売春の一大スポットとして知られる大久保公園に異変が起きている。昨年秋から警察が取り締まりを強化し、それに伴うように立ちんぼが激減。ピーク時(’23年9月)は50人弱の女性が並び、その倍ほどの買春客や見物人が群がっていた。かつてこの地で春を売っていた街娼たちはどこへ消えたのか——。

◆昨年末まで立ちんぼをしていた20歳

「昨年の摘発で知り合いが結構捕まったので、怖くなって立ちんぼをやめた。その前は大阪でもやってたよ」

 昨年末まで立ちんぼをしていたマナさん(仮名・20歳)は、歌舞伎町にある出会い喫茶に出入りして約2か月だという。

「最初は、立ちんぼやめて定期でついてた客で回して生活できてたんだけど、スマホを替えたら連絡先がわからなくなっちゃった。仕方ないから、キャバクラとかガルバで働いていたけど、もらえる額が少なくてダルくなったから、出会い喫茶に来てみたんだよね。

 立ちんぼは、一回で1.5万円が相場だけど、出会い喫茶ではだいたい2万円。単価は高いんだよ。ただ、回転率は全然立ちんぼのほうが良かったな。今日は、2時間いて2人成立。室内だし長居するのは苦じゃないけど」

 歌舞伎町には出会い喫茶が5店舗ある。マナさんのように主戦場を移す女性もいれば、立ちんぼと併用する女性も少なくない。

◆「ネットのおもちゃになるのも気分悪い」

 20歳を迎えた今、もう立ちんぼには戻るつもりはないそうだ。

「友達からも『もうあそこに立つな』って言われてるし、自分でも『いい大人がこんなことしているのはどうなんだろう……』って思うから。それに、大久保公園周辺で動画を撮るヤツが多いのも、立ちんぼが嫌になった理由。

 前に酔っぱらって路上で寝てたら、パンツが見えそうなローアングルで盗撮されて『泥酔ホームレス19歳』みたいなタイトルつけられてアップされてたの。マジでムカつく。5万回も再生されてて、ネットのおもちゃになるのも気分悪い。だから、私はもう立たないって決めました」

 そう言い残し、颯爽と“仕事場”へと帰っていった。

立ちんぼは女性だけの問題ではない

 大久保公園周辺で夜回り活動をするNPO法人レスキューハブ代表の坂本新氏に、最近の実情を聞いた。

「路上の女性の数は、少なくなったように見えるかもしれませんが、私は減ったという実感はありません。警察がいなくなる時間を見計らって立つなど、見えにくくなっただけです。取り締まりは強化されていますが、警察も逮捕だけでは根本的な解決に至らないことを理解しており、逮捕と同時に公的支援につなぐ取り組みもされています」

 実際、逮捕されても出戻りする女性は少なくないという。

「身元引受人として迎えに行った帰りに『私ちゃんと働いたことないけど、仕事できんのかな』と話す人もいて、やめたくても収入を得られる他の手段がないという現実も大きい。また、コロナ禍以降は、推し活を理由に立つ女性も多いため、支援は複雑化しています。NPOとしては、推し活以外にも、充足感を得られるような選択肢を提示していくことも課題の一つです」

 夜回りでは、団体の紹介カードを添えて女性が好むアメニティを手渡し。回数を重ねることで、支援のきっかけにつなげているという。

◆“負のループ”を止めるには

 路上に立つ女性だけではなく、買春者である男性への啓蒙も必要だと呼びかける。

「買春者の多くは、路上売春の場を“女のコと遊ぶ場所”ぐらいに捉えているでしょう。でも、一度立ち止まってほしいんです。今、買おうとしている女性の背景に、どんな問題があってこの生活をしているのか。頭ごなしに説教をするつもりはありませんが、買春者である男性側が当事者の背景を理解し、声を上げることも、社会を変えるためには重要だと考えています」

 買春者の意識変革こそが“負のループ”を止めるのかもしれない。

【坂本 新氏】
NPO 法人レスキュー・ハブ代表。大学卒業後、民間警備会社に就職。繁華街でのアウトリーチを通し、困難を抱える夜職従事者を支援

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部

―[消えた[繁華街立ちんぼ]]―


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