権平ひつじによるスパイ家族コメディ漫画『夜桜さんちの大作戦』がアニメ化。4月7日から、毎週日曜17時よりMBSTBS系にて放送される。本作の主人公は、家族を事故で亡くし心を閉ざすようになった高校生・朝野太陽。彼が唯一話せるのは、幼なじみの夜桜六美だけ。そんな六美の正体は、代々続くスパイ一家の当主だった。今回は、太陽を演じる川島零士と六美を演じる本渡楓にインタビュー。「太陽のよう」というお互いのキャラクターの印象と、役者としての成長についてお話を聞いた。

【写真】ペアルックがかわいい! 川島零士&本渡楓の撮り下ろし全身カット

■六美は友達と話すときも当主として何気なく警戒はしている

――最初に原作を読んだときの感想を教えてください。

川島:太陽はピュアで真っすぐなんですけど、スパイとしては何もできなくて。それでもがむしゃらに一歩、二歩とスパイの世界へ踏み込んでいこうとするところが、読んでいて気持ちよかったです。覚悟だけで戦っていく主人公は久しぶりかもという印象が、最初は強かったですね。

本渡:スパイ活動や戦いなどのシリアスなシーンと家族愛やコメディ展開でほっこりするシーンのギャップが心地よかったです。また、スパイ的な面では素人同然の太陽が全力でぶつかって、大事なもののために頑張る姿を見て「ワクワクするな、夢があるな、これが(週刊少年)ジャンプ!」と熱くなりました(笑)。

――演じるうえで意識した点を教えてください。

川島:原作の物語を音声にしたときに、太陽が思っていた以上にツッコミ役だと感じたんです。でも考えてみたら、あんな個性的なスパイたちが登場するんだから、その世界のことを知らない太陽はツッコむしかないですよね(笑)。シリアスな展開もありますが、コメディ部分は別作品で培ってきたものを活かしつつ、太陽らしいツッコミができたらと意識しました。

本渡:六美ちゃんを演じるうえで、例えば学校で友達と会話するとき、彼女は当主としてどれくらいの警戒心を持っているのか、その距離感が大事だと思いました。最初はどうすればいいのかと悩んだのですが、作中で「六美ちゃんは友達から手作りクッキーをもらってもその場で食べないんだ」というような解説があって。そこで、生徒として学校生活を楽しみつつも、当主としての自覚をもって何気なく警戒はしていると理解して。そうして、どこか冷静で俯瞰して喋るようなイメージを見つけていきました。

――六美は表情から感情を読み取りづらい部分もある気がします。

本渡:そうなんです! 笑顔だけど警戒はしているような時もあって。でも、それで変に相手との距離を取りすぎると「興味ない」の感情になってしまう気がしたんです。絶妙なバランスを見つけて声で表現するのが難しかったですね……!

■太陽にとっては六美が「太陽」

――お互いが演じるキャラクターの印象を教えてください。

本渡:太陽は不器用ですよね。それを自覚すらせずに全力で物事に挑んでいる気もします。でも、ボロボロになっているのを隠して気丈に頑張っている彼を見て、私も「頑張ろう」って気持ちに自然となるんですよね。そういう影響を与えてくれる、まさに「太陽」のような存在だなと思います。

――川島さんのお芝居についてはいかがですか?

本渡:太陽は「スパイってこんな感じなんだ!」とビックリしたり、何事にも全力で挑んだりしますが、零士くんも100%もしくは120%を芝居でぶつけているんです。休憩時間に先輩方に「どうやって演じているんですか!?」と熱心に聞く姿も、すごく太陽っぽい。なるべくして太陽役になったんだなぁと現場で感じています。

川島:ありがとうございます!!

本渡:ちなみに、今回の撮影で着ているペアルックのお洋服は、本作に合うんじゃないかということで、零士くんが準備してくれたんです。

川島:太陽と六美カラーだったので、これはいいかもと思って。

本渡:こうやってみんなで『夜桜さんちの大作戦』を盛り上げていこうと考えてくれるところも含めて、素敵な役者さんだなと思います。

川島:『夜桜さんちの大作戦』って、決意や覚悟を積み重ねていく作品だと僕は思っていて。六美は当主としての決意や覚悟が常に必要だし、そんな彼女に影響を受けて、太陽も覚悟を決めて頑張っている。彼は何事にも全力ではありますが、それは六美がいるからこそだと思うんです。太陽にとっては六美が「太陽」なんじゃないかな。

――本渡さんのお芝居についてはいかがですか?

