1970年代に巻き起こったオカルト映画ブームを牽引し、その後もシリーズ化やリメイク、テレビシリーズ化などおよそ半世紀にわたって語り継がれてきた「オーメン」。そのすべての原点へと立ち返る『オーメン:ザ・ファースト』が4月5日(金)より公開を迎える。そこで本稿では、“悪魔の子”ダミアンフォーカスしながら過去のシリーズ作を一気に振り返っていこう。

【写真を見る】32歳になったダミアンを演じるのは『ジュラシック・パーク』のサム・ニール!

■“自覚なき悪意”が不気味な、記念すべき第1作

6月6日、午前6時。ローマの産院で外交官のロバート(グレゴリー・ペック)の妻キャサリン(リー・レミック)が死産するところから始まった『オーメン』(76)。産院で出会った神父から、同じ時刻に生まれた男児を引き取ってほしいと頼まれたロバートは、妻には実子だと偽りながらその男児を迎え入れ、“ダミアン”と名付ける。そして5年後。ダミアン(ハーヴェイスペンサースティーヴンス)の誕生パーティである事件が起き、ロバートは彼が“悪魔の子”だと知ることになる。

乳母の突然の自殺に始まり、避雷針で串刺しにされる神父、暴れ狂うサルなど、ダミアンの周りでは次々と不可解なできごとが起こるのだが、当のダミアンはまだ幼く、悪意の自覚がない。この得体の知れない不気味なオーラを放つダミアンを演じたスティーヴンスは、撮影当時ダミアンと同じ5歳。そのリアルな無垢さが、“悪魔の子”の恐ろしさを引き立てている。

思春期真っただなか!13歳のダミアンが覚醒

続く『オーメン2 ダミアン』(78)では、ロバート夫妻が亡くなった後、ロバートの弟リチャード(ウィリアム・ホールデン)のもとに引き取られたダミアン(ジョナサン・スコット=テイラー)が描かれる。陸軍学校に通っていたダミアンが13歳になった頃、ダミアンの正体を知る大伯母が不可解な死を遂げたことを皮切りに、リチャードの周囲で不審死が相次ぐように。

思春期に突入したダミアンはすっかり反抗的。上官からの意地悪な質問に対して間髪入れずにスラスラと答えて相手を苛立たせてみたり、眼力だけで相手を苦しめてみたり。そんななか聖書の黙示録を読み、自分の頭皮に“666”の数字が刻まれていることを知ったダミアンは、自らが“悪魔の子”であると自覚。やがてその強大な力を覚醒させると、力加減がわからずに眼力で相手を絶命させてしまう。挙句クライマックスでは、涼しげな顔で親族をも殺めることになるのだ。

■32歳のダミアンは、テレビ出演にも前向き

『オーメン 最後の闘争』(81)は、ダミアンを描く3部作の完結編。政財界の有力者へと成長を遂げた32歳のダミアン(サム・ニール)は、大統領から駐英大使としての任務を与えられイギリスへと渡る。その頃イタリアの修道院では聖職者たちが“悪魔の子”を討とうと画策。彼らが“メギドの短剣”を手にしてダミアンの命を狙う一方、能力の弱体化を感じ取ったダミアンは、神が復活した3月24日救世主“ナザレ”が世に放たれたことを察し、部下や崇拝者たちを扇動して闘争に打って出ることに。

のちに「ジュラシック・パーク」シリーズでレジェンド俳優へと成長するニールが演じたダミアン。かつてのような内気さは影をひそめ、テレビ出演にもまんざらでもない様子で社会生活にも順応しているようにも見える。シングルマザーケイト(リサ・ハロー)と恋仲になり、彼女の息子ピーター(バーナビー・ホルム)を洗脳。終盤ではピーターが、“第2のダミアン”といわんばかりの不気味さを放っている。

■“2006年6月6日”に放たれた、第1作の進化系

ダミアン3部作の10年後には、ダミアンとは別の“悪魔の子”を描いた番外編のテレビ映画『オーメン4』(91)が制作される。それからさらに15年、“2006年6月6日”という「オーメン」に相応しい日に全世界公開されたのが、第1作の公式リメイクとなる『オーメン』(06)。物語は概ね同じだが、ショックシーンがダイナミックに進化を遂げた。

ダミアンを演じたシーマス・デイヴィー=フィッツパトリックの鋭い目つきが、旧作のダミアンの無邪気さとは一線を画すような意図的な“悪”を感じさせる。ちなみに“初代ダミアン”であるハーヴェイスペンサースティーヴンスが、今作で30年ぶりにスクリーンに復帰。タブロイド誌の記者役としてカメオ出演を果たしている。

■第1作とのリンク多数!イケメンなダミアンが描かれるテレビシリーズ

第1作の直接的な続編であり、第2作や第3作とは異なる世界線を辿っていくテレビシリーズ「オーメン」は、シリーズ誕生40周年を記念して制作された。30歳になったダミアン(ブラッドリー・ジェームズ)は、戦場カメラマンとして活動するなかで、謎の老婆との対面をきっかけに封印されていた子ども時代の記憶をよみがえらせる。やがて彼の周りで不審な死が相次ぎ、自身の運命を知ることになる。

“悪魔の子”として覚醒しなかったダミアンが、自身のルーツを知って苦悩し葛藤する姿は、ホラードラマというよりはオカルト要素の入ったヒューマンドラマ。第1作のフッテージが多数散りばめられているだけでなく、各エピソードでそれにつながる登場人物やエピソードが登場。現代的でイケメンなダミアンが登場し話題を集めたものの、惜しくも全10話で打ち切りとなってしまった。

■最新作『オーメン:ザ・ファースト』は“原点”に迫る物語

そしていよいよ公開される『オーメン:ザ・ファースト』は、劇場用作品としては18年ぶりに制作されたシリーズ最新作。ローマの産院で生まれたという“悪魔の子”ダミアンの出生の秘密がついに明らかにされる。

アメリカ人女性マーガレット(ネル・タイガー・フリー)は、新たな人生を歩むべく修道女になると決意し、ローマの教会で奉仕を始める。そこで共に暮らす問題児のカルリータ(ニコール・ソラス)にかつての自身の姿を重ねるなか、マーガレットの周囲では不可解な死が相次いで発生。さらに教会を破門されたブレナン神父(ラルフアイネソン)から、教会が恐怖で人々を支配するために“悪の化身”を誕生させようと企てていることを知らされる。

教会の恐るべき計画を明らかにしようと立ち上がるマーガレットに待ち受ける戦慄の真実とは。そして今作で我々はどんな恐怖を目撃することになるのか…。

シリーズのファンはもちろんのこと、これまでのシリーズ作を観たことがないという人もここから入っていける“原点”を、是非とも劇場で味わってほしい。

文/久保田 和馬

6月6日午前6時に生まれた“悪魔の子”ダミアン…映画、ドラマで描かれてきた邪悪な軌跡をたどる/[c]Everett Collection/AFLO