担っているYouTubeやインフルエンサー施策も含め、集客にどれだけ寄与できたかというのがプロモーションにおける大事なところだと思っています。過去のプロジェクトを振り返った時に、その点については課題があったので、課題を一つずつ網羅していきました。

 キャスティングに関しては課題に合わせた起用ができたと思っていて、WEB CMはよりリアルな子供たちの表情をお届けできるように、子役のオーディションを行いキャスティングを行いました。イベントも挑戦で、オープニングセレモニーをご提案させていただき、今日こういった形で迎えられました。パブリックリレーションズにおいても課題があったので、一緒にテレビの誘致も進めているといった感じです。

ーーキャスティングにWebCM、メディアへの露出など、さまざまな課題に向き合ったプロジェクトだったんですね。キャスティングの話が出ましたが、オープニングセレモニーにフィッシャーズさんとちょんまげ小僧さんを起用した理由を教えていただけますか?

松岡:目新しさとアスレチックとの親和性をすごく大事にしました。フィッシャーズさんは過去にも起用しているので、新たなご提案ということでちょんまげ小僧をキャスティングし、アスレチックとの親和性が高いフィッシャーズさんとのコラボをご提案させていただきました

宮﨑:フィッシャーズさんは何度も来ていただいているので、僕らも彼らとアスレチックの親和性が高いことはわかっていました。2回目、3回目になるのはどうかなと思いながらも、影響力があるクリエイターとしてはやっぱりフィッシャーズさんがいいと。ただ、そこにちょんまげ小僧さんを組み合わせてきたのは、想像を超えてきましたね。いま波に乗っているし、これまでイベントにほぼ参加したことがないということで、僕らとしても新しいことにチャレンジできる。ここからの広がりにとても期待しています。

ーー2組が登壇した今日のオープニングセレモニーはいかがでしたか?

宮﨑:とりあえず終わってホッとしていますが、ワクワクもしています。僕らとしてはここからですからね。UUUMさんに作ってもらった動画がどんなに再生回数が伸びたとしても、「動画を見て来たよ」と言ってもらえて成功となるので。

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 以前、フィッシャーズアスレチックを体験してもらった後にお客さんが増えたことがあって、UUUMさんとの取り組みはそれがスタートなんです。その年のゴールデンウィークは過去にないぐらい大行列ができて、スタッフが並んでいるお客さんに「フィッシャーズの動画見た人」と質問したら、ほぼ全員が手を挙げて。これはもう、YouTubeの効果は間違いないということで、それから色んなクリエイターの方々に来ていただくようになったんです。ここに来てくださっているクリエイターの方々は、お願いしてもすぐに来られるような人たちではないので、その辺の交渉はすごく大変だったと思います。

ーーキャスティングに関して深掘りさせていただきたいのですが、松岡さんはクリエイターを起用する際にどういったところを見ているのでしょうか。

松岡:親和性とクライアントが持っている課題を解決できるか、集客に寄与できるかという部分をみています。まずはクライアントについて知ってもらい、検討してもらうというフェーズがしっかりとイメージできるような組み合わせというところは、気をつけていますね。ただ、トップクリエイターになると、彼らのチャンネルで動画を投稿するハードルがすごく高く、彼らのやりたいこととクライアントのやりたいことを混ぜ合わせることが難しいんですね。案件のご相談をさせていただいて「難しいです」となると、何回もアプローチ方法を提案するのですが、過去には企画がまったく刺さらなくて、数えきれないほど案を出したこともありました(笑)。

ーークリエイターのみなさんのストイックさが感じられますが、その分、アイデア出しなど相当な準備が必要なんですね。

松岡:もてぎのみなさんは私もすごく勉強になるぐらいアイデアをたくさん持っているんです。「こういうことをやったら面白いんじゃないか」というみなさんの一言が、私の発想にはなかったものが多く、一緒にブレストして、キャスティングをしてきました。

ーーブレストを一緒にされてきたとのことで、宮崎さんは今回の取り組みに対してどのような感想をお持ちですか?

宮﨑:本当に無理難題を散々突きつけてきた気がしています。悩みを相談すると、YouTuberを呼ぶだけではなく、「イベントできます」「動画もCMも流せます」と返答がくるので、かなり背負ってもらっちゃったなと。CMも一緒に作りましたが、YouTubeのプロだけに、YouTubeにおいてのCMは「こうした方がいいんじゃないか」といった視点もあって、いままで我々が作っていたのとはまた違うテイストに仕上がるんじゃないかなと楽しみにしています。

ーー打ち出し方が多くなり、今後ますますプロモーションが変化していきそうですね。これまでのUUUMと一緒にプロジェクトをやってきたなかで、再発見した自社の魅力などはありますか?

宮﨑:『巨大ネットの森 SUMIKA』のオープンと『オフロードアドベンチャー DEKOBOKO』のリニューアル時にプロモーションを行いましたが、我々としては、そのアトラクションにうまく強みをだせるか悩んでいました。でもクリエイターのみなさんが体験すると、面白そうに見えてくる。クリエイターの視点一つで、ポテンシャルの高さを感じることはありますね。

ーークリエイターならではの視点が、アトラクションの魅力を引き出しているというのは興味深いです。UUUMとのプロジェクトは、社内にもいい影響を与えていそうですね。

宮﨑:松岡さんをはじめ、チームのみなさんがすごく熱意を持っているんです。弊社のメンバーもそれに負けじとスタッフ同士が切磋琢磨していて、どんどん成長しています。松岡さんは「できません」みたいなことを絶対に言わないので、それはそれで困りますが(笑)。熱意が伝わってくるからこそ、単なるクライアント、制作をお願いしたプロダクションという関係ではないと思っています。

松岡:嬉しいです。心に響きました。

ーーとても素敵な関係性ですね。今回のプロジェクトも含め、松岡さんから見たUUUMのマーケティングにおける強みとは?

松岡:プロジェクトに関わるメンバーがご要望に対し、「できません」ではなく、「どうしたら実現できるか」というのを組織としてできているのが弊社の強みだと思っています。YouTuberは毎日のように増えていますし、流行も1週間で変わるので、キャスティングだけの提案になると、他社よりも劣ってしまいます。クライアントがどういうものを求めていて、私たちにどんなことができるのか、そこを諦めないのが弊社の強いところですね。

ーーまだセレモニーが終わったばかりですが、今後の展望を教えていただけますか。

宮﨑:世の中はつねにすごいスピードで変化していて、その時々にマッチしたプロモーションの仕方を探すというのはずっとこの先も続いていくんだろうなと。今年は新アトラクションができましたけど、そういうのがないときになにを武器にどうやっていくのかというのは、「どうしましょうね」と話しながら、また一緒にやっていくんだと思います。

松岡:まずはKONOMIの大成功を願いつつも、次になにをやるのかは常に会話しながら、一緒に取り組んでいきたいと思います。