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レトロな雰囲気でもしっかりモダン

トヨタほど、幅広いラインナップを有するメーカーは少ない。小さなヤリスから、6速MTでFRのスープラまで、1つのディーラーで選べる。お望みなら、ラダーフレームにリジットアクスルを組んだ、本格的なオフローダーも。

【画像】「レトロ」でも「モダン」 トヨタ・ランドクルーザー 競合する有能オフローダーたち 全109枚

ランドクルーザーにも、複数の設定がある。豪華なSUV300系から無骨で従来的な70系まで、多様なニーズに応えている。4.5L V8ディーゼルターボをMTで走らせる例もあり、これには1度試乗してみたい。

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トヨタ・ランドクルーザー 250(欧州仕様)

英国で売られているランドクルーザーは、プラドと呼ばれる250系のみ。バッテリーEVでもハイブリッドでもないが、新しい世代へ交代を果たした。

パワートレインは4気筒ディーゼルで、先代の150系と基本的に同じ。しかし、ご紹介したい特徴には事欠かない。

まずはスタイリング。レトロな雰囲気を与えつつ、しっかりモダン。多くの人が好ましく感じる見た目ではないだろうか。オフローダーの場合、ボディの四隅を把握しやすいカタチは、理に適ってもいる。

面白い設定なのが、ヘッドライトを選べること。筆者は四角い方が好みだったが、編集スタッフは丸い方が好きらしい。

バンパーは分割式だから、傷がついた部分だけ交換可能。ボディパネルはシェルを守る設計で、フラットなボンネットは、前端を理解しやすく接触自体も避けやすい。

フロントガラスは従来より直立。空力特性ではマイナスでも、運転席からの視認性ではプラスだ。サイドウインドウのラインは、従来から30mm低くなった。

ハイラックスと同じ2.8L 4気筒ディーゼルターボ

ボンネットに収まるエンジンは、トヨタ・ハイラックスでお馴染みの、2.8L 4気筒ディーゼルターボ。新型のターボチャージャーを獲得し、トルクの山が広くなるよう調整を受けている。2025年には、マイルドハイブリッドも追加されるらしい。

トランスミッションは、新しいトルクコンバーター式の8速オートマティック。ロックアップ性を高め、ダイレクト感を強めている。計画されていた6速マニュアルは、日の目を見ることがなかった。

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トヨタ・ランドクルーザー 250(欧州仕様)

パワーステアリングは、油圧式から電動式に。油圧ポンプのロスがなくなるぶん、燃費を伸ばせる。開発時の目標だった、オンロードマナーの向上にも貢献している。

ボディが別体のラダーフレームは継投。組み立てには11.9mぶんの接着剤が塗られ、溶接ポイントは84か所も増えた。ねじり剛性は、50%高くなったという。

サスペンションも改良を受けているが、フロントがダブルウィッシュボーン式、リアがリジットアクスルという構成はそのまま。防音材やシーリングの見直しなどで、走行時の洗練性を高めている。アクティブ・ノイズキャンセリング機能も実装する。

悪路に備えて、リアのトルセン式リミテッドスリップ・デフをオプション設定。フロントのアンチロールバーの切り離し機構も装備できる。もちろん、四輪駆動だ。

これぞ望まれている車内環境 3列目も可

高めのキャビンに登ると、遥かにモダンになったインテリアが印象的。安っぽさは抑えられ、実用的な造形で仕立てられている。

ダッシュボード中央には12.3インチのタッチモニターが据えられるが、エアコンなどの主要な車載機能には、実際に押せるハードボタンが残された。手袋をしていても扱え、悪路で揺れていても誤操作の可能性は低い。

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トヨタ・ランドクルーザー 250(欧州仕様)

ちゃんと前後に動く、シフトセレクターもある。これが、本当に望まれている車内環境ではないだろうか。

トヨタの車線維持支援システムは、他メーカーのものより機能的だが、標識認識機能は少々煩わしい。タッチモニターではなく、スイッチで簡単にオン/オフできても良かった。ドライバー監視機能は、試乗車ではオフになっていたようだ。

