アーセナルプレーするウクライナ代表DFオレクサンドル・ジンチェンコが、国からの要請があれば戦争に出向くと語った。イギリスBBC』が伝えた。

シャフタール・ドネツクの下部組織出身のジンチェンコ。その後ロシアのウファでプレーしたところ、2016年7月にマンチェスター・シティに完全移籍。PSVへのレンタル移籍を経て、シティで主軸を務めた。

2022年7月にアーセナルへと完全移籍。左サイドバックとしてミケル・アルテタ監督のサッカーを体現。チームにとっても重要な役割を担っている。

一方で、ウクライナ代表ではキャプテンを務め、60試合に出場し9ゴールを記録。熱いハートはピッチ内だけでなく、ウクライナ国民にもしっかりと見せており、ユーロ2024への出場もプレーオフの末に掴んだ。

そのジンチェンコは、2021年に始まったロシアの軍事侵攻に関しても動き出し、100万ポンド(約2億円)をウクライナ国民のために寄付するなどしている。

そんな中、ウクライナウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナぐんの動員年齢を27歳から25歳に引き下げることを決定。さらに50万人の兵士が必要だと考えている中で、軍に多くの人員を召集することを目的とされている。

BBC』はジンチェンコに対してインタビュー。プレミアリーグに残留するか、国のために戦うのかという質問には「答えは明白だと思う。僕は(戦いに)行くだろう」と答えた。

「つい最近まで、僕たちは同じ学校にいて、校庭やサッカー場で遊んでいたのに、今では彼らが僕たちの国を守らなければならないということを理解するのは難しい」

「そして、正直に言って、これを受け入れることはとても難しいことだけど、それが現実でもある。僕たちは諦めることはできない」

ロシアからの侵攻は止まらず、何も抵抗しなければ屈することになってしまうウクライナ。ただ、それだけは許すことはできないというジンチェンコ。国内の状況については「非常に厳しい」と語りながらも、「我が国の大統領を誇りに思う」と、ゼレンスキー大統領に信頼を寄せていると語った。

「一部の人が、僕にとってはウクライナにいるよりも、ここ(ロンドン)にいる方がずっと楽だと思うかもしれないということは承知している。僕はこの戦争が早く終わることを心から願っている」

ロシアでもプレーしていたことがあるジンチェンコだが、もうロシアにいる友人や元チームメイトとは話さないことにしているという。

「侵攻以来、僕にテキストメッセージやメッセージを送ってくれた人はほとんどいなかった。彼らを責めることはできない。これは彼らのせいではないからだ」

「僕は彼らに『みんな、外で抗議活動をしてくれ』とは言えない。なぜなら、彼らが刑務所に入れられる可能性があることを僕は知っている」

また、かつてはロシア人がウクライナ人を「兄弟」、「姉妹」と呼んでいたが、今回の侵攻により「僕たちウクライナ人全員が、もう彼らとは友達になれないということを示した」とコメント。子供たちに引き継いでいくことになるとした。

「彼らが僕たち、そして国民にしたことを決して忘れない。そして、それが僕が自分の子供たちに教えることになる。そして、僕の子供たちが自分の子供たちに教えることになる。これは受け入れられない」

怒りと悔しさに満ちるジンチェンコ。多くの犠牲者が出ており、親を亡くした何百人もの子供たちも知っているという。

「今の僕の義務はなんだろうか。自分の国、国民、これら全てにできる限り貢献するにはどうしたら良いだろうか」

「僕は今、ウクライナ人であることをこれまで以上に誇りに思っている」

「僕には、この戦争がすぐに終わり、僕たちが本当に望んでいるように、ウクライナを再建できるという夢がある」

今なお終わりが見えない戦争。平穏に暮らせる日が来るのはいつになるのか。心が休まることはまだないようだ。