tetoからthe dadadadysにトランスフォームして新たなスタートを切ってから2年、そしてギタリスト儀間陽柄が加入し5人体制になってから1年。the dadadadysは今とてもいい状態にある。その状態のよさはバンド結成日である1月26日にリリースされた配信EP『(茜)』を聴いてもはっきりわかるだろう。紆余曲折を経て今、小池貞利(Vo/Gt)はこれまでのキャリアの中でもいちばんのびのびとバンドをやっているように見える。その自由度はきっと5月から始まるツアーでも全国に伝わっていくはずだ。「嵐坊」――スタローンの『ランボー』から取ったツアータイトル自体、最高以外の何ものでもない。

そんなthe dadadadysの今を語り合うために、小池と親交の深い、盟友といっていい2組のバンド――Helsinki Lambda ClubとTENDOUJIから、橋本薫(Vo/Gt)とモリタナオヒコ(Vo/Gt)を迎えての鼎談がセットされた……のだが、当日小池がまさかの大遅刻。そのせいで急遽二部構成になった顛末を記録したのが以下のテキストである。主役が終盤まで登場しないという異様なインタビュー記事になっているが、これはこれで面白いというか、むしろthe dadadadys、そして小池という人のことがよくわかるものになったんじゃないかと思う。たぶん、知らずに読んだ人は「なんなんだこいつ」と思うだろうが、そういう人にはぜひ、ライブハウスでその正体に出会ってほしい。

――一応、今日はthe dadadadys・サダ(小池)くんを囲む会なんですが、なんと本人が日にちを間違えていて、まだ到着していません(笑)。

モリタ なんかそんな気はしてました。

――なので、サダくんが来るまでちょっとおふたりにお話を伺えればと思うんですけど。今、ヘルシンキとTENDOUJIはどんな調子ですか?

モリタ TENDOUJIは10周年で、企画をやったり、リリースもあったり、ツアーも始まるっていう。バタバタしている感じです。

――ヘルシンキは10周年を経て――。

橋本 経て、でもまだ10周年を引きずりつつ、いろいろ計画してます。つい一昨日までSXSWでアメリカ行ってたんですけど、5月にはイギリスにも行ったりとか、結構今年は海外も多いかなって感じで。ワールドワイドにやっていこうと思ってます。

――どちらもバンドのキャリアとしてはほぼ同じなんですよね。

橋本 めちゃめちゃ同期ですね。

――それはthe dadadadysというかtetoも含めて?

モリタ tetoのほうがちょっと後ろ(後輩)だよね。

橋本 TENDOUJIとは本当に、最初の出会いが――。

モリタ サダちゃんがいないからかえって話が盛り上がると思うんですけど、俺らはバンド始めるのが超遅くて、始めて2カ月ぐらいでオーディションライブに出たんですよ。「上位3位以内に入ればデビューできる」っていう、超胡散臭いやつ。

橋本 この話するたび、毎回ディスるんです。

モリタ 薫くんには何回もしてるからね。で、そこにヘルシンキも出てて。ヘルシンキは結成して1年くらいだったんだよね? めっちゃ上手かったし、すげえよくて、「この人たちとは友達になっとかなきゃいけない」みたいな。たまたまその時、サポートドラムを入れてたんですけど、そいつが知り合いだったので繋げてくれて喋って。で、結果発表のときになったんですけど、俺はヘルシンキが1位だと思ってたんです。でも3位だったんですよ。それで2位が全然クソみたいなバンドで、1位……自分たちはありえないんですけど、うちのメンバーはもう最前列で待ち構えていて(笑)。

橋本 あの光景、いまだに覚えてるわ。

モリタ 結局クソバンドが1位だったんですけど、それで最後慰め合うじゃないけど、「TENDOUJIがいちばんよかったよ」みたいなことを薫くんが言ってくれて。それからちょこちょこライブハウスとかで会うようになって。で、その後はヘルシンキはUKプロジェクトに入って。

――サダくんとはUKに入ってから出会ったんですか?

橋本 そうですね。UK入って2、3年してからtetoが来たのかな。

――当時のサダくんとかtetoってバンドに対してはどういう印象でした?

