1961年に発刊後、その内容の過激さから、すぐに発禁処分となった小説を映画化した「フィリップ」の場面写真8点がお披露目。ユダヤ人としての素性を隠して生きる美青年フィリップが、ナチス将校の妻たちを次々と誘惑することで、ナチスへの復讐を果たす姿が切り取られている。

【フォトギャラリー】R15+映画「フィリップ」過激な場面写真8点

物語の舞台は41年、第二次世界大戦ナチス支配下のポーランドドイツ。ルシャワのゲットーで暮らすポーランドユダヤ人フィリップ(エリック・クルム・ジュニア)は、恋人サラと出かけた舞台で、ナチスの銃撃に遭い、サラや家族、親戚を目の前で殺される。2年後、フィリップフランクフルトにある高級ホテルのレストランで、ウェイターとして働いていた。自身をフランス人と偽り、戦場に夫を送り出し孤独にしているナチス将校の妻たちを次々と誘惑し、ナチスへの復讐を果たしていた。孤独と嘘で塗り固めた生活のなか、彼はプールサイドで知的な美しいドイツ人のリザ(カロリーネ・ハルティヒ)と出会い、愛し合うようになる。しかし戦争は、容赦なくふたりを引き裂いていく。

場面写真には、端正な容姿を武器に、次々と憎きドイツ人女性に近付く"孤独な誘惑者"フィリップを活写。情事後に切り捨てるという目的のため、プールサイドで肉体美を曝け出して、女性を品定めするさまが切り取られている。さらに、リザとの逢瀬の時間や、暴力に屈することなく、真っ直ぐな目で自らの意思を主張する姿なども確認できる。復讐、愛、死、孤独、そして時代に翻ろうされながら、苦しい戦いを続ける姿が印象に残る。

原作は、ポーランドの作家レオポルド・ティルマンド(1920~85)の自伝的小説として、ポーランド当局の検閲後、大幅に削除されたものが61年に出版された「Filip」。ティルマンドが、42年にフランクフルトに滞在した実体験に基づいて書かれている。発刊後すぐに発禁処分となり、長い間、日の目を見ることがなかったが、2022年にオリジナル版が出版された。

監督は、90年代よりテレビプロデューサー兼演出家としてキャリアを重ね、21世紀に入って以降はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ作品のプロデューサーとして、後期代表作である「カティンの森」「ワレサ 連帯の男」、そして遺作「残像」まで製作を務め上げたミハウ・クフィェチンスキ。映画化の理由のひとつとして、「ポーランドで愛する人を亡くしたユダヤ人の主人公は、そのような状況下で何を感じるでしょうか? 私はティルマンドの本を心理的で緻密な映画にし、トラウマから感情が凍り付いた男の孤独を研究することに決めました」と明かしている。

フィリップ」は、6月21日から東京の新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開。R15+指定。

1961年に発刊後、その内容の過激さから、すぐに発禁処分となった小説を映画化 (C)TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022