世界に登録されている文化遺産、自然遺産、複合遺産の魅力を発信する「世界遺産」(毎週日曜夜6:00-6:30、TBS系)が、今春約6年半ぶりにリニューアル。世界遺産や歴史好きとして知られる鈴木亮平が9代目ナレーション、そして番組初となる世界遺産の案内役=ナビゲーターに就任し、時に自らの想いをも交えつつ、世界遺産の魅力を伝えていく。このたび、2回目の収録を終えた鈴木が囲み取材に応じ、いち視聴者として見てきた番組に携わることになった心境や、ナレーション収録をする際に意識していること、そして今後深掘りしたい世界遺産などについてたっぷりと語ってくれた。

【写真】標高1831メートルの山頂にたどり着いた鈴木亮平

■リニューアル後初回は鈴木亮平が念願の屋久島を訪問

8代目ナレーションの杏からバトンを引き継いだ鈴木は、2011年に世界遺産検定1級を取得、さらには世界遺産を旅した気分になれるエッセー集「行った気になる世界遺産」(ワニブックス)を上梓するほど世界遺産に詳しいことでも知られている。

4月7日(日)、4月14日(日)の放送は鈴木本人が特別編として現地取材、かねてより憧れていた鹿児島屋久島を初訪問。世界遺産が好きで、かつその価値を知る鈴木ならではの視点で取材を行う。

■ “空想”もした『世界遺産』ナレーション就任は「非常に光栄」

――まずは、「世界遺産」の第9代ナレーション、そして初代ナビゲーターに就任されたということで、今の率直な感想をお聞かせください。

ずっと見ていて好きな番組ですし、自分が世界遺産を好きになったきっかけでもあるので、携わることができて非常に光栄です。

今までにもナレーションという仕事を何度かやらせていただいているのですが、そのたびに“『世界遺産』のナレーションをするとしたらどんなトーンでやるかな”みたいなことを空想したりしていたので、今回お話をいただけてうれしいです。

それと同時に、自分自身今までの方々が積み上げてきたものが好きなので、あまり変えたくないなという思いもあって。ですが、せっかく任せていただいた以上、先輩たちのまねになってはしょうがないですし、ナビゲーターという肩書きもいただいたので、“世界遺産が好きだからこそ伝えられる何か”を伝えていけたらいいなと思っています。

■「好きだからこそ関わっちゃいけないんじゃないかと思っていた」

――収録を終えてみて、どういった部分で鈴木さんのオリジナリティを出せたなと感じていますか?

本来、ナレーションというのは淡々と説明をするものだと思うのですが、自分の場合は「ここからがすごいんです!」とか「実は○○なんです!」といったように、どうしても熱が入ってしまうんです。

でも、熱量の出し方があると思っているので、うまく抑えつつですけれども、自分の情熱を乗っけていけたらなと思いながら収録しています。

――番組内に鈴木さんによるプレゼンが盛り込まれているのですね。

忍び込ませているつもりです。熱くなろうと思えばどこまでも熱くなれますし、予告編でもすごく高いテンションで「次週はネパール!!」みたいにもできるのですが、あくまで『世界遺産』ですので(笑)。

あと、一番気を付けているのは、とにかく笑顔でいること。声だけですが、“世界遺産って楽しいですよ”ということをお伝えしたいです。

シビアな話題になることもあるのですが、基本的には笑顔だからこそ出る声をお届けしたいなと思います。初回は前半力が入っていると思いますが、優しく見守ってください(笑)。

――世界遺産を好きになったきっかけでもあるこの番組に携わるということは、番組を見始めた当初想像していましたか?

いえ、僕は正直好きだからこそ関わっちゃいけないんじゃないかと思っていたんです。ファンとして見ていたかったところも半分あって。好きなアイドルがいると握手くらいがちょうどいい、みたいなところありません(笑)?

一緒にお仕事するのは恐れ多いというか、自分が汚してしまったらいやだなと。“聖域”みたいな感覚があるんですが、そうは言いながらも自分がナレーションをやるならどんな感じか想像したりもしていたので、裏腹な気持ちがありましたね。だからこそ、今でもプレッシャーは感じています。

――芸能界で世界遺産トークができるご友人はいらっしゃいますか?

