NPO青山デザインフォーラムADF)は、第二回企画展「co(u)ntinuum 」をメタバースバーチャル美術館「COCO WARP」において、2024年4月26日から6月30日(予定)まで開催いたします。本展は、数に依拠し、計算によって成立するデジタルアートの企画展です。


数に依拠し、計算によって成立するデジタルアート。

創作とは、実際のところどこまでヒトによる随意的なものなのでしょうか。

従来の物理アートにおいても、例えば宗達やポロックの作品には偶発的要素が積極的に組み込まれてきました。また、殊にジェネラティブアートなどはアルゴリズムから二次的に出力される作品です。古くは20世紀半ばのゲオルク・ネース(Georg Nees)の作品群や、さらには18世紀のモーツァルトの《音楽のサイコロ遊び》(W. A. Mozart "K. 516f: Musikalisches Würfelspiel")などもあり、半ばアーティストの手を離れた、出力が一意に定まらない表現も試みられてきました。近年の3Dデジタルレンダリングなども、そうした要素を多分に孕んだものと言えるでしょう。

これらを規定するものは構成要素と文脈です。

チューリングは1936年チューリングマシンの概念を提示し、1945年にはノイマンが現在のコンピューターの基本モデルを設計しました。またそれ以前にも、17世紀にはパスカルの歯車式計算機などがありました。

デジタルコンテンツといえども計算基盤は物理現実にあり、そうした意味では数学や形而上学も極論するとあくまでも生体脳や計算機における物理化学的現象であるとも言えます。

20世紀中頃以降、コンピューターの普及とともにデジタル技術によるアートも広がってきました。殊に近年におけるAIの急速な進歩を考えると、早晩、AI生成物に諸領域の知見まで広範に反映可能となってゆくことも予想されます。また美術批評に関してもAIの活用可能性が模索されています。今後、美術史や相場動向まで踏まえた多角的評価がAIによって可能となれば、蒐集に際してもそうした分析は影響を増してゆくでしょう。既に法人の「人権」は認められていることを考えると、経済活動一般についてもAI、AGI (所謂「強いAI」)が多くを担い、社会において主体化してゆくことも予想されます。

そうした状況において、物理現実に生きる生身のヒトのアイデンティティと、またあえてそうした存在が創作を行なうことの意味は、どのようになってゆくのでしょうか。

本展のテーマは「co(u)ntinuum」です。

「count」(計数)は離散的ですが、「continuum」は連続体です。

この展示では、現在様々なアーティストによって探求されているデジタルアートが「西暦3030年の仮想空間」という、現在の物理現実のどこにも位置しないメタバース美術館「COCO WARP」に並びます。

Vincent Schwenkは、計算によって時間軸上にも奥行きをもった彫刻、そしてその切片としての映像を生み出しています。Riniifishは、異世界の様々な幻想的生物を描き、小さな半透明の生物で埋め尽くされる並行世界や地球外文明を創り出しています。852話は、ヒトによる随意的な要素とAIによる処理を組み合わせた、複合的アプローチによる表現を見せます。Seba Moralesは、現在における離散的自動書記とも言える、シュルレアリスティックで静謐な情景を創出しています。Yu Caiは、現代的都市環境と人の関係について新たな視点を提示し、未知の領域を垣間見せる作品を制作しています。

早晩、ヒトの立ち位置は大きく変化してゆくでしょう。それでも、現在においてヒトが未来を考え、複合的な仕事をしたことは意味ある足跡となってゆくはずです。

当該第二回企画展のキュレーションを担当している私は2024年から、3030年のCOCO WARPに向けてこれらを選定し、本稿を書き残しています。その時世界はどのようになっているのでしょうか。そこで作品の前に立ち、鑑賞をしているのは何者なのでしょうか。

ゲストキュレーター 宇高健太郎 UDAKA Kentaro Ph.D.

参加アーティスト

VINCENT SCHWENK

3Dアーティスト、ディレクター、モーションデザイナー / ドイツ


Vincent Schwenkプロフィール

FH Augsburgグラフィックデザイン卒。アルバムジャケットから企業ブランディング、デジタルアート制作に至るまで多分野に渡り活動している。同作家による一連の3D動画作品は、仮想空間において計算される構造物に、ある種の不規則性を付与し演出されている。初期状態におけるそれらの構造は、計算を通して拡張展開され、時間軸上にも奥行きを持った流動的な彫刻として表現される。それらの多くには、ありふれた日常的な器物や状況に新しい視点をもたらすようなユーモアも込められている。これら一連の作品はまた、遍在する空間を変形させ、新しい文脈を備えたものに変容させる試みでもある。本展で示されるのは、デジタル技術によるそうした仮想的彫刻が、動画として変換され、そして時間軸に対して切り出された切片である。


