韓国文化の浸透に神経をとがらせている北朝鮮は、若者の考え方や話し方はもちろん、ファッションまで縛り付けようとする。反動思想文化排斥法、青年教養保障法、平壌文化語法の3つの「反韓流法」を制定し、取り締まりや教育に必死になっている。

そして、また新しい命令が下されたが、かつての日本で言われていた「白いギターを持っていたら不良」並みのこじつけだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、2日に新学期を迎えた咸興(ハムン)医学大学の正門前で、朝鮮社会主義青年同盟の糾察隊が服装のチェックを行っていた。彼らがターゲットにしていたのは、直訳すると「横に背負うカバン」だった。

これは、韓国で肩掛けタイプのショルダーバッグ、または背中で斜めがけにするボディバッグ(クロスバッグ)を指す言葉だ。情報筋は「片方の肩にかけるひもの長いカバン」と説明している。

取り締まりは今月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)まで続くことになっており、「傀儡(韓国)の若者がよく使っている」との理由からだ。情報筋は「大学生のバッグまで取り締まるのは初めて」と呆れ顔だ。

国の将来を背負う知識人の卵たちの思想文化が変質することはけしからん、完全にブロックせよというのが、学内の朝鮮労働委員会の命令だ。これに基づいて、青年同盟が「韓流との闘い」を繰り広げている。

カバンは取り締まられるが、中に入っていた書籍などは一切没収されないという。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、平城(ピョンソン)師範大学と教員大学の新学期の式典で、大学当局が「横に背負うカバン」の所持は傀儡文化の流布にあたり処罰の対象になると述べたと伝えた。

当局が、カバンが腰の下まで来るほど、ストラップを長く伸ばして持ち歩いている学生を「傀儡文化流布者」だと指摘したことから取り締まりが始まったというのが情報筋の説明だ。摘発されると、反動思想文化排撃法に基づき、退学処分や労働鍛錬隊(刑期の短い刑務所)に送られる可能性がある。

かつての北朝鮮の大学では、制服から教科書、カバンに至るまで、すべてが国から支給されていた。北朝鮮が未だに誇り続けている「無償教育制度」だが、有名無実となって久しい。何も支給されなくなったため、学生たちは自分の好みや実家の経済力に合わせて自前のバッグを使うようになった。学生カバン、リュック、そして「横に背負うカバン」など様々だ。

「最近の大学生は、南朝鮮のドラマをよく見るので、ストラップの長いバッグを横掛けにして持ち歩くことを好む」というのが情報筋の説明だが、韓国の若者の一部で、おしりが隠れるほどストラップを長くしたバッグが確かに流行っているようだ。

上からの押しつけを嫌い、表向きは従うフリをしても、裏ではやりたい放題の北朝鮮の若者のことだけあって、太陽節が過ぎて取り締まりが終われば、また何食わぬ顔で「横に背負うカバン」を持ち歩くことだろう。

一方で当局は、新学期を迎えて全国の小中高校の児童、生徒にリュックサックを支給したが、数が足りず、農村から進学した苦学生、兵役上がりの貧乏学生を除く半数の大学生には支給できなかった。

バッグを持つ北朝鮮の女性(画像:デイリーNK)