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 インドネシアジャワ島だけに生息していたジャワトラは、1984年に射殺された1頭を最後にその姿を消した。だがその後もジャワトラの痕跡が発見され調査が進められたが、実際に生きた個体が発見されなかったことから1994年に絶滅が宣言された。

 だがインドネシアの自然保護活動家や動物学者たちはまだ諦めていなかった。この種がまだ野生で存在すると信じ、調査を続けていたのだ。

 数年前に島の農園で発見された被毛のDNA分析を行った結果、それが明確にジャワトラのものであることが最新の研究で明らかになった。ジャワトラの生存の可能性が高まっているのだ。

【画像】 絶滅宣言されたジャワトラ

 ジャワトラジャワ島だけに生息していた比較的小型のトラで、体の縞模様が細くて長いのが特徴だ。

 かつてはこの島で豊かに暮らしていたが、毛皮利用や娯楽のための狩猟、農民が家畜を守るために毒殺したり、生息地である森林破壊、人間の生活範囲の拡大、餌となる動物が減少したことなどの要因が重なり個体数をどんどん減らしていった。

 1960年代半ばまではウジュン・クロン、ルエン・サンチャン、バルランの3つの保護区で生存していたが、1970年代にはほとんど見られなくなり、1984年ジャワ島西部のハリムン保護区で一頭のジャワトラが射殺されたのを最後に、生きた個体は全く見られなくなった。

 国際自然保護連合(IUCN)により1994年に絶滅が宣言された。

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発見された被毛がDNA分析でジャワトラのものと判明

 絶滅宣言以降も、島にはまだジャワトラが生息しており、家畜を襲ったなどとする地元の住人による目撃情報はあったが、実際に生存が確認された例はなかった。

 だが、2019年、島で働く保護活動家が西ジャワ州スカブミ県チペンデュイ村付近の農園近くでジャワトラを見たと研究者に報告。

 研究者が現地を訪れ調査を行ったところ、足跡や植物への爪痕、そしてフェンスに引っかかった被毛を発見した。

 国立研究イノベーション機構(BRIN)の研究チームはDNAを採取し、1930年に収集されたジャワトラの博物館標本と比較した。

 その結果、両者がほぼ一致することを確認、この遺伝的証拠に基づき、研究者たちはこの被毛がジャワトラのものである可能性が高いと結論付けた。

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ジャワトラと思われる毛が発見されたインドネシア西ジャワ州スカブミのチペンデュイ村付近(黒丸) / image credit:Oryx (2024). DOI: 10.1017/S0030605323001400

まだジャワトラが生存することを願って

 ジャワトラと、バリ島の固有種であるバリトラは、どちらも絶滅しており、現在世界的な野生生物絶滅リスクの権威である国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅宣言されている。現在、インドネシアに生息するのは、スマトラ島のスマトラトラのみだ。スマトラトラも絶滅の危機に瀕している。

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 この研究により、ジャワトラがまだ野生に生息しているのではないかという期待が広がっているが、まだ断定はできない。

 更なるジャワトラの痕跡を見つけるため、研究者は被毛が見つかった場所を中心に野生動物監視カメラを増やし、証拠集めを続けるとともに、この被毛に関するさらに詳しい遺伝学的調査を行っていく予定だという。

 もし本当にこの被毛が現存するジャワトラのものであればどれほどうれしいことだろう。今後の発表を見守っていきたい。

 この研究は『Oryx』誌(2024年3月21日付)に掲載された。

References:Hair from tiger thought to be extinct found by conservationist on Java / written by parumo

 
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絶滅したと考えられていたジャワトラの被毛が発見され、現存する可能性が高まってきた