橋本 どこまで遡ろうかな。最初、TENDOUJIの元マネージャーから音源を送ってもらったんですよ。それを聴いたときに衝撃を受けましたね。それこそTENDOUJIを聴いたときみたいな感覚で、「これたぶん俺好きなやつだな」とか「なんか気が合いそうだな」みたいな感覚があって、ライブもすぐに観に行って。ライブも覚えてますね。サダちゃんがまだ固まってなかった。

――そうなんですね。

橋本 その時はギターの山崎(陸/tetoの元メンバー)とかがMCでガンガン喋ってて。

モリタ そうなんだ。

橋本 なんかすごいいびつな感じだったんですけど、それもその時は新鮮に、面白く映りましたね。激しさはその時からありましたけど。

――モリタさんはどうですか?

モリタ 俺は一時期めちゃくちゃサダちゃんとケンカとかもしてたんですけど……最初に俺らのイベントとか出てくれた時にはもういろんな人が観に来てて、勢い半端じゃないなみたいな感じでした。これはあいつがいないから言えますけど、いちばんやりたくないバンドでした。脅威というか、「こいつらとやるの、なんか嫌だな」って思ってた。毎週のように飲んでて、いろんな話をしたんですけど、最後はだいたいケンカっていうか、「お前はクソだ」みたいなことをお互いに言い合うみたいな感じでした。いちばん意識してたかもしれないですね。たぶんあいつは口が裂けてもそうは言わないかもしれないけど、俺にとってはスペシャルなバンドではありますね。

――それはなんでケンカになるんですか?

モリタ なんか言い合いになっちゃうんですよね。最近はそこまでではなくなりましたけど、最初は「なんで俺ら飲んでんだろう?」ってぐらいケンカしてた。なんかもうね、お互い負けたくないんですよ、とにかく。もう屁理屈の重ね合いみたいな。でも、それもちょっと的を射ているみたいなところもあって。

橋本 お互いちょっと本質突いちゃうんだ。

モリタ だからたぶん、TENDOUJIがtetoを誘って東京キネマ倶楽部でやったりしたんですけど、出番前とかあんまり喋らなかった気がする。

橋本 バチバチだね。

モリタ バチバチっていうか、絶対なんかカマそうと思ってるんだろうなって。そこまで思ってるかわかんないですけど、「こんなイベントめちゃくちゃにしたろ」ぐらい思ってたんだと思う。それはお互いにそうで、俺がtetoのイベントに出たらそうだったと思うし。あいつ、キネマ倶楽部の2階からダイブしてましたからね。マジで無茶苦茶してんじゃねえか、みたいな。でも俺の中ではそういうやつがひとりしかいなかったんですよ。自分と同じマインドっていうか。それは俺と薫くんの共通しているところとはまた違うっていうか。パンクっていうか、品がないですね。本当に品がない(笑)。

――確かにこの3人って、それぞれふたりずつは通じ合うところがあるんだろうなってわかるんですけど、3人集まると合ってるのか合ってないのかよくわからないみたいなバランスですよね。

モリタ 薫くんとサダちゃんもすごく合うんですよ。でもそれは俺とはまた違う合い方なんだと思う。

橋本 俺は逆に1回もケンカとかしたことないし。

モリタ でもあれだよね、ギターロックみたいなのがやっぱりみんな共通して好きなんだと思うんですよね。ガレージロックとか。俺らの世代ってちょうどリバティーンズとかストロークスとかが爆流行りしてて、それは抜けない。時代が変わって、シーンもめっちゃ変わるけど、あるよね、どこかに。

橋本 そういう根っこの近さはあるってことなんですかね。

――でも、それこそそういう2000年代のロックを吸収してアウトプットしていくというときに、3バンドとも周りの同世代のバンドたちとはまったく違う出し方をしているじゃないですか。そのへんはどう見てるんですか?

モリタ いやー、マジでみんなすげーなって思いますよ。「そうだな」って思うんですけど……あれですよね、同世代のシーンとかってことですよね?

