イギリスの巨匠”ケン・ローチ監督(87歳)が、「終点に到達した」として、引退を表明した。

格差や貧困などの社会問題を扱った作品で知られるイギリスの巨匠ローチ監督は以前、2023年作「ザ・オールド・オーク」が自身にとって最後の映画となると発言した後、それを撤回していたものの、今回映画をもう1本作るつもりがないことを明かした。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」のローチ監督は「健康のことを考えると、もう一度それを一通りやるのは、度が超えていると思う」「どうしても止めなければならない時に止めるんだ。そして僕は終点に到達したよ」と語る。

そして、映画製作から引退しても、今後も映画と関わってゆくとして、「私はただ未来を考えようとしているんだ。ノスタルジックになるのではなくてね」「映画を作らないということは、映画や、映画について書く学生や人々との関わりが終わるわけでは全くない」「そして幸運なことに私には、仕事に似ているが、同レベルの集中と移動を必要としないことをやる可能性が多くあるんだ」と続けた。

2月に開催された英国アカデミー賞では、パレスチナでの停戦を呼び掛けていたローチ監督。同自治区に関する映画を作りたかったという。

「それ(パレスチナ)は、手掛けたかった題材だが、どうやって取り組んだらよいのか分からなかった」
「ドキュメンタリーとなっていただろう。でも大きな題材だし、過去10年間の私にとっては手に負えないものだった」

そんな同監督は2023年2月、ハリウッドリポーターのインタビューで、短期記憶障害と視力の低下から、もう1作映画を作ることはないと認めたものの、その1か月後に、「ジ・オールド・オーク」が最後の映画となるかと質問されると「一日一日をそのまま受け入れることにしているよ」「朝起きて、自分がお悔み欄に掲載されていないのならね。その一日をまず生きるんだ」と答えていた。

ケン・ローチ監督の主な受賞作品は次の通り。

「麦の穂をゆらす風」第59回(2006年)カンヌ国際映画祭 パルムドール
「わたしは、ダニエル・ブレイク」第69回(2016年)カンヌ国際映画祭 パルムドール