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欧州市場に注力するニオ

中国のEVメーカーであるニオ(NIO)は、欧州市場のユーザーの嗜好にあった車両開発を進めている。その舞台となっているのが、英国オックスフォードシャーの工業団地にある控えめな外観のワークショップだ。

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この地域はF1やフォーミュラEなどのモータースポーツチームや関連企業が集まることから「モータースポーツ・バレー」とも呼ばれている。ニオはここで、EVに「ヨーロピアン・フレーバー」なるものを与えようとしているのだ。

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ニオの電動セダン「ET5」

ニオはすでにノルウェードイツオランダスウェーデンデンマークで発売しているが、英国は未導入である。最新の声明では、右ハンドル市場を含むさらなるグローバル展開の一環として、2025年に英国で販売開始することが示唆されている。

ニオのワークショップで少人数チームを率いるチーフ・エンジニアのダニーロ・テオバルディ氏は、アウディBMWメルセデス・ベンツジャガーが独占してきた高級車セグメントで消費者に期待されるドライビング・キャラクターを、新型EVに反映していると語った。

オックスフォードシャーには、非常に経験豊かで才能のある人々が働いています。ルーティン・エンジニアリングではなく、『アトリビュート・インテグレーション』と呼んでいるクルマの挙動を開発しています。どのモデルにどのようなサスペンションを採用するかといったハードウェアの決定に当初から参加し、開発サイクルの中でそれを改良していくのです」

ベテランエンジニアがキャラクター形成に貢献

イタリア出身で50歳のテオバルディ氏は、これまでにも機械部品と電気部品を組み合わせて調和のとれたドライビング・キャラクターを開発するプロセスに携わってきたという。

テオバルディ氏はイタリアのイタルデザインで車両コンセプトの責任者を9年間、中国ベースのブランド、Qorosで車両アーキテクチャーと先進エンジニアリングの責任者を5年間務めた。その経験を買われ、2016年のニオ設立時に先進エンジニアリング担当ディレクターに任命された。

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ニオの電動SUV「EL7」

就任後すぐに、上海、北京、合肥、南京、ミュンヘン、サンノゼにある同社の車両開発事業をサポートするサテライト事業として、英国オックスフォードシャーにエンジニアリング・センターを設立した。

それ以来、欧州5か国で販売中のET5、ET5ツーリング、EL6、ET7、EL7など8車種に同センターの意見が反映されている。中でも、特に重視しているのはシャシー・チューニングだ。

「お客様のご要望の違いや路面コンディションの違いを考慮しながら、それぞれの市場に特化したサスペンション・チューニングを開発しています」

求められる「乗り心地」、欧州と中国でどう違う?

ニオが欧州に本格的に参入したのは2021年で、電動SUVのES8が同社初の “欧州仕様車” であった。

ES8も欧州向けに独自のシャシー・チューニングが施され、ステアリング、スプリングダンパーブッシュなどの特性は、中国で販売されるES8とは異なる。こうした特性は他のモデルにも取り入れられている。

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ニオの次期大型セダン「ET9」

「中国のお客様の多くは、セカンダリーライドの乗り心地を重視するため、衝撃吸収性が重要です。彼らはボディの大きな動きにも寛容です」

「あまり一般化はできないのですが、欧州のお客様は正反対です。優れたボディコントロール(プライマリーライド)を求めるので、ダンピングが非常に重要になってきます。同時に、乗り心地の厳しさには寛容です」

テオバルディ氏によれば、オックスフォードシャーはニオのドライビング・キャラクターを磨き上げるのに最適な場所だという。

「専門エンジニアと世界クラスのテスト施設を活用しています。また、技術的なスカウティングにも最適です。ここには、他では見られないような開発があるのです」

最近、オックスフォードシャーのエンジニアリング・チームは新型ET9の開発に深く関わっている。全長5325mmの大型高級セダンで、ニオとして初めてステア・バイ・ワイヤとアクティブ・サスペンションを搭載する。

さらに、ニオの新しいサブブランドであるOnvoとFireflyの次期モデルの開発にも携わっているという。Fireflyは2025年に欧州市場を念頭に置いた小型モデルのラインナップで販売を開始する予定だ。


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