クラシック音楽が暑い夏をより熱く盛り上げるオーケストラの祭典「フェスタサマーミューKAWASAKI2024」が20回目の節目を迎える(主催:川崎市ミューザ川崎シンフォニーホール)。

3月下旬にラインナップが発表され、福田紀彦川崎市長や、ミューザ川崎シンフォニーホール・ホールアドバイザーの松居直美(オルガニスト)、小川典子(ピアニスト)、宮本貴奈(ピアニスト)らが出席して発表会見が開かれた。

今年のサマーミューザは「夏音(サマーミューザ)!ブラボー20周年」をキャッチフレーズに、7月27日(土)から8月12日(月・振休)まで17日間・全19公演。例年どおり首都圏の9つのオーケストラが川崎に集結するほか、佐渡裕指揮・兵庫芸術文化センター管弦楽団と浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル・ワールド・ドリーム・ウインドオーケストラが初登場、ピアノやオルガンジャズまで、多彩なプログラムが繰り広げられる。

福田紀彦川崎市長の話。
「2005年から始まってついに20回目。毎年バラエティに富んだ内容で、日本を代表するクラシック音楽祭として定着している。7月1日に市政100周年を迎える川崎市。次の100年を見据え、将来にわたって持続可能な都市であり続けるためにも、音楽に身近に親しみ、人々がつながり合える街づくりを進めるとともに、フェスタサマーミューザのような良質な演奏を提供することで、世界に向けて川崎の魅力を発信し続けたい」

ホールアドバイザー松居直美の話。
「開館以来のアドバイザー・システムにより、それぞれのアドバイザーが専門域で提案・企画するというやりがいのある仕事が20年続いてきた。先ほどホールの担当の方に、20周年記念の目玉はありますかと聞いたら、『すべての公演が目玉です!』ということだった(笑)。記念の年にこのフェスタの場に立ち会えることを光栄に思う」

プログラムは以下のとおり。注記以外はすべて会場:ミューザ川崎シンフォニーホール。

7月27日(土)東京交響楽団
オープニングは今年も東響。ミューザ川崎をフランチャイズとするホスト・オーケストラだ。音楽監督11年目を迎えるジョナサン・ノットが昨年に続いて、チャイコフスキー交響曲に挑む。今年は第2番《小ロシア》と第6番《悲愴》。意外にもノットはチャイコフスキーをあまり振っていないので、それを聴く貴重な機会。

ジョナサン・ノット (c)K.Miura

7月28日(日)イッツ・ア・ピアノワールド/小川典子(ピアノ)
子供たちが客席でなくステージで、目の前のピアノの音を聴く、ホールアドバイザー小川典子の名物企画。「20年ずっと、子供向けでない、真っ向勝負のプログラム」(小川)。じつは今年東響と共演する若手ピアニスト田久保萌夏は、かつてこのイッツ・ア・ピアノワールドで小川のピアノを最前列で聴き、その日にピアニストになろうと決心したのだそう。「20年続けてきたことの意味が、いま、輝かしい形で現れた」と語る小川もさぞ感慨深いはず。実際これは、積み重ねてきた歴史の計り知れない価値を示すエピソードだ。

7月28日(日)サマーナイト・ジャズ/小曽根真(ピアノ)
ジャズ・ピアニストの小曽根真が、コロナ禍の中で、若い才能の紹介と躍進のために始めたプロジェクト「From Ozone till Dawn」による一夜。自らの名を「オゾン層(=地球)」にかけて、そこから昇る光を表しているという。今回は小曽根とともに、ベース:小川晋平、ドラムス:きたいくにと、トランペット:松井秀太郎が出演する。

7月30日(火)洗足学園音楽大学
秋山和慶が振り、若きダンサーたちが踊る、恒例のバレエ・プログラム。曲目はグラズノフで、バレエ《ライモンダ》組曲(抜粋)と、バレエ《四季》。

7月31日(水)読売日本交響楽団
大躍進が止まらない冲澤のどかが登場。現代屈指のリスト弾きである阪田知樹を独奏に迎えてのリストのピアノ協奏曲第2番と、R.シュトラウスの交響詩《ドン・ファン》、サン=サーンス交響曲第3番《オルガン付き》(独奏=大木麻理)。

8月1日(木)東京都交響楽団
終身名誉指揮者・小泉和裕がモーツァルト交響曲第40番とブラームス交響曲第1番を振る、王道の名曲プログラム。

8月2日(金)新日本フィルハーモニー交響楽団
井上道義のラスト・サマーミューザは、かつて音楽監督を務め、マーラー全曲演奏も手がけた仲間たちとのマーラーの大曲《夜の歌》。演奏前に井上が語るトークコーナー「夜の歌を語る」も聞き逃せない。

