ヤマハ発動機が日本での発売を予定する新型バイク「XSR900GP」の実車を見ることができた。ハーフカウルもカラーリングもノスタルジックな雰囲気だが、中身は最新の技術が満載? こだわりの仕上がりについてヤマハの担当者に聞いてきた。

往年の「マルボロカラー」を忠実に再現

XSR900GPは「Born Iconic」というパネルとともに展示されていた。ハーフカウルを備えるその姿は、1980年代のグランプリレーサーを彷彿させるノスタルジックな雰囲気だ。

フットステップは後方に配置。前傾姿勢とはなるが、ハンドルは適度に低めでライディングポジションが取りやすそうだ。リアに装着する「シートカウル レッド」(参考出品)がバイクにアクセントを与えつつ、ノスタルジックな印象を強調している。

エンジンや車体は2023年10月発売の「XSR900」をベースとしつつも、前後のサスペンションは専用開発で、剛性やシートフレームなどにも手を入れているそうだ。フロントには5インチフルカラーディスプレイを採用。クルーズコントロールシステムを搭載するなど、最新機能も盛り込まれている。

XSR900GPの開発にあたっては「ノスタルジックに見せるためのこだわりを随所に散りばめています」と担当者は力説する。代表的なこだわりのひとつがカラーリングだ。

鮮やかなオレンジに見えるカラーは、実はタバコのブランド「マルボロ」のカラーを忠実に再現したもの。現代のマルボロカラーはもっと赤が強いが、このオレンジはかつてレースで使われていたときの色味だそうだ。

カラーを担当した技術者によれば、何度も当時のボディカラーを見て、マルボロカラーを忠実に再現するために試行錯誤を繰り返したという。
アルミアルミで塗装し直す?

ノスタルジックな雰囲気を作りこむためにこだわった点はほかにもある。ボディパーツの連結に使うネジの形状も、あえて古い車体を参考にして、ゼロから作り直したそうだ。さらに、車体の一部に使っているアルミパーツは、旧車に見えるようにするため、古いアルミの質感が出るように塗装し直している。アルミパーツをアルミで塗装し直すというこだわりようには驚かずにはいられない。

見た目はレトロだが中身は最新であるため、走行性能には妥協がない。ライディングポジションは無理なく自然にホールドできるし、サーキット走行だけでなく、中・長距離のツーリングでも快適に乗りこなせるだけのパフォーマンスと使い勝手を両立させているという。

エンジンスペックなどの詳細は明かされていないが、2024年夏以降には発売予定のXSR900GP。「市販化予定」と書かれたパネルを見ていた来場客が、「これが新車で買えるなんて胸熱だ!」と興奮していたのが印象的だった。

とはいえ、このデザインを懐かしむライダーだけでなく、逆に新しいと感じる若い世代のライダーにも乗ってもらいたいと担当者はいう。見た目からは想像できないが、初心者ライダーからベテランライダーまで快適に乗れる1台に仕上がっているそうだ。

室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら
(室井大和)

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