陰謀論にはまる夫に我慢できず暴言を吐いてしまったが、今後の離婚調停で不利になりますかーー。

そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられている。

夫とは別居中でこれから離婚調停をする予定という相談者。陰謀論にのめり込んだ夫との生活に疲弊し、子どもも我慢できずに「家を出たい」と言い出したため別居を決意した。

夫は仕事を辞めて一日中ネットサーフィンして「世界が大変だ!」などと言い続けるため、顔を見るだけでストレスがたまるようになり、つい大声を出して怒ってしまったという。

すると夫は、女性がキレた時の音声を録音して「妻は精神病だ」「妻からDVを受けている」などと周囲に言いふらすように。

このようなケースで離婚調停はどのように進むのか。早川雅子弁護士に聞いた。

●離婚調停と婚姻費用分担請求の調停を一緒に申し立てる

まず、離婚調停と婚姻費用分担請求の調停を一緒に申し立てます。養育費より金額の高い婚姻費用が決まることで、夫が離婚に同意するように仕向けるためです。

現在、夫は無職とのことですが、うつ病で働けないような場合等を除いて、夫に稼働能力があるとして「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」で計算して請求します。

離婚調停は訴訟とは異なり、離婚原因や事実を認定する場ではありません。誰が親権者になるか、別居親と子どもの面会交流の時期、方法、頻度等を決めます。

離婚調停では、はじめに申立に至った経緯を確認します。相談者が暴言を吐き、別居に至った経緯を時系列で話してください。

親権者は、現に監護をしている相談者となるのが通常です(監護の継続性)。相手方は、相談者の精神病を理由に親権者としてふさわしくないという反論をすることが考えられますが、子どもも我慢できずに「家を出たい」と言った経緯を子どもの陳述書として提出するとよいでしょう。

親権者や面会交流に際し、子どもの監護状況や意向を確認するため、調査官による調査が行われます。その際、聞き取りの資料として、監護に関する陳述書を提出します。

裁判所は、子どもがもう一方の親から捨てられたという疎外感を抱かないように面会交流の実施を原則とします。

また、面会交流の不実施は、親権者の判断に不利に働きますので、陰謀論だけでは拒む理由として弱く、面会交流の際は「ネットサーフィンはしない」「陰謀論は話さない」という条項を加えるよう主張します。違反した場合、面会交流を拒む余地を残すためです。

【取材協力弁護士】
早川 雅子(はやかわ・まさこ)弁護士
平成21年1月、司法過疎地の法テラス鹿屋法律事務所(鹿児島県鹿屋市)に赴任しました。DV被害者支援団体「アミーチ」の会長として、市と協力して、DV問題の啓発、独自の被害者支援活動を行っております。
事務所名:早川法律事務所
事務所URL:http://www.hayakawahouritsu.jp

ネットの「陰謀論」にハマった無職の夫、我慢できずブチギレた妻に逆上「DVだ」「精神病だ」…離婚の行方は?