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小ぶりなボディに、強力な5気筒エンジン

比較的小ぶりなボディに、大きく強力なエンジン。数年前まではもう少し選択肢が残されていたが、現在の英国では、これが最後の一択になった。アウディRS3は、稀代のドライバーズカーだといえる。

【画像】狂気じみた?「280km/h以上のA3」 アウディRS3 競合する剛腕ホットハッチと比較 全101枚

ボンネットに収まるEA855型ユニットは、既に生産が終了した、アウディTT RSなどの動力源にもなってきた。多数の賞も獲得している。しかし、CO2の排出量を理由に、この世から姿を消そうとしている。

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アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)

ボディに比べて、必要以上に大きなエンジン。2.5L直列5気筒という、エキゾチックな設計も好ましい。メルセデスAMG A 45も同じくらい速いが、エンジンは4気筒。トヨタGRヤリスは3気筒だ。もっともこれは、ひと回り小さく、より楽しいが。

現在の英国では、RS3はサルーンかハッチバックを選べる。最高出力は399psで、最大トルクは50.9kg-mもある。リミッターが解除されるオプションを選べば、最高速度は289km/hまで上昇する。

アウディA3の可能性を拡張したアウディ・スポーツは、小さくない努力を投じた。リアアクスルには、電子制御のトルクベクタリング・ディファレンシャルを与え、ドリフト・モード付きのドライブモードも実装された。

サスペンションも専用で、車高はS3より10mm低い。フォルクスワーゲン・グループの他のモデルには与えられない、特別なダンパーも組まれる。タイヤは従来以上にワイドで、ホイールは19インチを履く。

フロントのトレッドは、33mm拡大。ネガティブキャンバーを強め、旋回時のグリップ力も引き上げている。

概ね通常のA3と変わりないインテリア

現代モデルらしく、トランスミッションは7速デュアルクラッチ・オートマティックのみ。マニュアルは選べない。オプションで、アクティブ・エグゾーストと、アダプティダンパーがセットのカーボンセラミック・ブレーキを追加できる。

先述のトルクベクタリング・デフは、15万ポンド(約2835万円)級の高性能モデルへ与えられるような先進技術。フォルクスワーゲン・ゴルフ Rと同じハードだが、リアへ最大100%のトルクを伝えられる、専用チューニングを得ている。

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インテリアは、概ね通常のA3と変わりない。英国価格は5万8650ポンド(約1108万円)からだが、シャシーにお金が注ぎ込まれ、豪奢というわけではない。それでも、価格に見合う水準にはある。

レザーとダイナミカ生地のバケットシートは標準。試乗車の場合、ステアリングホイールの頂上にセンターマーカーが入り、カラーステッチといい感じのコーディネートで仕立てられていた。

12.3インチのタッチモニターは、A3と同じもの。実際に押せるハードボタンが、エアコンの操作パネルやドライブモード用に並んでいる。一方、荷室は100L小さい。

ハッチバックと比べて、サルーンは全長が153mm長く、全高が24mm低い。リアシート側の頭上空間が狭く、身長が180cmを超えるような大人は、窮屈に感じるだろう。ホイールベースは同じだから、前後方向のゆとりに変わりはない。

荷室容量は321L。トノカバー下の容量はハッチバックより大きく、リアシートを折りたたまずに使う場合は、実用性で勝る。

動力性能は驚異的 一般道でダイナミックさを堪能

A3の小さなボディに約400馬力だから、動力性能は驚異的。不自然に加飾されていない、5気筒エンジンの咆哮を放ちながら、0-100km/h加速を3.8秒でこなす。

ターボラグが存在し、中間加速は若干マイルド。しかしターボブーストが高まれば、激しいダッシュが始まる。僅かなタメがあるおかげで、実際以上に速く感じられる。この特徴的なエンジンが、RS3の運転体験の中心にある。

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7速ATは、ハード任せでは、稀に変速を躊躇する。幹線道路への合流で鋭く加速しようと思っても、ヤキモキする瞬間はあるかもしれない。

姿勢制御はタイトだが、乗り心地が落ち着かないわけではない。四輪駆動システムは、不自然さを強く感じさせることなく、操縦性を巧みに引き上げている。

オプションのアダプティブ・スポーツサスは、市街地で快適な乗り心地を披露。穏やかなドライブモード時はステアリングホイールも軽く、切り始めからリニアに反応し扱いやすい。激しい性格を宿しつつ、アウディらしい上品さも忘れていない。

先代から大きく進化したのが、一般道でのダイナミックさ。長く続く高速コーナーでのバランスは向上し、スポーティなドライブモード時は、手のひらへ明瞭なフィーリングが伝わる。

知的なドライブトレイントルクを随時変化させ、姿勢を制御。タイトコーナーでは、リアタイヤを踊らせるまでに、相当にフロントタイヤの負荷を高める必要はある。自然な旋回性を堪能することは、難しいかもしれない。

歴代のRS3で最も熟成された内容

だがそれが、高度なトルクベクタリング機能を備えた、四輪駆動ホットハッチらしいマナーでもある。従来以上に身のこなしはシャープで、フロントのグリップが目覚ましいことは間違いない。

現行のRS3が発表された時、サーキットで「RSトルクリア・モード」、通称ドリフト・モードを試す機会があった。きっかけを与え、必要なカウンターステアを当て続ければ、一定の半径で痛快なドリフトを延々楽しんでいられる。

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アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)

燃費は、カタログ値で11.1km/L。複数の条件を走らせた今回の平均は、10.0km/Lへ届かなかった。高速道路を淡々と走れば、10.5km/Lは超えられるだろう。

現行型は、アウディがこれまでリリースした歴代のRS3で、最も熟成された内容にある。しかし価格も相応に上昇し、望ましいオプションを盛り込むと、手を伸ばしにくい値段になってしまう。

5気筒エンジンを積まないが、フォルクスワーゲン・ゴルフ Rは同等に速くよりお手頃。メルセデスAMG A 45も4気筒だが、車内の雰囲気はよりゴージャス。6万5000ポンド(約1229万円)を費やす前に、よく比較する価値はあるだろう。

一方で、280km/h以上で走れるA3という狂気じみたアイデアに、強く惹かれる気持ちも理解できる。過去にないほど、活き活きとした体験を謳歌できる。RS3が欲しいと思ったら、他のモデルは視界に入らなくなりそうだ。

◯:個性豊かな5気筒エンジン 日常的な乗りやすさ 比較的控えめなルックス
△:ホットハッチとしては高額 数字ほど速くは感じられないかも 通常のA3と大きく違わないインテリア

アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)のスペック

英国価格:6万5705ポンド(約1242万円/試乗車)
全長:4389mm
全幅:1851mm
全高:1412mm
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:11.4-12.0km/L
CO2排出量:190-201g/km
車両重量:1570kg
パワートレイン:直列5気筒2480cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:399ps/5600-7000rpm
最大トルク:50.9kg-m/2250-5600rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック


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