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「あなたと一緒に休暇を過ごしたい。休暇を一緒に過ごすためには、所属事務所の幹部と連絡を取ってほしい」

滋賀県木之本警察署の発表で、今年1月下旬、滋賀県長浜市に住む女性(44)が、韓流スター、2PMのイ・ジュノ(34)になりすました人物にSNSを通じ、約350万円も騙し取られる詐欺事件が起きていたことがわかった。

女性はまず、InstagramのDMで、イ・ジュノをかたる人物から連絡を受け、その後、LINEを交換。「おはよう」「おやすみ」などのメッセージをやり取りするようになった。

次に「一緒に休暇を過ごしたい」という甘い囁きとともに、事務所幹部との連絡を指示された。LINEに記された幹部のアドレスに連絡すると「休暇中無事に過ごせるように生命保険の費用などを支払わなければならない」と伝えられたため、指定された口座にネットバンキングで23万円を振り込んでしまった。

その後、「休業証明書にスタンプを押すため」などさまざまな理由をつけられては何度も振り込んだ。

約1カ月間で振込総額350万円にのぼったところで、女性が不審に感じて、消費者センターに相談して事態が発覚した。

被害女性は「もともと2PMのファンで、イ・ジュノさんに会えると信じてしまった……」などと話しているという。

■国際ロマンス詐欺の被害額は177億円以上!

防犯アドバイザーの京師美佳さんが言う。

「外国人を名乗り、SNSなど非対面での連絡手段で被害者と複数回やり取りすることで、被害者に親近感と恋愛感情を抱かせておいて、お金を騙し取る犯罪を『国際ロマンス詐欺』と呼んでいます」

警察庁によれば、2023年の「ロマンス詐欺」の認知件数は1575件で被害額は約177億3千万円。

また国民生活センターによれば、2023年度は2024年2月末までの11カ月間で863件もの相談件数が、全国の消費生活センターなどに寄せられている。2023年度(2024年2月末まで)の11カ月間の年代別相談件数では、女性の全357件中、30代が89、40代が118、50代が95件となっている。

前述の韓流アイドル事件の手口は、そもそもSNSでスターと直接やり取りできるという段階で、「詐欺でしょ?」とわかりそうなものだが……。

「InstagramやFacebook、TikTokなどの利用者は、承認欲求を満たしたい心理が働いている場合が多く、SNSに心のつながりを求めています。 マメに連絡し続けて、外の世界に目を向けさせない、疑いを抱かせないというのは、カルト宗教やDV男性のマインドコントロールに似ています」(京師さん、以下同)

国際ロマンス詐欺の手口は共通項があり、その把握が、被害防止には重要だ。

「国際ロマンス詐欺はイギリス人、アメリカ人、韓国人などを名乗ることが多いです。職業は紳士的に思える経営者、医者、軍人などが多く、狙われているターゲットは、圧倒的に年配女性です」

犯人はつねターゲットを狙っていて「旦那さんに先立たれて、資産がある女性」がマッチングアプリ、SNSでまず狙われるという。そして何気ない投稿でも、

「食事したレストランや、愛犬がいるとか、旅行に多く行く、ドレスを着てパーティの写真を上げているなど富裕層と思われる人が、マークされます」

マッチングアプリ、SNSから入り込み、その後多くはLINEなどに誘導される。

「なぜLINEに誘導するかというと、犯人は信用させるためにプライベート写真なども送信しますが、それをネットで写真検索などされ、安易に正体がばれないようにするためです。 LINEなど個人ツールに限られてしまえば密室性は高まり『私だけを見てくれている』幸福感に包まれて、周囲がますます視野に入らなくなってしまう」

■高収入のはずの彼が情に訴えてお金を要求

2人だけの空間ができあがると、高収入で潤沢なはずの彼が、ビジネス上などの弱みを見せてくる。

「たとえば《仕事はうまくいってるけれど、クライアントからの振り込みが滞っていて……》などと書いてきたりします。

また、《君に会いに行きたい》という流れで《日本に行くお金を出せないか?》と言ってきます。この段階になると、投資に誘導されることが多い」

とはいえ、うまい話には落とし穴があると思うものだが……。

「騙されて入金してしまうのは、《今日中に振り込んでほしい》など期限を決めてくるから。制限をかけられると人間は判断力が鈍ります。また、家族や友人に相談する時間も与えないんです。

《本当に信じて大丈夫なの?》と聞けば《そんなに信用されていないのか、僕はすごく悲しい》《僕がいま、お金を持っていないのがいけないんだよね》などと、情に訴えてきて、女性は自責の念にかられてしまいます」

これらは、「すべて犯人のマニュアルにあると思う」と京師さん。

そのうえでの最大の防御策とは、「知らない人はドロボーと思え!」だとズバリ。

前出の木之本警察署の担当者は、「お金の要求があった場合には、すぐに警察に相談してください」と言う。一度も会ったことのない他人に財産を奪われないように。

■事例1

2人の結婚後の資金を貯めるためにと暗号資産を送金させられたが、連絡が取れなくなった

【出会い】マッチングアプリ
自称、日本在住のワイン輸入業者の役員というイギリス人男性

メッセージアプリで連絡を取るようになった。やり取り開始時から男性は私のことを「妻」と呼び、「結婚後に悠々自適な生活を送るために2人で資金を出しあって投資をしよう」と言われた。男性が指定した口座に合計130万円分の暗号資産を送った。相手に会うためにも必要だと思い、さらに40万円分を送った。しかし相手から「新型コロナに感染したから会えない」と連絡があった。(40歳代女性)

■事例2

2人の将来のためと勧誘され投資したが、出金しようとすると保証金を要求された

【出会い】マッチングアプリ
自称韓国人経営者、ファッションブランドでVIP待遇

男性がアプリを退会し、無料会話アプリでやり取りする中で、「Baby」「妻」と呼ばれるようになった。将来のため、紹介する投資サイトで投資するよう説得された。銀行や消費者金融から借り入れて、合計約500万円投資。出金しようとしたら保証金180万円を要求された。(30歳代女性)

■事例3

「息子と日本で住む物件を一緒に買いたい」と5000万円を要求

【出会い】FacebookからのDM
自称、元パイロット

「かわいい」「素敵ですね」と毎日言ってくれる。シングルファーザーで息子の写真が送られ「息子と日本で住みたい」と言われた。途中でLINEに誘導。「日本に住む物件を一緒に買いたい」と5000万円を要求された。(60歳代女性)

■こんな人に気をつけて

【相手の特徴】

・自称外国人や外国在住経験のある日本人(イギリス人/アメリカ人/韓国人が多い)
・職業は経営者/医者/軍人/パイロットなど
不自然な日本語
暗号資産やFXでもうけている
・趣味は投資や資産運用

【連絡の取り方】

・マッチングアプリから早々にLINEなどのSNSへ変更を提案
・SNSなどからDMが届く
・まめな連絡
・直接に会うことはない

【投資の誘い文句】

・投資に詳しい家族や親戚(知人)の言うとおりに投資をすればもうかる
・結婚するなら金銭感覚の近い人がいいから、一緒に投資を運用しよう
・結婚資金を貯めるために投資しよう
・豊かな結婚生活のために投資は重要だよ