芸能界の友人が少ないんです。その中で世界遺産トークができる友人となると…ゼロですね。ですが、芸能界にも世界遺産検定を持っている方が増えてきています。

世界ふしぎ発見!』(TBS系)に出演している中山(卓也)くんは京都で共演した時に、太秦の撮影所近くにある天龍寺を一緒に回ったのですが、その何年後かに世界遺産検定を取られて、そして『世界ふしぎ発見!』ではミステリーハンターを務めていて。

自分の中では、世界遺産に誘ったじゃないですけど、彼の始まりの場に立ち会えたなという感覚があります(笑)。

■番組を通じて「世界遺産の魅力を皆さんに伝えたい」

――屋久島ロケに行かれてみていかがでしたか?

屋久島は思っていた以上にすごいです。知識はあるのですが、行ってみて分かることってその10倍あるので…“こんなにすごい島だったんだ”と感じました。森に一歩足を踏み入れただけで“(空気が)違うな”と。それはスピリチュアル的なことではなく、そこにはすさまじい生命力がありました。

自分自身この番組のファンなので“今のカメラアングルこっちの方がいいかも”とか思うところもあるんです。「同じフレームに植物の霜と、海を入れた方がいいと思います」と伝えると、プロの方々がその通り撮ってくださるのも楽しかったですね。

――今後番組で深掘りしたい世界遺産はありますか?

たくさんあります! シュトルーヴェの測地弧というものがヨーロッパにあるのですが、国をまたいで何カ所もあるんです。ですが、実際に訪れてみると、“ここです”と書かれた記念碑しかなくて。

世界遺産と聞くと、きっと素晴らしい景色や建物があるイメージがあると思うのですが、実はそうではなく、人類が遺していくべき宝なんです。

シュトルーヴェの測地弧は初めて地球の長さを測った跡であり、人類にとって大きな一歩なのですが、世界遺産としては画にならないんですよね。でも、僕はこの番組を通して、そういった世界遺産の魅力も届けていきたいなと思っています!

――最後に読者へのメッセージをお願いします。

自分も世界遺産が好きということは置いておいて、まずはその魅力を皆さんに伝えたいです。

主役はあくまで世界遺産なので、それをどう伝えるかということを試行錯誤しているのですが、『世界遺産』という番組のファンは日本中にいると思うので、皆さんにも意見を言っていただいて、そのフィードバックを受けて自分のナレーションも変えていきたいですし、番組スタッフにとっても大事な意見になると思います。

何かの方法で発信していただけたら、うれしいです。そして僕も少しずついい形を探っていけたらなと思っています。

旅をしたり、旅に出なくても自分が行ったことのない場所を映像で見たり、知れるということ自体がすごく豊かな体験だと思いますので、1週間に1回、30分くらい少しソファーに横になりながら、別世界を感じていただいて、そして寝落ちするなんて時間を取っていただきたいと思います!

◆取材裏話

取材部屋に入って来て早々、自らの名前が大きく書かれたプレートを目にした鈴木は「謝罪会みたい」とどこか楽しそうにつぶやくと、次の瞬間、「どうもすみませんでした!」と、会見さながらの謝罪を披露。ノリが良すぎる鈴木の言動にその場に集まった記者たちからドッと笑い声が起こり、和やかなムードで取材会がスタートした。

取材に立ち会った堤慶太プロデューサーから「今日2回目のナレーション収録をしたのですが、『世界遺産』では特別な用語もあるので、これまでの方は(言葉に)慣れるまで収録に時間がかかっていたのですが、鈴木さんは2回目にしてものすごくスムーズ。元から持っている知識量などが違うんだろうなと改めて感じた次第です」と絶賛されると、鈴木は時々恐縮しながらも、うれしそうな表情を浮かべていた。

世界遺産の魅力を教えてくれた、まさに原点ともいえる番組にナビゲーターとして携わることになった鈴木。豊富な知識量のみならず、人々の心を揺さぶる熱い言葉の数々で、より一層“世界遺産”を愛する人が増えるのは間違いなさそうだ。

取材・文=たくあんほたて

鈴木亮平が番組への熱い想いを語った/ (C)TBS