――そう、シーンっていうのがなんとなくあるじゃないですか。

モリタ ありますね。

――でもTENDOUJIもヘルシンキもthe dadadadysも、そこにいないと思うんですよ。

橋本 そうですね。

モリタ いないっすねえ。

――そこが似てるんですよ。バンドとしてのあり方が面白いなって。

橋本 あと、ちょうど僕らが出てきた2013年、2014年あたりって、ちょうどインディーのシーンが入れ替わってきてるというか、シーンがない状態だった気がするんですよね。2010年前後まではandymoriとかそこら辺の世代とかシーンがあって、そこから空いて2014〜15年らへんからシティポップとかの流れが来る。その狭間だったんで、あんまり混ざり合わなかった感じはもしかしたらあるかもしれないですね。みんな何していいかわかんないっていう(笑)。

――「何していいかわかんない」って中で、みなさんはどうやって自分たちのスタイルを掴んでいったんですか?

橋本 マジで、右も左もわかんない状態で、ただただやってたって感じ。

――TENDOUJIは最初からレーベルを作ったりして、外のあれこれに左右されない形を自分たちで作っていた感じもしますけど。

モリタ でもそれも、とりあえず誰かが言ったことを面白がるというか、「やってみようよ」って言われたら「いいね、よくわかんないしやってみよう」みたいな感じだったんです。「このバンドいいよ」って言ったら「いいね」みたいな。それで一緒にやって友達になって、それこそ対バンするってなったら、ライバルだからバチバチみたいなのがやっぱりあったんですよ、他のバンドを見てると。でも俺らだけは全力で、もう心の底から盛り上げてたんですよ。最前列で「うわー!」みたいな。たぶんLucky Kilimanjaroでダイブしたの俺らぐらいだと思う(笑)。

橋本 はははははは!

モリタ でもそういうのの皺寄せもあって……すみませんね、話が長くなって(笑)。ノリでマネージャーみたいなやつを入れたら、そいつが金パクっていなくなったりして。そのぐらいの時期からだんだん変わっていった。そういう時期にtetoとも出会ったんですよ。その当時のサダちゃんはガチで「は?」みたいな。「なんで他のバンド褒めなきゃいけないんですか?」ぐらいの感じだったから「おお」と思って。そういうマインドって、確かに自分にはなかったから面白いなと思ったんですよね。

橋本 でもライブを初めて観た時のサダちゃんは、その軌道に乗り出した頃のサダちゃんとはちょっと違った気がします。なんか、もうちょっと柔らかさがあった。柔らかさというか、ちょっとナードっぽさがあったんです。でも「Pain Pain Pain」とかがバズり出したあたりで、たぶん彼の中でも――勝手に分析してるんですけど(笑)。

モリタ 本人いないから(笑)。

橋本 そこでちょっと確信を得た部分があったんじゃないかなと思います。自分のやり方を見つけた感じがありました。だからUKプロジェクトに入ってきた頃には「あ、こんなにクレバーなタイプなんだ」っていう印象を持ってました。僕は本当に頭悪いというか、空白の時に出てきたバンドだったし、CDもちょうど売れなくなってきて、でもまだサブスクとかも出てない時期で、「どうやって売れてったらいいんだ?」とか、いろんな迷いがある中でずっとやってた感じですけど、サダちゃんはなんか見えてる感じがちょっとして。そういうのはやっぱり脅威でしたね。

――the dadadadysがスタートして2年、現在の5人体制になって1年ぐらいですけど、今のサダくんというのはどんな感じですか?

橋本 なんか、この言い方が正しいのかはわからないですけど、ひとつ憑き物が取れたっていう感じがします。

モリタ ははははは!

橋本 ちょっと肩の荷が降りたんじゃないかなと思いつつ、でも新たな迷いももしかしたら出てきてるのかもしれないですけど、バンドをやるっていう意味では健全なマインドに映りますけどね。最近のサダちゃんを見てると。

モリタ でも、難しいですよね。バンドを解散っていうか、名前変えたりするのって俺は経験がなくて。信じられないくらいショックだと思うんですよ。だからその心境の変化って、わかるようで全然わからないというか、俺が考えてるよりもっともっとショックだし、考えただろうし。だからあんまり気安く言えないなとは思っちゃうんですよね。めちゃくちゃ天邪鬼なやつだから、俺たちに本心は言わないだろうなと思うし、たぶんインタビューでも言わないと思いますけど。

