独メディアのドイチェ・ヴェレ(中国語版)は2日、「東南アジアの風向きが変わる?」と題し、シンガポールシンクタンクが行った世論調査の結果を伝えた。

シンガポールシンクタンクISEASユソフ・イシャク研究所は同日に「東南アジア態勢報告:2024」を発表。今年1~2月に東南アジア人約2000人を対象に調査を行った結果、「東南アジア諸国連合ASEAN)は米国ではなく中国と同盟を結ぶべき」との回答が50.5%に上り、2023年調査の38.9%から大幅に増えた。米国派は昨年の61.1%から49.5%に低下した。中国への好感度が米国を上回ったのは20年以来初めてだという。

報告によると、ASEAN加盟国のうち、米国を第一としたのはフィリピンシンガポールベトナムの3カ国のみ。インドネシアマレーシア、タイ、ラオスブルネイミャンマーカンボジアの7カ国は中国寄りの結果となった。特に中国の「一帯一路」構想や対中貿易から恩恵を受けているマレーシアインドネシアラオスでは中国支持が7割を超えた。

同研究所のSharon Seah研究員は「(中国に)匹敵する者が現れない限り、東南アジア地域における中国の影響力は今後数年間、伸び続けると予想される」と述べた。

調査では59.5%が「東南アジアで最も影響力がある経済大国」は中国であると回答し、米国の14.3%を大きく上回った。一方で、記事は注目すべき点として、6割以上の回答者が依然として中国の政治・経済における影響力に不安や懸念を示していることを指摘。「彼らにしてみれば、中国は重要な経済パートナーであると同時に同地域最大の安全保障上の不安でもある」と論じた。

記事は、中国支持増加の背景に米国に対する信頼が弱まっていることがあると分析。フィリピンでは米国のフィリピン防衛へのコミットメントを再確認したことで米国への支持率が昨年の78.8%から83.3%と過去最高に増加した。一方で、その他の国では米国への支持が弱まっているという。

バイデン政権は21年の誕生以来、東南アジアの国々との相互訪問を繰り返し、積極的にパートナー関係を構築してきた。ただ、シンガポール国立大学の政治学者、荘嘉穎氏は、「中東紛争における米国の強硬かつ絶対的なイスラエル支持の立場が、東南アジアの人々の米国への信頼低下につながっている」とし、「これはもはやイスラム教徒が多いというだけの問題ではなく、国連の議決を米国が阻止し、否決することは、ルールに基づく国際秩序を守るという米国への信頼を損なうものだ」と指摘した。(翻訳・編集/北田)

独メディアのドイチェ・ヴェレは2日、「東南アジアの風向きが変わる?」と題し、シンガポールのシンクタンクが行った世論調査の結果を伝えた。写真はASEANへのゲートウェイ中心都市南寧。