インフォテインメント・システム自体は、トヨタの一般的なもの。スマートフォンとの連携機能を実装するが、本来のシステムとの切り替えが面倒に感じた。

メーターパネルも12.3インチのモニター式で、表示は鮮明で判読しやすい。表示される情報は変更可能だが、これも少し手間ではある。

全長は4920mmと先代より長くなり、車内空間は拡大。2列目にゆとりが生まれただけでなく、オプションで、子ども向きの3列目も追加できるようになった。ただし、3列目が使える状態では、荷室は最小限しか残らない。

テールゲートは、横開きではなく上開きに。ガラス部分だけでも開閉でき、狭い場所でも荷物を出し入れできる。スペアタイヤは、リアのフロア下にぶら下がっている。

悪路性能は当然 オンロードマナーは格段に改善

確認はこのくらいにして、まずはオフロードコースから。四輪駆動システムをローレンジにし、マッド・モードを選択。急勾配などで低い速度を自動的に保ってくれる、クロール・コントロールが有効になる。最高6km/hまで、1km/h単位で変更可能だ。

この状態であれば、困難な起伏も深い水たまりも朝飯前。普通に運転しているだけで、ランドクルーザーはスルスルと先へ進んでいく。簡単すぎて、シリアスオフロード・マニアには、物足りなく感じるかもしれない。

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トヨタ・ランドクルーザー 250(欧州仕様)

ただし、今回のコースはそこまで難関というわけでもなかった。ランドローバー・ディフェンダーやイネオス・グレネーダーとの、悪路性能比較も面白そうだ。トヨタだから信頼性は間違いないはずで、牽引重量は最大3500kgまで対応する。

他方、オンロードマナーはランドクルーザーの捉え方次第。実務的な4気筒ディーゼルターボにラダーフレームというパッケージングだから、ディフェンダー並みの上質さは期待しないで欲しい。

それでも、快適性は格段に改善した。8速ATは最新ユニットとしては滑りが多い印象ながら、お茶を濁すほどではない。変速をスムーズにこなしてくれる。エンジンも、加速時に若干の振動が伝わってくるが、だいぶ静かになっている。

加速力はほどほど。0-100km/hの数字はまだ明らかになっていないが、10秒は切らないだろう。

モノコック構造のSUVとの差は歴然だけど

ステアリングは従来より軽く、正確でダイレクトに反応する。オールテレーンタイヤでも、グリップ力は充分。高めの視点と四角いボディで、狭い道でも中央を辿りやすい。スポーツSUVとはいえないが、カーブが連続する道でも安心して先を急げそうだ。

乗り心地には、ピックアップトラックのような、僅かにゴツゴツとした印象を伴う。モノコック構造のSUVとの差は、歴然ではある。柔らかめのサスペンションスプリングと、肉厚なタイヤを履いていても、荒れた路面の影響は受けやすい。

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トヨタ・ランドクルーザー 250(欧州仕様)

だが、高速域での直進性は悪くなく、シートは快適。長距離ドライブで、過度に疲れる心配はなさそうだ。今回は100km/hの手前まで加速してみたが、サンルーフからバタバタとノイズが響く程度で、風切り音は静かなようだった。

今回はまだ試作車の段階ではあったが、仕上がりは量産車へ近い様子。燃費や英国価格の発表はこれから。恐らく10.5km/L前後で、ピックアップトラックフォードレンジャー程度の金額に落ち着くのではないだろうか。

大成功といえるモデルチェンジを果たすであろう、ランドクルーザー。現実的に、本来の性能をフルに引き出すような人は、英国では限られる。それでも、荒野を臆せず目指せる頼もしさへ、強く惹かれる人は多いはずだ。

トヨタ・ランドクルーザー 250(欧州仕様)のスペック

英国価格:5万5000ポンド(約1040万円/予想)
全長:4920mm
全幅:1980mm
全高:1870mm
最高速度:164km/h
0-100km/h加速:10.0秒(予想)
燃費:10.6km/L(予想)
CO2排出量:−g/km
車両重量:2330-2550kg
パワートレイン:直列4気筒2755cc ターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:203ps/3000-3400rpm
最大トルク:40.7kg-m/1600-2800rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動


新型トヨタ・ランドクルーザーへ英国試乗 丸目か角目か 「レトロ」でも「モダン」 質感は格段に改善!