――うん、言わないでしょうね。

モリタ でもたぶん唯一思っていることは、「もう解散したくない」じゃないですか? バンドって一瞬の輝きだと思うけど、解散するまでには単純に人とケンカしたり、罵詈雑言言われるみたいな局面もすごくあったと思うから。自分だったらメンタルが耐えられるかわからない。絶対に前にやってたバンドと比べられるし。でもすごい才能の持ち主だと思っているから、ただただ続けてほしいというか、たぶんもっとすげえものを作ろうというのは思っているんだろうなと思います。

――1月に新宿LOFTのイベントでも一緒にやりましたし、去年のthe dadadadysのツアーでも対バンしてますけど、最近の彼らのライブはどうですか?

モリタ なんか、この前観たときに「戻ってきた」じゃないですけど、馴染んできたんじゃないかなとは思いました。他のメンバーが、サダちゃんに対して。たぶん難しいから、あいつについていくのって。

橋本 いい意味で、最初にサダちゃんに感じたクレバーさみたいなものを捨てたというか、そういう部分がちょっと薄れたというか。ちょっとアホっぽさを出してくれて、そこがもしかしたらサダちゃんの本質だったのか……こういう分析的な言い方しちゃうと嫌ですね。本人がいないからこういう言い方になっちゃうんですけど(笑)。サダちゃんってもしかしたらこういう人だったのかもなみたいな面が、最近のライブでは見える感じになりましたね。

――今回のEPもそうだし、去年配信リリースした「光るまち」(tetoの楽曲をthe dadadadysで再録)とかもそうですけど、まさに遊び始めたっていうか、シリアスなりすぎない状態で音を鳴らしてる感じがしますよね。

橋本 最初、the dadadadysになってすぐのときは音を聴いてもわからなかったんですけど、ライブを観たり、音源を追ったりする中で「サダちゃんは今こういうことをやりたいんだ」とか、徐々に見えるようになってきました。

――tetoからthe dadadadysへの移り替わりの時期に彼と話はしてましたか?

橋本 そこら辺の時期って、そんなに会ってなかったような気もするんですよね。どう、会ってた? あ、ケンカしてたか。

モリタ 僕はバチバチに絶縁してました。

橋本 わりと長い間そんな感じだったよね。

モリタ めっちゃ長かったです。本当にケンカして、まあ、それでも仲良かったんで……。

――「それでも仲良かった」ってどういう意味?

モリタ 心は、っていう(笑)。だから、解散するっていうのも他のメンバーから聞いて。で、SNS見た時に「マジか」っていう。でもすごい異様な空気感だったな。別にバンドのことだから、他人がとやかく言うのは無理なんですけど、コロナ終わってからでよくない?とは思った。超異常な時期だから、絶対みんなすり減るしって。俺はずっとそう思ってたんですよ。バンドがつらい時期もあったけど、もうちょい待ってもいいんじゃない?みたいな。あと、本当に最後ツーマンしたかったです。それだけはマジでお願いしようかと思ったけど、無理だと思ってたんで。

――なるほど。ちなみに今連絡が来まして、もうすぐサダくん来るそうです(笑)。

モリタ サダちゃんいなくてよかった。サダちゃんの前でこの話はできない。

橋本 後で怒られるかもね(笑)。

(ついに小池到着)

小池 すみません、遅くなりました!

――ふたりにはもうたっぷり話してもらいました(笑)。

小池 信頼しているおふたりを招いて、お話ができるということで。あまり外にも出ず、メンバー以外の人とも滅多に会わないので、マネージャーから企画を聞いて、とても楽しみにしていた、んですが……ちょっとメールを見ておらず。

モリタ ひどいよ! でもいない時にたくさん喋れたんでよかったです。

――サダくんにとってふたりはどういう存在なんですか?