《SHAPESHIFTVincent Schwenk, 2023

Official website: https://vincentschwenk.de/

Instagram: https://www.instagram.com/vincentschwenk/

X (Twitter): https://twitter.com/vincentschwenk

SuperRare: https://superrare.com/vincentschwenk

Behance: https://www.behance.net/vincentschwenk

RINIIFISH

デジタルアーティスト / 中国


Riniifishプロフィール

Riniifishは異世界のさまざまな幻想的生物を描き、小さな半透明の生物で埋め尽くされる並行世界や地球外文明を創り出している。特に代表的なものは「M7 Planet」に棲息する「Bugs」のシリーズであり、これらの作品を通して生と死、感情的葛藤や、また時には素朴な日常的テーマを探求している。 多くの感情や夢想的物語が常時頭の中を巡る彼女にとって、アートの制作は、最も自由かつ雄弁に語る方法であるという。同作家はPull&Bear、Adriana Hot Couture、JIU JIEなどのファッションブランドとも協業してきた。 Kraftwerkベルリン)やShinwa Digital Art Week(東京)、TODA、Kanvas Gallery、The Opus(ドバイ)、TezArt (モントリオール)、NFT NYC(NY)、Madrid's Urban Digital Art Festival(マドリッド)、GifFest(シンガポール)等における展示歴があり、またN51ギャラリー(ミラノ)でも個展(2023)を行っている。


Illusion》Riniifish, 2023

Official website: https://www.riniifish.com/

Instagram: https://www.instagram.com/riniifishw/

X (Twitter): https://twitter.com/riniifish

Foundation: https://foundation.app/@riniifish

OBJKT: http://objkt.com/@riniifish

852話 (HAKONIWA)

ゲームディベロッパー、AIアーティスト / 日本


852話 (Hakoniwa)プロフィール

852話は2021年以来、特にAI活用に関する実験的試みを多岐に渡って続けてきたことでよく知られる。もともとイラストレーター、背景グラフィッカー、ゲームディベロッパーでもある同作家は、「AIはツール」との当人の言の通り、生成AI出力物の単純な利用の範疇に留まらない、ヒトによる随意要素とAIによる機械処理を組み合わせた複合的な制作アプローチを様々に試みてきた。また、適宜それらの手法とも併せ発表を続けている。2022年には『Artificial Images』(852話, impress R&D)を刊行している。


《水彩AI》852話, 2024

Instagram: https://www.instagram.com/852wa.hakoniwa/

X (Twitter): https://twitter.com/8co28

Note: https://note.com/852wa/

Reference article: https://www.techno-edge.net/article/2022/09/22/308.html

SEBA MORALES

3Dデザイナー、ビジュアルアーティスト / アルゼンチン


Seba Moralesプロフィール

Garabatfire の名義でも知られる。ラ・プラタ国立大学(UNLP)ビジュアルコミュニケーションデザイン卒。Seba Moralesは、日常のさまざまな瞬間から得たインスピレーションをもとに、自然的な風景要素と人工的なオブジェクトを併在させ、またあるいは経時的に変形する岩礁や建築等構造物を配した作品を制作している。これらの作品は、物理現実における生を踏まえて行われる仮想世界の探求と言えるものであり、シュルレアリスティックな雰囲気を湛えた映像として表現されている。アーティストの企図に立脚しつつも計算機を用いて非随意的に行われる演算もまた、現在における自動書記の一種と言えるのかもしれない。

Eloisa TVのアニメーター2015-2017)、 A+E Latinamericaのモーショングラフィックデザイナー(2015-2017)を経て、2018年より独立。


《Dynamic Island》Seba Morales, 2023

Official website: https://sebamorales.art/

Instagram: https://www.instagram.com/garabatfire/

X (Twitter): https://twitter.com/garabatfire

Linked in: https://www.linkedin.com/in/seba-morales-894004b5/

YU CAI

アニメーター、イラストレーター、アーティスト / 中国出身、イタリア拠点


Yu Caiプロフィール

Yu Caiは、現代都市を映し出した鏡とも言える作品を制作しており、都市風景における別の生活を生き生きと描く。都市の生活に潜む未知の領域や世界を垣間見せ、また従来の認知に挑み、都市環境と人の関係について新たな視点を探求するよう観覧者を誘う。

中国美術学院絵画科卒業、イタリア ヴェネツィア美術アカデミー版画-エッチング専攻修士課程修了(修士)。かつてはイタリア国立現代版画家協会(Italy National Association of Contemporary Engravers)に所属した。これまでにNFT NYC(NY)やAsilo Ciani(スイス ルガーノ)、NFT UK(ロンドン)、Meta Art Station(韓国 光州)等にて展示多数。またSpazio X(イタリア トレヴィーゾ)やA60 Contemporary Art Space(フィレンツェ)、1000fryd Art Room(デンマーク オールボー)でも個展を行っている。Timberlandとの協業などでも知られる。


《Sky Arcade》Yu Cai, 2022

Official website: https://yu-cai.com/
Instagram: https://www.instagram.com/yucai_pink/

X (Twiter): https://twitter.com/yucai_yu

SuperRare: https://superrare.com/yucai_

Opensea: https://opensea.io/YUCAI/created

Reference article: https://foundation.app/learn/case-study/Yu-Cai-on-Worldbuilding


「COCO WARP」第二回企画展概要

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