集英社と漫画家の高橋陽一さんは4月3日、翌4日発売の「キャプテン翼マガジン Vol.20」をもって「キャプテン翼」の連載を終了すると発表した。今後は「ネーム形式」で、新しいWebサイト「キャプテン翼WORLD」にアップしていく。

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 ネームは「漫画の設計図」などと言われる漫画の工程の1つで、一般的には原稿用紙とは別の紙に、鉛筆でコマ割からセリフ、人物の配置、表情などをおおまかに描いたものを指す。漫画の全体像が把握できるため、プロの場合は編集者との打ち合わせでも重要になる。

 とはいえ、本来のネームは、下書き以前のたたき台。読者に見せるものではないため、出版社とプロ漫画家の施策としてはかなり大胆だ。

 高橋さんはかねてより年齢による執筆スピードの衰えを感じ、漫画連載の代わりに最終回までの内容をネームでまとめると表明していた。それを一般にも公開する、というのが今回の発表の本質だろう。

●ネームとは似て非なる「ネーム形式」

 ネームの段階で登場人物や背景をどこまで描き込むかは漫画家さんによって異なるが、ほとんどの場合はラフの域を出ない。セリフも殴り書きになりがちで、担当編集者が頭を抱えることだってある。

 しかし公開された「ネーム形式」のサンプルを見る限り、キャラクターの表情まで描き込んでいて、セリフはしっかり活字(フォント)だ。ネームというよりは、時間が足りずに下書きを掲載してしまった漫画に近い趣がある。

 ネーム形式なら一般的な漫画に比べれば執筆の工数は大きく減らせる。高橋さんも執筆ペースは上がるとしている。

 さらに雑誌のページ数や原稿サイズなどにも縛られず、「より自由な表現方法で皆さんにエンターテインメントをお届けできるのではないか」とも書いている。これまでも“見開き”という紙の雑誌の特性を生かした大胆な表現を多用してきた高橋さんだけに、ファンの期待も高まりそうだ。

 新しいWebサイト「キャプテン翼WORLD」は、まずティーザーサイト(予告サイト)として4日にオープンする。サイトを運営する集英社によると、閲覧は「無料」。夏の本オープンに先駆け、「キャプテン翼ライジングサンFINALS」の第1話27ページを公開するという。夏以降は週刊連載として掲載していく。

 高橋さんはメッセージの最後に自身の原点に触れた。「思えば僕の漫画の原点は、小学生高学年の時に見よう見まねで真っ白いノートに鉛筆描きでオリジナルの漫画を描き始めたことでした。できあがったものは弟や近所や学校の友達にも見せて回っていました。それが僕の漫画家としての出発点でした」「その時と同じことを今、僕は始めようとしています。鉛筆書きの漫画連載です」。

 ノートに鉛筆で描くようなWeb漫画連載。キャプテン翼は、そんな懐かしくも新しいコンテンツとして続く。

「ネーム形式」のサンプルとして公開された高橋陽一さんのネーム (C)高橋陽一/集英社