小池 なんか手放しで尊敬できる感じはあります。唯一。ナオさんは年上だしね。俺の話してもいいですか? 今の俺の年代ぐらいって、ちょっとメタ世代というか、物事を俯瞰して見るクセがあると思うんですよ。

橋本 うん、そう。

小池 だからナオさんくらいまでいくと、もしかしたらそういう観点もあるかもしれないけど、もっと突っ切れるタイプだと思うんです。でも俺とか薫はちょっと恥ずかしがり屋で、「これやってる俺ってどうなんだ」みたいな、常に第三者の自分がいるから、たとえば結構前だと明るいスカパンクとかメロコアが流行った時期もあったけど、そういうネアカみたいな感じにもなれないし、かといって、足元ばっかり見るシューゲイザーみたいな、ザーザーノイズ鳴らすみたいな、そこまでネクラでもないし、って言う。どっちにも振り切れないから、薫とはそう言う部分で近い距離でいられる。

橋本 確かにそれは腑に落ちましたね。そういう世代っちゃそういう世代かもしれない。

小池 で、ナオさんはどっちかというと、そういう面もありつつも強き者の方としているっていう。年齢もあるし、そこに引っ張られるところもある。人間的にはそういうところで尊敬できるし、音楽的には語ればいろいろある。

――ライバル心みたいなのもある?

小池 ないかな。どうだろう。

橋本 (モリタは)ライバルだって言ってたよ。

モリタ まあでも、どうだろう……(笑)。

橋本 いざ本人が来ると(笑)。

小池 まあ、バンドの友達を増やしたいわけじゃないから。群れたいわけじゃないし、嫌なんですよ、俺、なんか身内で手繋いで楽しむみたいな。地元の時はそういうのもあったけど、そういうのが嫌だし、ちゃんと好きな人としか喋りたくない。だからそういう意味ではライバルではないけど、振り切って仲良くなりたいっていうか……居心地がいいっていう表現がいちばんいいのかな。俺は友達だとは思ってますけど、一緒に腕組んで踊るみたいな友達ではないっていう。

橋本 そこの感覚は近いかもしれないですね。

――そんな感じでヘルシンキもTENDOUJIも10年やってきて。サダくんもtetoから数えたら再来年くらいで10年ですよね。

小池 でも1回終わってますからね。

モリタ 今2年生くらいでしょ?

小池 まだまだまだひよっこです。楽しくやってますけどね。いろんなバンドがどうしても視界に入るじゃないですか。なんか、視界に入るバンドにもっとドキドキしたいなって。やっぱり刺激がほしいんですよね。

――10年やってきた中でヘルシンキやTENDOUJIは変わったと思いますか?

小池 変わりました? 年齢くらいじゃないですか。年齢で得られるものが変わるくらい。

――サダくん自身の変化はどうですか? バンドも変わり、曲も変わったと思いますけど。

小池 うん、経年変化。最高だなあと思ってます。「今がやっぱり最高だなあ、もっとこれが早くできてたらな」って思うけど、それはもう歳とか経験もあるからしょうがないんだろうなって。

橋本 うん。30を超えてから――。

小池 自意識が下がるとか。

橋本 自意識は明らかに下がってるし、やっぱり視野が広がる。いろんなもののバックグラウンドとかに今までより深く思いを馳せることが増えたんで。だから最終的に外側の部分が柔らかくなっていってるなあと自分では思いますね。

小池 俺は逆にどんどん強くなっていく。許せるものが増えるかなと思ってたんですけど。

――そうはならない?

小池 許そうとは思ってますけど、自分も含めて。

橋本 許すものが増えるというか、関心持つものはちょっと減ったかもしれない。

――ああ、定まってきますよね。自分が好きなものとか心が震えるものっていうのが。

橋本 逆に音楽以外の部分で、わりと広がりがいろいろ出てきたなって感じはしますね。10代とか20代の頃は「俺は音楽しかない」ぐらいの気持ちでいたんですけど、今は、音楽はやるんですけど、日常のいろんなものがより多面的に結びつくような感覚が出てきました。

――どっちもありますよね。広がっていろいろなものと結びついていく面と、どんどん頑固になっていくという面と。

小池 やだ、頑固親父じゃん。気をつけよう。

モリタ 俺、歳とって怖がられたら絶対ダメだと思ってる。かわいいオヤジになっていきたい。

――モリタくんはかわいいオヤジになっていきそうな感じもしますよ。

モリタ そうなれたらよいですけど、孤独じゃないと信じてます。たまには外に出てね、ちゃんと。

――孤独を感じることはあります?

