厚生労働省から令和5年の『賃金構造基本統計調査』の結果が発表され、最新の会社員の給与事情が明らかになりました。今回は正社員と非正規社員、雇用形態別の給与事情をみていきましょう。

正社員と非正規社員の給与比較…50代後半で「月収で17万円」「年収360万円」もの格差

――あいつ、正社員じゃないんだろ

――エリートだったのに……もう、終わったな

30代・サラリーマン、久しぶりに高校時代の旧友が集まった飲み会でのひと言。「あいつ」とは、常に成績上位、誰もが秀才と認めた同級生のこと。高校卒業後は一流大学に進学し、まさにエリート街道をいく奴だった……と振り返ります。その後の進路を知っている参加者から、「あいつ、正社員じゃないとか言っていたな」と情報提供があると、「えっ、何があったんだ、あいつに」とどよめきがおきたといいます。「まさにエリートの転落じゃん」と男性は薄ら笑いを浮かべたとか。

誰もが「正社員じゃないとダメ」と考えるのは、やはり、正社員と非正規社員の待遇面の差。厚生労働省令和5年賃金構造基本統計調査』によると、正社員(男性、平均年齢43.6歳)の平均給与は、月収36.36万円、年収596.97万円。一方で非正社員(男性、平均年齢52.3歳)は、平均月収25.50万円、年収は363.91万円。月収で10万円、年収で200万円を超える給与差が生じています。

年齢別に正社員と非正規社員の給与の推移をみていくと、20代前半では月3万円、1年で80万円ほどの給与差は、年齢があがるについれて大きくなり、会社員人生の頂点に達する50代後半には月収で17万円、年収で360万円もの格差に。60代前半はそれまで正社員だった人が非正規に転換し、給与格差は縮まるものの、正社員は常に圧倒的優勢であることが分かります

【年齢別「正社員」と「非正規社員」の月収と年収】

20~24歳:23.22万円(359.47万円)/20.20万円(278.19万円)

25~29歳:27.14万円(449.75万円)/22.91万円(327.50万円)

30~34歳:30.70万円(516.72万円)/23.81万円(331.94万円)

35~39歳:34.48万円(580.75万円)/24.11万円(333.90万円)

40~44歳:38.02万円(631.32万円)/24.56万円(340.11万円)

45~49歳:40.64万円(670.90万円)/24.57万円(339.00万円)

50~54歳:42.83万円(707.24万円)/26.25万円(359.60万円)

55~59歳:44.08万円(725.54万円)/26.45万円(363.96万円)

60~64歳:37.24万円(571.51万円)/28.51万円(434.41万円)

※数値左より、正社員の月収(年収)/非正社員の月収(年収)

圧倒的な「正社員」と「非正規社員」の給与差…だが、絶対ではない

圧倒的な給与差から、

――正社員でないとダメ

――正社員以外は負け組

そんな考えが定着しています。ただ最近は「正社員ではない働き方」も増え、「あえて非正規社員」を選ぶ人も増えています。

総務省『労働力調査』によると、25~34歳のうち、都合の良い時間に働きたいとして非正規になった人は2023年に73万人。10年前の2013年と比較して、14万人増えました。一方で、「正規の職がない」という人は196万人から半減。正社員にこだわらない働き方が広がりつつあります。

また給与面でも、「非正規<正社員」という構図は絶対的なものではありません。

正社員、非正規社員の給与分布をみていくと、正社員(男性)の月収の中央値は32.03万円。上位10%で55.76万円、下位10%で21.53万円と、同じ正社員であっても大きな給与差は存在しています。一方で非正規社員(男性)の月収の中央値は22.59万円。上位10%で37.26万円、下位10%で16.38万円。正社員ほど大きくないものの、非正規社員の間にも給与格差は存在しています。

また非正社員でも正社員上位10%に入る給与を獲得している人は非正規社員の2%。2023年、非正規社員は2,101万人。その上位2%にあたる42万人は、非正規社員のなかでも完全なる「勝ち組」といっていいでしょう。

冒頭、正社員じゃないなんて、終わったな」と発言したサラリーマンの後日談。

遅れてきた高校の同級生(秀才)は、複数の会社と契約する“スーパー非正規”であり、給与は月収で3桁であることが判明したとか。もし自身は平均的な給与のサラリーマンだとすると、月収で30万円、年収で500万円を超える程度です。大きく水をあけられた結果に、エリートの転落じゃん」と笑ったことを大いに恥じたといいます。

[参考資料]

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』