井上道義 (c)Yuriko Takagi

8月3日(土)浜松国際管楽器アカデミーフェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ
1995年から開催されている世界最大規模の管楽器の祭典を母体とする、世界的名手が揃ったドリームオーケストラ。原田慶太楼の指揮で吹奏楽の名曲を堪能。

8月3日(土)真夏のバッハIX/ヨハネス・ラングオルガン
ライプツィヒの聖トーマス教会は、バッハ自身が楽長を務めたバッハの聖地。そのトーマス教会のオルガニストを務める若き俊英ヨハネス・ラングが初来日。バッハと、楽聖に連なる作品を集めたプログラムを弾く。

8月3日(土)東京交響楽団[出張サマーミューザ@しんゆり]*
楽団の桂冠指揮者で今年が指揮者生活60周年の秋山和慶指揮によるグリーグのピアノ協奏曲(独奏=田久保萌夏)とチャイコフスキーの3大バレエ音楽ハイライト

8月4日(日)NHK交響楽団
沼尻竜典が指揮するブラームス・プロ。ヴァイオリン協奏曲の独奏の戸田弥生は沼尻の桐朋の同級生だという。後半はシェーンベルク管弦楽編曲によるピアノ四重奏曲第1番。

8月5日(月)兵庫芸術文化センター管弦楽団
若手演奏家の育成も兼ねた独自の活動で注目を集めるオーケストラが芸術監督・佐渡裕とともにサマーミューザ初登場。前半はミュンヘン国際コンクール優勝のトランペット奏者セリーナ・オットを独奏に迎えて、アルチュニアントランペット協奏曲とベルステッドの《ナポリ》(ナポリ民謡の変奏曲)とトランペット三昧。メインは生誕150年シェーンベルク《ペレアスとメリザンド》。直前に同プログラムで定期を3回やった勢いそのままに乗り込んでくる。定期が3回って、すごい。

8月7日(水)昭和音楽大学
学生と、卒業生を中心とする若手プロ・オーケストラの合同演奏。梅田俊明と生誕200年のブルックナー交響曲第7番を披露する。

8月8日(木)神奈川フィルハーモニー管弦楽団
オペラの名匠・園田隆一郎ならではのオペラ・プログラムは、没後100年のプッチーニと生誕100年の團伊玖磨という、たぶん世界でここでしか聴けない組み合わせのガラ・コンサート。声楽の出演はソプラノ木下美穂子とテノール笛田博昭。

8月9日(金)日本フィルハーモニー交響楽団
フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)広上淳一による、J.シュトラウス2世の《狩》、メンデルスゾーンヴァイオリン協奏曲、チャイコフスキー交響曲第5番という名曲プロ。服部百音のメンデルスゾーンに注目。彼女は日本フィルと、2月にも九州ツアーでメンデルスゾーンを繰り返し共演しているから、(指揮者は違うが)互いの手の内を知り尽くしているはずだ。

8月10日(土)東京フィルハーモニー交響楽団
角田鋼亮が指揮するドヴォルザーク・プロ。チェロ協奏曲の独奏者・北村陽に注目だ。2004年生まれ。昨年、ブラームス国際コンクールと日本音楽コンクールで立て続けに優勝を飾った、将来が期待される若きチェリスト。次々と俊英が現れる頼もしい日本のチェロ界に、また一人有望株が加わった。

角田鋼亮 (c)Makoto Kamiya

8月10日(土)神奈川フィルハーモニー管弦楽団[出張サマーミューザ@しんゆり]*
スクリーン・ミュージックの名曲を華麗なオーケストラ・サウンドと魅惑の声でたっぷりと。ソプラノ中畑有美子、バリトン押川浩士。指揮は中田延亮。

8月11日(日)東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
ロン=ティボーやエリザベートで上位入賞を果たし、現在最も注目されるピアニストである務川慧悟。日本センチュリー交響楽団との名演が語り草になっていたラフマニノフの協奏曲第3番がサマーミューザで聴ける。指揮は首席客演指揮者の藤岡幸夫。メインは生誕150周年のホルスト《惑星》全曲。

8月12日(月休)東京交響楽団
正指揮者・原田慶太楼が振る「新時代のファンタジア!!」と銘打ったプログラム。彼のライフワークとする邦人作品、吉松隆アトムハーツ・クラブ組曲第2番》、伊福部昭ヴァイオリン管弦楽のための協奏風狂詩曲》(ヴァイオリン独奏=川久保賜紀)と、“元祖ファンタジア”でもおなじみの《禿山の一夜》《魔法使いの弟子》を組み合わせた。さらに「バーチャルピアニスト」なる、最新のテクノロジーによる謎の“演奏者”をフィーチュアした《ラプソディ・イン・ブルー》にも大注目! おそらく「VチューバーバーチャルYouTuber)」のようなもののようだが、“正体”は当日、ぜひ自分の目と耳で。

*=会場:昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワ(新百合ヶ丘)

文:宮本明

フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2024

7月27日(土)から8月12日(月・振休)まで
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/