小池 わかんないですけど、「俺はわかってるのに、なんでお前は俺をわからないんだ」っていうときはあります。

モリタ めちゃくちゃじゃないですか。めちゃくちゃ亭主関白じゃん。

小池 あなたは今こう思ってるって言語化して言えるよ?って。

モリタ うわ、言いそう!

小池 たとえば薫とご飯行ってる時とか、今の薫の口からこういう言葉を聞けるということは、今の薫のモードはたぶんこういう感じで、このモードってなったら結局ルートは決まってるから、今ここら辺にいるんだろうな、とか。「こういうことだよね、そうでしょ?」って言いたくなっちゃう。「わかるよ」って。

橋本 いつもめっちゃわかってくれるんですよ。

小池 まあ歳が近いのもあると思います、薫に対しては。

モリタ いや、俺に対しても同じじゃん。常に先回りしてる感じ。「わかる、わかる」って。でも確かにわかってんじゃないのかなと思う。

小池 でもそれはなんか、表現としての、音楽とかアティチュードとしての共感なんです。私生活はまた別。基本的に音楽の話しかしないので。音楽とかバンドの話しかしない。それしか興味がないもん、だって。別にナオさんが友達とこの間サッカーしたよって話を聞いても――。

モリタ そこは全然先回りしないですよ。だからバンドやめたらたぶん会わないよね。わかんないけど。何話したらいいかわからない。

――仮にこの3人が同じクラスにいたとして、友達にならないですかね?

モリタ いや、なるんじゃないかな。

小池 ナオさんとか、同じクラスの方がよかった感ない?

モリタ でも薫くんは大変そうかも。昼飯一緒に食ってくれなさそう。

橋本 ああ、俺も心許すと振り回しちゃう部分あるかもしれない。だいぶなくなったと思うけどね。

――一緒にバンド組んだりしてましたかね?

モリタ 間違いなく組んでたと思う。

小池 じゃあバンド組みましょうよ。

橋本 絶対ケンカするでしょ。

――一緒にバンドを組むのもいいけど、また対バンやってほしいですね。この3組だけでスリーマンやったことはないんですよね。

モリタ スリーマンはない。しましょうよ。

小池 じゃあ、します。決めました。

――どこでやりましょうかね。

小池 どこでもいいんですよ。ドブの田んぼとかでもいいんですよ。

モリタ ドブの田んぼ……? まあ、本来はそういうのでいいんだよね、確かにな。

――返しが適当になってませんか(笑)。

モリタ あ、バレました?

小池 高校の部室とかでもいいんですよ。観てくれる人がいたらラッキー。

モリタ そうだよな。わかる!

橋本 もう諦めた(笑)。

小池 でもスリーマンは観ていただきたい。

――なんか不思議な鼎談になりましたけど。サダくんが来る前と来てからでまったく空気が違う。

小池 いいんです。スリーマンをやると決まっただけで。

モリタ スリーマンやって、ちゃんと打ち上げやって――。

――ケンカして帰る、と。わかりました(笑)。

小池 ありがとうございました!

Text:小川智宏 Photo:小杉歩

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<ツアー情報>
the dadadadys TOUR 2024 嵐坊

5月10日(金) 千葉・千葉LOOK
※単独公演

5月19日(日) 東京・吉祥寺WARP
ゲスト:トリプルファイヤー

5月25日(土) 神奈川横須賀かぼちゃ
ゲスト:でぶコーネリアスEX

6月9日(日) 栃木・宇都宮HELLO DOLLY
ゲスト:アダム / トップシークレットマン(O.A)

6月20日(木) 愛知・名古屋HUCK FINN
※対バンあり

6月21日(金) 大阪・246 LIVEHOUSE GABU
※対バンあり

7月7日(日) 東京・キネマ倶楽部
※単独公演

チケット料金:4,000円
※学割あり
※入場時ドリンク代が必要
https://w.pia.jp/s/dadadadys24ofga/

関連リンク

the dadadadys 公式サイト:
https://dadadadys.com/

Helsinki Lamada Club 公式サイト:
https://www.helsinkilambdaclub.com/

TENDOJI 公式サイト:
https://thetendouji.com/

左から)橋本薫(Helsinki Lambda Club)、小池貞利(the dadadadys)、モリタナオヒコ(TENDOUJI)