川島:六美の難しい温度感をえーでちゃん(本渡さんの愛称)はひたむきに、一音・一音探っているんです。その結果で生まれた温度感の塩梅は絶妙。あと5度低かったら六美が心を開かない「怖い子」に見えてしまうところを的確に演じています。掛け合いをしていて楽しいですね。真摯に、丁寧にお互いのセリフをキャッチアップしようとするやり取りが、太陽と六美っぽさに繋がっていればいいなと思っています。

■ダメな部分もいっぱいあるからこそ愛おしい

――夜桜家のなかで気になるキャラクターを教えてください。

本渡:みんなですが、あえて選ぶとしたら四怨ねえちゃん。演じる悠木碧さんはお芝居の幅が広いので、アフレコ前から「どういう感じでくるのかな」とワクワクしていたんです。いざ、アフレコでご一緒したら、想像以上のゲーマー声で驚きました。私は「こういうパターンがあったか」と感動したので、楽しみにしていてください。

川島:四怨ねえちゃんは寝不足になってイライラしている声が、本当にいいよね。僕は凶一郎兄さんも好きです。演じる小西克幸さんのどこか余裕も感じられるマイク前の佇まいは、凶一郎兄さんそのもの。全然動かないのに、あんなにも多彩な音が出るのが信じられなくて、「どうやったらそんなに音の厚みが出るんですか!?」って現場で聞いちゃいました。

本渡:これ、一度や二度じゃなくて、何度か聞いているんですよ。それも太陽っぽい。

川島:それこそ太陽に重ねてじゃないけれど、吸収できることがあるなら、恥ずかしくても聞いた方がいいかなと思って。積極的に聞くようにしています!

――本作では太陽らが成長していく姿も描かれていきますが、お二人が役者として成長したなと感じる瞬間は?

本渡:デビュー当時、私は他の方々と比べると、見てきたアニメの数が少なかったんです。それもあって、純粋にアニメとしてのお芝居の引き出しがほぼありませんでした。ただ、アフレコ現場で先輩方のお芝居を見ながら「ここはこうすればいいのかも」と少しずつ分かってきて。そうやって自然と引きだしの数がちょっとずつ増えていきました。まだまだそれを積み重ねているところですが、演じる前に「あの引き出しを使えるかも」と思える瞬間が多少は増えたのが、成長かなと思っています。

川島:現場を重ねていくなかで、アニメの世界のスタンダードが少しは分かった気がします。それによって、お芝居を攻めたり、あえて崩したりというアプローチが多少はできるようになってきた、かも…。でも、先輩方を見ると「なんでああいうお芝居ができるんだ!」と驚くことばかりで。そうすると自分が思っていたスタンダードにも、気になる点がまた出てくるんです。それの繰り返しですね。悔しいです。もっと上手になりたい。でも、同じことを繰り返すだけじゃないからこそ、役者の仕事が楽しくて仕方ないんですよね。

――序盤の見どころを教えてください。

川島:序盤は、夜桜家の兄妹たちの掘り下げがメインです。彼らはみんなすごいスパイですが、ダメな部分もいっぱいあって(笑)。だからこそ愛おしいんです。たぶん数話見ただけで、みなさんも夜桜家のことが好きになっちゃうと思います!

本渡:本作のスパイ業界は、ものすごくメディアが発達していて。スパイにもランキングがあったり、色々な形で情報が取り上げられたりするんです。原作を読んだことがない方は、ぜひ夜桜家のランキングに注目してください。きっとビックリすると思います!

川島:実は細かいところにも伏線が張られているんですよね。

本渡:そうなんです! ぜひ、細かいところまでよーく見てください。細部までこだわっている点も本作の見どころです!

(取材・文:中筋啓 写真:高野広美)

 テレビアニメ『夜桜さんちの大作戦』は、4月7日から毎週日曜午後5時MBSTBS系全国28局ネットにて放送開始。Prime VideoNetflixにて毎週日曜午後5時30分~見放題最速配信。原作コミックス1~23巻 現在発売中。

(左から)川島零士、本渡楓  クランクイン! 写真:高野広美