宇奈とと

うな丼一人前でお願いします」──。

うなぎの激安チェーン店として有名な「宇奈とと」、私の自宅の近所では新宿の高層ビル地下一階のお店が最寄りです。看板メニューは「うな丼」590円。最近のうなぎ相場(?)の高騰を考えると信じられないくらいの激安です。

安いうな丼といえば牛丼チェーン店を無視することはできません。牛丼店の場合、基本的にうな丼は季節メニューで、春に販売されることが多いですね。冬の「牛鍋」が終了した次が春のうなぎという感じです。

その牛丼店のうなぎですが、2023年は「すき家」で890円、「松屋」が980円という価格でした。「吉野家」は通年でうな重を販売しており、こちらの価格は1,207円。そう考えてみると専門店「宇奈とと」の590円は激安価格ですね。

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■うなぎの激安店には3つの企業秘密がある

鰻の成瀬

さて以前、店舗を急拡大させている「鰻の成瀬」のうな重がなぜ安いのか? という記事を書きました。今回は宇奈ととのうな丼価格について「なぜ激安店は安いのか?」を経済の観点で解説してみます。

まず基本を押さえておきたいと思います。いわゆる個人経営のうなぎ専門店でうな丼を注文した場合、いくらぐらいが相場なのでしょうか? 私の自宅の近所にある専門店の場合2,650円でした。これは都内のそのようなお店で養殖物のうなぎを食べた場合の平均ラインといっていい価格です。

その普通のうなぎ屋さんと、激安うなぎ屋さんの価格の違いは3つの理由で決まります。それがうなぎの量、うなぎの焼き方、そしてうなぎの種類です。

 

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■量を比較

宇奈とと

さきほどの2,650円のお店の場合、うな丼にのっているうなぎの量は2分の1尾だそうです。それと牛丼店のうな丼を比較すると、目分量ですが量は3分の1尾ないしは小さなうなぎ半分といったところでしょうか。

そして宇奈ととの一番安いうな丼(写真)のうなぎの量は5分の1尾です。

宇奈ととでもうなぎの量がもっと多いメニューもあって、3分の1の量のうな重は960円、2分の1の量のうな重上は1,580円。つまり看板メニューのうな丼が590円である理由のひとつは、量を減らしてお得な価格で提供しているのです。

 

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■炭火で焼き、香ばしさを追求

ところで宇奈ととはさすが専門店だけあって焼き方が牛丼店とは違います。

牛丼店やファミレスうなぎは基本的にセントラルキッチンで一度調理をしたものを真空パックにし、冷凍で店舗に配送されたものを使います。注文があれば加熱してそれをほかほかのご飯の上にのせて提供するのが提供スタイルです。

一方、宇奈ととでは厨房にて炭火でしっかりと焼いて出すので、香ばしさが違うというメリットがあります。きちんと焼いて、なお安いというのは専門店の大量仕入れ大量販売モデルのおかげです。

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■そして安い品種のウナギを起用

宇奈とと

さて実は宇奈ととの安さにはもうひとつ理由があります。激安のうなぎ屋さんは中国産の養殖うなぎを使う場合が多いのですが、その中国産でもニホンウナギであるアンギラジャポニカ種を使う場合と、アメリカ原産のアンギラロストラータ種を使う場合があります。

そして両者を比較するとアンギラロストラータの方が安いのです。実際、ある新聞の取材で宇奈ととは、主にアンギラロストラータを使っていると報道されています。

結論としてまとめると、宇奈ととのうな丼が激安な理由は、量と品種で原材料コストを抑えつつ、焼き方は逆にきちんと手を加えておいしく作っているということでしょう。

おいしい食事が安く食べられるお店にはこのように企業努力というものが必ず存在するのです。

 

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■著者プロフィール

鈴木貴博

Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。

今週は「激安うなぎ店」をテーマにお届けしました。

神コスパうな丼の「宇奈とと」、なぜ“激安価格”のまま出し続けられるのか